自閉症と微生物の関係~自閉症の最も根本の原因も微生物の排除にある~

自閉症は、以下を特徴的な症状とする神経発達障害です。

①人との関わりが難しい

②言葉の発達の遅れ

③反復あるいはこだわり行動

現在では、典型的な(古典的)自閉症以外の類似の疾患は自閉症スペクトラム障害としてまとめられています。

自閉症もアレルギーや自己免疫疾患と同じように、近年、恐ろしい勢いで増加し続けています。

自閉症は1943年に初めて報告されていますが、全米小児科学会の発表では、発生率は、1970年代は3300人に1人、2000年150人に1人、2009年100人に1人、2015年68人に1人になります。この傾向は日本を含む先進国で共通して見られます。

発生率の増加は「診断基準の変化や診断する医師のスキルが上がったため」という意見もありますが、これらを差し引いても明らかに発生数自体が急増しています。

自閉症の発症には、非常にたくさんの要因が複雑に関係していると考えられており、現代病でも最も難解なパズルとまでいう専門家もいます。

例えば、食事(砂糖、牛乳、小麦、食品添加物)、抗生剤、ワクチン、消化器異常(特にリーキーガット症候群)、重金属、遺伝子異常(MTHFr遺伝子、COMT遺伝子)、ウイルス、細菌、真菌感染症などです。

今回の記事は、爆発的に増加している自閉症についても、アレルギーや自己免疫疾患(例えば、リウマチやクローン病、潰瘍性大腸炎などがあります)と同じように、微生物を排除してきたことによる免疫の異常が最も根本の原因であることを示していきたいと思います。

上記の様々な要因の多くも、これにより簡単に説明できるものがほとんどです。

まず、自閉症と免疫との関係についてみていきます。

 

自閉症と自己免疫疾患

自閉症の発生率(リスク)は家族に自己免疫疾患(つまり免疫の異常)が多いほど上昇します。

自己免疫疾患が家族に1人いる場合は、自閉症のリスクは2倍、3人いれば6倍、母が自己免疫疾患の場合は9倍にもなります。

自己免疫疾患と関係する遺伝子の変異は自閉症児がみられる家族に多くみられます。

とくに母に遺伝子異常がみられた場合が最も大きいリスクになります。

これは、母の自己免疫疾患が直接、児に影響しているのではなく、自己免疫疾患を引き起こしている母の免疫のコントロール能力の障害によるものと考えられています。

 

自閉症児の母に特有の異常な抗体が存在

母が特定の抗体(神経細胞のたんぱく質に対する)を持つ場合、児の自閉症のリスクは6倍になります。

マウスやサルにこの抗体を投与すると、それぞれの児に自閉症様症状が出現します。

 

何らかの原因で死亡した自閉症児の脳組織

脳内の免疫細胞に相当する細胞に慢性の炎症によると思われる変化が見られます。

また自閉症児の脳脊髄液は、感染がないにもかかわらず、炎症マーカーの数値が高く、免疫系が慢性的に活性化している状態になっています。

 

自閉症児に見られる免疫機能の異常

血液の免疫の検査では、自閉症児は細菌感染や炎症を起こす物質が増加し、炎症を抑える物質や細胞は減少しています(つまり免疫の異常がある)。

それにも関わらず、免疫機能は低下がみられ、実際に自閉症児では中耳炎などの感染症を繰り返しやすい傾向があります。

 

薬などで炎症を止めると症状が軽快する(つまり自閉症のベースに慢性の炎症がある)

ある種の抗生剤、ステロイド(免疫抑制)、γグロブリン(坑ウイルス作用)、Treg(過剰な免疫反応を強力に抑制する細胞)などの投与により、自閉症の症状が一時的に軽くなることがあります。ただし、効果は長くは続かず、投与中止により症状が戻ります。

次に、妊娠中の母の感染症と出生後の児の自閉症との関係についてみてみます。

妊娠中に母の炎症反応を引き起こすような様々な感染症にかかることにより、児に自閉症などの発達障害やアレルギー、自己免疫疾患を引き起こすリスクが高くなることは以前から知られていました。

※感染症が怖いから妊娠前にワクチンで予防する、ということを勧めているわけではありません。詳細は次回の記事に書きます。

マウスやサルの実験でも、妊娠中期までにインフルエンザや細菌に感染させると、児に自閉症様症状がみられることが分かっています。その後の報告では、これらは、ウイルスや細菌の直接作用ではなく、母の炎症反応(免疫の活性化)の結果であることが示されています。

このように、妊娠中の母の生活環境(微生物との接触や感染症、炎症などの免疫の状態)は、胎児の免疫系に影響し、出生後の自閉症や統合失調症、アレルギー、自己免疫疾患の発症に深く関わっています。

最後に、自閉症と腸内細菌叢との関係を説明します。

腸内細菌叢は私たちの免疫を調節している要であり、健康状態、病気になり易さ、病気になった時の体の反応などの基本的なパターンを決定しています。

この腸内細菌叢は病気の種類により固有のパターンがみられる事が多いのですが、自閉症児の腸内細菌パターンも健常児と大きく異なります。

自閉症児の腸内に多くみられる腸内細菌は神経疾患を誘発する物質を産生します。

また、自閉症児には消化管の病気(症状)がとても多くみられます。

例えば、胃腸炎、便通異常(便秘、下痢、嘔吐)、食物アレルギー、小麦不耐、牛乳不耐、カンジタ感染、腸の透過性亢進(リーキーガット症候群)などです。

これらは、腸内細菌叢が良好な状態では起こらない状態でしょう。

退行型の自閉症は中耳炎などの感染症の反復から抗生剤が投与されたり、あるいはワクチン接種の後に急速に症状の進行がみられる事があります。

抗生剤の投与は腸内細菌に大きなダメージを与えますし、ワクチン接種はこれまで示してきたように免疫系に混乱を与えます。

このように、自閉症には明らかに免疫異常が背景にあることが分かります。

重要なので繰り返しますが、人とは一個の独立した生物(存在)ではなく、腸内細菌などの常在微生物(さらに、かつては寄生虫を含めた)と共生している複雑な生態系(超個体)なのです。

私たち(人)は、私たちだけでは免疫をうまくコントロールできず、腸内細菌などの常在菌や常在ウイルス、寄生虫などと共生(連携)することにより、正常な免疫反応を維持できるのです。

自閉症とアレルギー、自己免疫疾患はいずれも近年爆発的に増加しているという特徴がみられます。

これらの病気の背景には免疫の異常があり、その最も重要な原因は微生物を排除したためという共通の原因があるのです。

次回の記事は、微生物の排除がどのように自閉症やアレルギー、自己免疫疾患の発症を引き起こすのかのメカニズムについて解説します。

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