抗体検査が新型コロナウイルスによるあらゆる混乱を収める!? (COVID-19⑫)
今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現在の診断方法(PCR法)とは別の検査方法である抗体検査について記事にします。
今後、国や自治体による緊急事態宣言や都市封鎖などにより通勤や登校、外出、イベントなどのあらゆる活動の大きな制限が行われると思います。
これらは、感染者の増加スピードを遅らせて医療崩壊を防ぐ手段の一つにはなります。しかし、効果は一時的で、今後の市中感染の拡大(大規模の流行)は防ぐことはできず、その後の生活全般への長期的な制限につながっていくと思われます。
国民全体が必要な社会活動を行えるような対策を明確に示すための情報が不足していますが、大規模な抗体検査によりCOVID-19の全体像が明らかになり、何よりもあらゆる不安やパニックを解消することになると個人的には考えています。
これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2641620056162997
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断は現在、核酸増幅法(PCR法)が行われています。これはウイルスがいるかどうかの検査になりますが、COVID-19ではとても間違いが多く、50〜60%ほどの正解率と考えられています。
さらに、検出されたウイルスに活性があり(生きていて)他人に移すかどうかもわかりません。検査には特別な機器(特定の研究機関)が必要で、時間も経費もかかります。
検査方法には、他に抗体検査があり、これはウイルスそのものではなく、生体の免疫反応により作られる抗体を検出するものです。
抗体検査の簡単なキットが完成すれば、どこの病院でも迅速に安価で検査が可能になります。すでに海外のメーカーによって何種類かのキットが開発されています。現在日本では普及が遅れていますが、まもなくどこでも検査ができるようになるでしょう。国や行政機関も検査できる体制を整えていると思います。
まず、抗抗体検査をする意味(わかること、出来ることなど)をまとめました。項目を箇条書きにして、その後に補足で説明します。
①診断を確定できる
②感染しているか、したことがあるか、免疫がついているかがわかる
③感染者数が正確にわかる
④病気の重要度がわかる
⑤病態の解明が進む
以下、補足による解説です。
①COVID-19診断の確定
コロナウイルスであるかどうかの検査になります。当然ですが、似たような症状を出す他の病原体(インフルエンザや普通の風邪など)の検出はできません。
②感染や免疫状態の確認
今感染しているのか、いないのか?感染したことがあるのか、ないのか?免疫がついているのか、いないのか?が分かります。今症状があってもなくても結果が出るのがポイントです。
また、感染してから時間が経ってからでもコロナウイルスであったのかどうかも確認出来ます。同時に、すでに抗体を持っていれば、自分は感染しない(しにくい)、人に移さない(しにくい)かの判別もできます。
これにより、抗体のある人から優先的に仕事や日常生活に戻るなどの判断ができるようになります。これは、感染者の隔離の解除だけでなく、医療や介護従事者、接客業や感染リスクの高い職場、死亡リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人などで特に重要になります。
③感染者数が正確にわかる
現在の国の方針は、感染者の全数を把握することを目的にしていません。無症状のものや軽症のものは検査すらされないからです。そして基準(通常、発熱して4日経過)を満たして検査したとしても現行のPCR検査では間違いが多いのです。
現在の検査体制では、COVID-19の患者数の実体は全くわかりませんし、他国との比較もできません。
④コロナウイルスの重要度がわかる
感染者の数、不顕性感染(症状がない人の感染)の数などが正確に分かれば、感染する割合、発病する割合、重症化する割合、死亡する割合なども計算できます。
これによりCOVID-19がどの程度怖い病気なのか、どの程度の感染力があり、どのように広まり、どの程度コントロールすればいいのか、などがわかることになります。
とくに、通常の風邪やインフルエンザ、他の肺炎などとどの程度違うのかの比較が大切になります。現在は、これらの情報がほとんど得られないまま、恐怖だけが広まっています。
⑤病態の解明が進む
COVID-19では様々な疑問や不安な憶測がなされています。例えば・・・
・免疫(抗体)ができないウイルスなのではないのか
・抗体が有効なのか無効なのか
・免疫が続くのか続かないのか 続くなら、どれくらい続くのか
・持続感染、潜伏感染、再感染、再燃があるのではないか?
