欧州のCovid-19第2波の現時点での解析(11/20)
現在、欧州で第2波が来ていることは以前の記事で書きました。下記の前回の記事から2週間ほど経過していますので、第2波の中間報告と今後の予想をしてみます。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2852586808399653
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2857304337927900
今回解析した国は、今までも解析しているヨーロッパの28カ国(西欧21カ国と東欧7カ国)になりますが、現在すべての国で第2波を認めます。現時点で第2波が収束した国はありません(アイスランドだけほぼ収束)。このうち、約半数の11カ国では、すでに第2波がピークアウトしています。
確認になりますが、第1波では西欧と東欧では大きく状況が違いました。例えば、最も重要な死亡率(100万人当たりの死亡数)で見ると、今回解析した国では、東欧7カ国では6〜90(平均46)、西欧21カ国では21〜614(平均267)になります(因に日本は9)。つまり第1波の被害は西欧>>東欧でした。
まずは、今回の記事の結論をまとめます。
・陽性数の推移では、現在(11/18)ヨーロッパの全土で第2波が来ている
・第2波の程度は、ヨーロッパの北部、西部、東部の3つの地域(グループ)ではっきり分かれている
・陽性率でみると北部ではごく小さい、西部では第1波より少し小さい、東部では第1波よりはるかに大きい規模になっている
・陽性数と死亡数の推移は非常に大きくかけ離れている
・陽性率(陽性数/検査数)と死亡数の推移は、とてもよく一致しており、増加傾向はすべての国で一致、増加の程度は、西欧ではほぼ完全に一致していたが、東欧では完全に一致していたのは約半数で、残りの半数は死亡数の増加の方が大きかった
・ピークアウトした国から予想される第2波の最終死亡数は、北部ではほとんどなく、西部では第1波の1/3から1~2倍程度、東部では第2波よりはるかに多くなる
・第2波の死亡数は、第1波で死亡率が高かった西欧では少なく、逆に、第1波で死亡率が低かった東欧で多くなっている
ここから、今回の解析結果になります。
・陽性数は流行の実態から大きくかけ離れていますので、陽性率の増加の程度から、以下の3グループに分けました。
グループ① ほとんど増えていない
グループ② 少し増えている
グループ③ 大きく増えている
・東欧、西欧、北欧などの違いに関係なく、この3グループの陽性率の増加は、きれいに地理的に分かれました(図1)。
グループ① 北部 陽性率の増加がほとんどない 7カ国
グループ② 西部 陽性率が明らかに増加している 11カ国
グループ③ 東部 陽性率が大きく増加している 10カ国

以下、陽性数、陽性率、死亡数を各グループ毎に解析します。
結果のまとめは図2をご覧ください(途中経過ですので概算です。正式な数値は第2波収束後になります)。各国のデータは図3〜30になります。

・第1波と比べた現時点の第2波の陽性数のピークの高さは以下になります。
北部(グループ①)1〜4倍
西部(グループ②)3〜10倍
東部(グループ③)20〜45倍
陽性数で判断すると、第1波に比べて、北部(グループ①)や西部(グループ②)の国々ではかなり大きな、そして、東部(グループ③)ではとてつもなく大きな規模の第2波がきているように見えます。
・第1波と比べた現時点の第2波の陽性率の上昇は以下になります。
北部(グループ①)上昇なし〜1/2倍(数の少ないアイスランドを除いて)
西部(グループ②)1/3〜2倍
東部(グループ③)1/2〜10倍
陽性率でみると、北部(グループ①)はほとんど流行なし、西部(グループ②)は現在までのところ第1波並か少し小さい流行、そして東部(グループ③)は陽性率でみても非常に大きな第2波が来ていることになります。
・陽性率と死亡数の関係は以下になります。
北部(グループ①)
解析できない1カ国を除くと増加の傾向も増加の程度もほぼ完全に一致
西部(グループ②)
解析できない1カ国を除くと、7カ国で増加の傾向も増加の程度もほぼ完全に一致。残りの2カ国は増加傾向は一致していたが増加の程度に2倍程のずれがあった(陽性率<死亡数)。
東部(グループ③)
陽性率は、解析できない1カ国を除く9カ国のすべてで増加傾向は一致。増加の程度もおおむね一致していたが、死亡数の方が陽性率よりも多く増加する傾向があった(死亡数<陽性率)
とくに東部(グループ③)の国々で、陽性率の上昇程度以上に死亡数が増加しているのは、おそらく第1波が小さすぎるために違いが大きく反映されているためと思われます。
最後に、現在までにピークアウトした国から今後の推移を予想してみます。
11/18現在の時点でピークアウトした国は、北部(グループ①)の1カ国、西部の6カ国、東部(グループ③)の4カ国になります。
・ピークアウトした国から各グループの今後の経過を予想してみます。
北部(グループ①)では、今のところ大きな第2波を認めている国はありません。このまま推移する可能性が高いと思いますが、この小さな流行が現在大きな第2波を認める西部や東部と違うウイルス株によるものであれば、同じウイルス株の流入により今後大きな流行になる可能性もあります。
西部(グループ②)では多くの国でピークアウトしていますので、第2波はまもなく収束に向かうと思われます。このまま収束すれば、第2波による最終的な死亡数は、約2/3の国々では第1波より少なく、残りの1/3の国々では第1波の数倍ほどになると予想されます。
東部(グループ③)では、約半数がピークアウトしているかピークに達しつつありますので、西部より少し遅れて収束すると思われます。しかし、陽性率でみても第1波よりかなり大きな第2波がきていますので、第2波の最終的な死亡数は、第1波より遥かに多く、5〜10倍ほどにもなるかもしれません。
ヨーロッパの3地域によって見られた第2波の違いが共通のウイルス株によるものであるかどうかは検討する必要があります。
また、ヨーロッパ以外の地域での第2波の解析、ロックダウンや活動制限との関係などについては次回以降の記事になります。
これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2728645230793812
どうぞよろしくお願いいたします。