腸内細菌の種類と役割①

私たちの腸内に生息している細菌を腸内細菌と言います。

 

人の腸の表面積はテニスコート1.5面分にもなりますが、その内部では、非常にたくさんの腸内細菌が互いに数やバランスを保ちながら、一種の生態系を形成しています。

 

この生態系(腸内細菌全体)は腸内細菌叢(そう)、腸内フローラ、マイクロバイオームなど様々な名前で呼ばれます。

 

また、腸内には細菌以外にも真菌(カビの仲間)や原虫など様々な微生物が常在しており、「腸内常在微生物叢(そう)」という呼び方がより正確かもしれません。

 

このブログでは、これらの細菌以外の微生物を含め、一般になじみの深い「腸内細菌叢」という言葉で統一することにします。

 

腸内細菌の多くは酸素があると生きていけない菌(嫌気性菌)であるため、ほとんどの菌が現在でも試験管内での培養が困難で、研究が遅れていました。

 

最近になって、遺伝子工学や分子生物学の発達により、培養できなくても、腸内細菌の遺伝子や産生する物質を網羅的に解析できるようになりました。

 

このため、研究が飛躍的に進み、腸内細菌の驚くべき働きが次々に分かってきています。

 

一人の人の体内には腸内細菌が300種類以上、総数100兆以上の細菌がいるとされています。実際にはもっと多く、1,000種類以上、総数にして1,000兆以上という意見もあります。

 

いずれにしても、これは、人の体を構成する約60兆個の細胞数よりもはるかに多く、総重量は11.5kgにもなり、脳や肝臓に匹敵する重さがあります。

 

さらに、この数百種類にもなる細菌たちの遺伝子のバラエティーは宿主である人の150倍にもなります。

 

つまり、腸内細菌には人が持っていない様々な遺伝子があり、人が出来ない様々な仕事(役割)を果たすことができると考えられます。

 

これが、細菌には無限の可能性があるといわれる理由の一つになっています。

 

以上のことから、腸内細菌叢を人のもう一つの臓器とまで考える人もいます。

 

腸内細菌は便宜上、善玉菌と悪玉菌に分けられることが多いようです。

体に良い影響を与えるのが善玉菌で、悪い働きをするのが悪玉菌ということになります。

 

しかし、一番数が多いのは日和見菌と言われるどちらにも属さない菌で、善玉菌が増えれば善玉菌のような働きをし、悪玉菌が増えれば悪玉菌のような働きをする「長いものには巻かれろ」タイプの菌です。

 

善玉菌の代表は乳酸菌とビフィズス菌さらに納豆菌があり、細菌以外にも麹菌、酵母菌などがあります。

 

こうしてみると、日本の伝統食には発酵食品がとても多く、乳酸菌の多い漬物、麹菌・酵母を利用したみそ・しょうゆ・みりん・酒、納豆菌による納豆など、善玉菌を上手に利用して、健康を維持してきたことが分かります。



悪玉菌には、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌(有毒株)、ETBF菌、日和見菌にはバクテロイデス(無毒株)、大腸菌(無毒株)、連鎖球菌などがあります。

 

人の健康にとって最も重要と考えられる腸内細菌が良い状態というのはどのような状態をいうのでしょうか?

 

健康な人や様々な病気の人の腸内細菌を調べて分かったことは、腸内細菌の多様性とバランスが重要ということです。

 

まず、多様性ですが、腸内細菌はなるべく多様、つまり、種類が多ければ多いほど良いと考えられています。

 

様々な病気と腸内細菌叢のパターンには関係があり、健康な人ほど多様性に富み、病気の人は病気の種類によって、ひどく偏ったパターンを示すことが多いのです。

 

最近の健康ブームで、様々な種類の健康食品(ヨーグルトなど)やサプリメントがありますが、○○菌や○○株などの特定の菌だけを増やそうというのには注意が必要です。

 

また、抗生剤や抗菌グッズの多用、農薬や保存料・防腐剤などの食品添加物の摂取は腸内細菌に深刻なダメージを与え続けています。

 

とくに抗生剤を投与した後は、腸内細菌叢が大きく変化し、特定の菌だけが多く増えたり、耐性菌が常在したりなど、非常にバランスの悪い腸内細菌叢になります。抗生剤の使用は必要最低限にする必要があります。

 

次に、健康に良い腸内細菌のバランスについてですが、善玉菌:日和見菌:悪玉菌が23671くらいの比率になっていることが健康的とされています。

 

人の腸内では、腸内細菌は縄張り意識が強く、善玉菌と悪玉菌が常にせめぎ合っている状態になっています。また、善玉菌や悪玉菌同士が勢力争いをしている場合もあります。

 

腸内細菌が生息できる場所には限りがあり、空き場所はないために、このようなせめぎ合いが起こりますが、これには、外来の病原菌の定着をふせぐ働きがあります。また、常に腸管(宿主=人)の免疫系を刺激することにより、免疫系を発達させていると考えられます。

 

このように、善玉菌が増えると、悪玉菌が減り、その逆もそうであり、日和見菌は優勢な方と同じような働きをする性質があるため、腸内細菌叢全体でシーソーの様にバランスをとり、その人の健康状態や病気になりやすさなどを決めています。

 

ここで一つ重要なのは、この世界に必要のないものはないと繰り返しているとおり、悪玉菌とされている菌も必要なことです。

 

悪玉菌をまったくなくしてしまうと善玉菌はサボってしまって、まったく働かなくなることが分かっています。

 

善玉菌をきちんと働かせるためにも悪玉菌の存在が必要なのであり、悪玉菌がいてもそれ以上に善玉菌がいる状態にすれば良いのです。

 

また、善玉菌の中には、一定の条件下では悪さをする菌がいますし、逆に、悪玉菌とされている菌でも状況次第で良いことをすることもあります。

 

菌は同じ菌同士と、違う菌と、人(腸)と、環境と、地球と相互作用しながら良くも悪くもなるということです。

 

こうしてみると、腸内細菌叢という生態系は人間社会あるいは地球全体の縮図ようにも見えてきます

 

長いので次の記事に続きます。

 

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