これらを考えるにあたって、とても有益な情報が得られると思います。
抗体検査の問題点に関しても箇条書きにまとめておきます。
①ウイルスに感染して症状がでてからさらに数日以上たたないと検査できない
②検査自体の精度(とくに擬陽性間違って陽性となること)が問題になる
③検査の判定やこれによる対応に今のところ明確な基準がない
④ウイルスが変異しても同じ抗体検査が有用であるかわからない
以下に補足します。
①感染初期の検出
COVID-19での詳細は不明ですが、抗体検査は症状が出てからなお数日以上経過しないとできない(抗体が検出できない)と思います。
②検査自体の精度の問題
一般に抗体検査はPCRより感度(病気を見つける能力)が低いことが多いのですが、COVID-19ではPCR自体の感度が低いので、むしろ高くなるかもしれません。
また、今後たくさん出てくる抗体検査のそれぞれの精度(感度や間違い)は様々で検査結果にばらつきが出ることが予想されます。とくに、抗体のつき方(免疫のあるなし)で活動の範囲や隔離解除を決まる場合には擬陽性(間違って陽性となる)が問題となります。なるべく精度が高く、IgMとIgGの両方が検出できる検査法の開発が望まれます。
③検査の判定基準がない
抗体(免疫)ができたからもう安全とは行かない場合もあります。未知のウイルスですので、例えば抗体がある場合に、それが本当にCOVID-19に効果があるのか、感染するのを防げるのか、人に移すのを防げるのか、どの種類の抗体がどの程度あればこれらが可能であるのか・・・などの評価には時間がかかると思われます。
④ウイルス変異の問題
現在流行しているウイルスに対する抗体(免疫)ができても、ウイルスが変異した場合にも効果があるか不明です。
これらに関しては、検査を繰り返したり、他の検査法と組み合わせる、なるべく早くコンセンサスの得られる基準値を作るなどの対策が有効になるでしょう。
抗体検査の最大のメリットは、ただ単に診断するだけでなく様々な情報が得られCOVID-19の本当の姿や対処法が見えることにあります。結果にもよりますが、それによりおそらくは大きな不安や恐怖を取り除き、今後の進むべき方向がはっきりすると思います。
状況がわからないから不安になるのです。現在は不安が不安を呼び、憶測が憶測を呼んでパニックとなり、世界中が機能不全に陥っています。影響は仕事、教育、医療、生活、精神などのすべての面で制限をされ、経済や社会の混乱だけでなく、発言や自由の統制にまで及ぼうとしています。
闇雲に対策をたてるよりも、現時点でのコロナウイルスの概略を把握する必要があります。そのためには、まずは早急に数千人から1万人位の規模で日本各地のボランティアなどで抗体検査をしてみるのが良いと思います。
現在でも抗体検査ができるキットや試薬は世界中からすでに開発、報告されています。これらの民間のものを購入したり、国内外の研究機関で開発された抗体を提供してもらうのがいいと思います。それに平行して、多くの国民がいつでも抗体検査を受けられる体制を整えるのを、国が率先して世界中と連携をとりながら一刻もはやく確立すべきだと思います。
抗体については以下に説明します。興味のある方はご参照ください。
抗体とは、病原体だけに反応して生体を防御する働きをするもので、本体は免疫グロブリン(Igと略します)というタンパク質になります。特定の病原体だけに反応するというのがポイントです。
病原体が侵入した時に相手を区別せずにすぐに排除するのが自然免疫系で、特定の相手だけを排除するのがより強力な獲得免疫系でした。https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2640729986252004
抗体はこの獲得免疫系の働きによりつくられることが重要です。
人が産生する抗体にはいくつかの種類がありますが、病原体が感染してから最初に作られるのが作用が限定的なIgMで、少し遅れて作られるのが免疫(病原体を排除する力)の主力であるIgGになります
図には一般的な感染症での抗体値の推移を示します。COVID-19では、詳細がわかっていません。今まで書いた記事の重症化する時期=獲得免疫系の発動とは、この図ではIgGの産生(が増加)する時期と考えて良いでしょう。
抗体にも作られる順序があり、とりあえずIgM(前衛)が作られ、その後に強力なIgG(本隊)が作られることになります。
IgMは今まさに感染が起きているという目安になり、IgGは免疫がついたこと、あるいは感染したことがあるという目安になります。抗体検査には、とてもたくさんの方法がありますが、結果の意味が違いますのでIgMとIgGの両方が検出できる検査がとても有益だと思います。