腸内細菌の種類と役割②

前回の記事の続きです。

 

人と腸内細菌は共生関係というお互いに助け合っている関係にあります。

 

腸内細菌にとって人の腸内に住むメリットとはなんでしょうか。

まず、私たちは、定期的に食物を食べますので、腸内細菌には自動的に食べ物(とくに糖質)が供給されます。

また腸内は適度な温度や水分が保たれており、腸内の酸素の少ない環境は、嫌気性菌が多い腸内細菌にとっては実に快適な住みやすい環境と考えられます。

一方、人にとってのメリットですが、腸内細菌が良い状態では、以下のように、人の腸内でとても多くの役割を果たしており、人の存在を根本から支えています。

①常在菌として存在し病原菌の侵入を防御

②食物の消化・吸収の補助

③必須アミノ酸、脂肪酸、ホルモン、ビタミン、ミネラルなど栄養素の供給

④有害物質(農薬、添加物、発がん性物質、放射能など)の分解

⑤免疫系の活性化と調節(感染防御、炎症・アレルギー・膠原病などを抑制)

⑥神経系や大脳活動の調節(神経伝達物質の産生の補助など)

⑦腸管運動を調節し下痢や便秘の予防

⑧腸管以外の臓器の機能の活性化や保全

⑨脂質代謝の活性化

⑩酵素の活性化

⑪人の利用できない食物繊維を分解し短鎖脂肪酸を産生しエネルギーを供給

とても書ききれないほどですが、消化・吸収の補助、有害物質の分解、人が産生できない栄養素の供給、免疫系の調節が特に重要です。さらに多くの働きが、次々と明らかになってきています。

一方、腸の状態が悪く、悪玉菌が優位になると以下の様な色々な悪さをし、病気の原因になっていきます。

①腸内の腐敗を進め、下痢や便秘を起こす

②発がん性物質を作る

③アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質を作る

④免疫力を弱める

⑤高血圧、がん、動脈硬化など慢性炎症を引き起こし様々な疾患の原因を作る

⑥LGS(リーキーガット症候群)を引き起こし、様々な疾患の病因を作る

まさに、腸および腸内細菌の状態が人の健康にとって最も重要であることが分かります。

腸内細菌は人の細胞数よりもはるかに数が多く、また、人の感情や行動、さらに食べ物の嗜好にも影響を与えていることが分かってきています。

人という身体を本当に動かしているのは私たち(脳)なのか?操縦席に乗っているのは実は腸内細菌なのではないか?という考え方まであります。面白いですね。

いずれにしても、人とは一個の独立した生物(存在)ではなく、腸内細菌などの常在微生物と共生している複雑な生態系(超個体)ということが言えると思います。

地球の循環のところでも述べましたが、すべての生命(人も動物も植物も微生物も)は地球の一部であり、不必要なものは何もなく、互いに支え合っているということになります。

しばらく腸内細菌の記事を続けて行きます。

関連記事

no image

日本の一つのクリニックでの抗体検査の結果です COVID-19⑲

個人のクリニックですが、一般市民の希望者200名で抗体検査(簡易キット)を行い、約6%で陽性(つまり抗体を持っている=すでに感染している)という結果でした。 https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020043090070748.html この結果は、1クリニックの結果であり、 ①検査数がとても少ない ②検査を受けた人の集団の地域や年齢分布などの補正をしていない ③検査キットの感度や特異度が不明 などの問題がありますが、先日の慶応病院でのCOVID-19と関係のない人(総数67名)でのPCR陽性者と全く同じ割合(6%)になっています。 https://www […]

no image

腸内細菌叢の成り立ち

前回の記事で、腸内細菌の様々な働きをみてきましたが、今回は、腸内細菌叢がどのように作られていくのかを解説していきます。   まず、一般的な腸内細菌叢のパターンについてです。   腸内細菌叢は指紋のように、人によって個人差があります。 一卵性双生児では二卵性双生児よりも似通った腸内細菌叢になります。 一緒に暮らしている人(夫婦、兄弟、家族)も腸内細菌叢が似てきます。 ある種族や地域、国によって共通する腸内細菌の傾向というものもあります。   このように、腸内細菌叢は遺伝あるいは環境による影響を受けますが、かなりの部分は食べ物によって左右されると考えられています。 食生活以外にも、腸内細菌叢に影響 […]

no image

「みりん」を絞りました。

新型コロナウイルス関係の記事も新ネタがたくさんあります。 ・カリフォルニアの抗体検査の結果 前回と同様の結果です ・液性免疫(抗体)に加え、自然免疫と細胞性免疫が重要? ・遺伝子型の話ばかりであるが、それ以上に重要な血清型の話が出ないのは? ・重症化に関係するADEについて ・治る過程はインフルエンザとまったく同じ免疫パターン? ・再感染について ・・・ ですが、今回は「みりん」になります。 もちついて生きましょう。お茶(緑)飲みながらですね^^ 発酵食品のほとんどを麹から手作りしています。今回は、みりんを仕込むための梅酒びんの在庫がなくなったので、毎年仕込んでいる塩みりんを一びん絞ってみまし […]

no image

月刊「壮快」2018年11月号「現代病を招く免疫異常をおさめられるのは“腸”だけ」

健康雑誌の月刊「壮快」に「自然派医師が土をいじる。菌とたわむれる。」という記事を連載中です。 今月号(2018年11月号)は連載第11回目「現代病を招く免疫異常をおさめられるのは“腸”だけ」です。 私たち人は、単独の存在ではなく、おびただしい数の微生物と共存している生態系です。この概念があるのとないのでは、病気や健康についての理解がまったく異なったものになります。 免疫系とは、私たちの体を守る働きをする仕組みですが、実際には、私たちの体からみての異物を排除する反応になります。異物とは、ウイルス感染細胞、がん細胞、病気を引き起こす病原体(細菌やウイルス)、毒素など体に害を与えるもののことです。 […]

no image

新型コロナウイルスについてのウイルス学的な特徴(2/24) COVID-19③

新型コロナウイルス(COVID-19)関連の記事を続けて書いています。 いままで書いた記事のリンクは以下の通りです。 最も重要な情報の簡潔なまとめ https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2622431101415226 新型コロナウイルスの臨床的特徴(2/22の時点) https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2623921001266236 新型コロナウイルスは新しく登場したウイルスです。適切な対応をするためには正確な情報が必要になりますが、ウイルスを含め、感染症についての理解は、医師や専 […]

PageTop