遺伝子変異(型)による死亡率や重症度に違いはない
GISAIDの新型コロナウイルス遺伝子のデータベースを使って現在(2020年12月1日)までに、世界中から報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の全ウイルス(総数183,422ウイルス)の遺伝子変異を解析しました。
新型コロナウイルス遺伝子の分類法には現時点で主に3種類あります。
3つの分類法の関係は図を参照してください
・Nextstrein:https://nextstrain.org/
・GISAID:https://www.gisaid.org/
・cov-liniages.org:https://cov-lineages.org/
それぞれの分類法に利点と欠点があり、含まれるウイルスにも若干の違いがありますが、大まかな分類では一致しています。
今回の解析では、Nextstreinよりも細かく分類でき、もっとも頻回に使用されているGISAIDの分類法を使って解析しました。
今回解析した新型コロナウイルスは以下の基準で選び、ウイルスの総数は183,422になります。
①人から検出されたもの(動物由来は除外)
②ウイルスの全遺伝子が報告されているもの
③正確性の低いウイルス(株)は除外
解析したのは、ウイルスの全遺伝子(欠けのない全長という意味でフルゲノムあるいは単にゲノムといいます)が報告されたものだけになります。
詳しい解析結果は、今後何回かに分けて記事にしますが、とても重要な結論だけを先に書いておきます。
『現在までに新型コロナウイルスのたくさんの遺伝子変異(いわゆる型)が報告されてきたが、遺伝子(型)の違いにより重症度、死亡率に大きな違いは認められない』
これから導かれる重大なことは以下になります。
・日本を含めたアジア全域で欧米に比べて死亡率が極端に低い(約1/50〜1/1000)のは遺伝子(型)の違いによるものではない
・同様に、新型コロナウイルス(通常の風邪コロナウイルスではなく)の何らかの軽症型が先行したためでもないと思われる
・今後、変異したウイルスが入ってきても日本での死亡率が欧米のように大きく増加することはおそらくない
遺伝子変異(ウイルスの進化)についてもう1点大事なことがあります。
報道では新型コロナウイルスについてS型、L型、武漢型、欧米型など◯◯型という言葉がよく使われます。
しかし、新型コロナウイルスの変異速度は、約25塩基/ゲノム/年(1年間で 約25ヶ所が変異するという意味)と推定されています。
つまり、このペースで1年間かけて25ヶ所変異しても、SARS-CoV-2ゲノムの全長約29900bpの約0.084%であり、この程度の変異では、いわゆる「型」というほどの違いにはなりません。
例えばインフルエンザでは違う型(亜型)では通常30%以上の遺伝子が変異しています。
詳しくは以前に書いた記事を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2679832895675046
ですから、遺伝子変異について以下も大切なポイントになります。
『新型コロナウイルスの遺伝子変異は日々進行中であるが、現在までに報告されている全183,422ウイルスは、インフルエンザなどの一般的なウイルスの分類では、すべて同じ「一つの」遺伝子型になる(おそらく血清型も一つになる)』
そして、これはワクチン問題やADE(抗体依存性増強)を考える時にとても重要になります。
世界の各地域(ヨーロッパ、アジア、中東、北米、南米、オセアニア、アフリカ)の解析結果は次回以降の記事で紹介し、今回の結論を確認していきます。
これまでに書いたコロナウイルス関連の記事は以下にまとめています。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2728645230793812