新型コロナウイルス感染症の重症化のカギはACE2(アンジオテンシン変換酵素2)にある COVID-19⑨

新型コロナウイルスの記事を連続で書いています。
今までの記事のリンクのまとめをつくりました。ぜひ合わせてご参照ください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2641620056162997

前回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化と獲得免疫系の関係の記事を書きました。今回の記事は、COVID-19の重症化のカギはACE2(アンジオテンシン変換酵素2)にあることを説明します。とても重要な情報でCOVID-19の核心に迫ります^^ぜひ、今後の生活や考え方の参考にもしていただきたいと思います。

前回の記事の重要な点は以下の2点になります。
①新型コロナウイルスの細胞上の主な受容体はACE2である
②COVID-19の重症化は獲得免疫系が働き始める時期に一致している

化学式や計算式を登場させた時点で、読者や本の売り上げが1/4になるというデータもあるそうですから、本文は化学式や代謝経路図などを一切出さずにまとめました^^簡単な図も乗せておきますが、本文だけでも理解できると思います。

体の血圧や水分量を調節する最も重要な系はRAS(レニン・アンジオテンシン系)になりますが、この系は、血圧の調節以外にもたくさんの重要な働きをしていることが明らかになってきています。

RASが働くと体が以下の方向にセットされます。
①血圧↑②炎症↑免疫反応制御↓③酸化ストレス↑ミトコンドリア障害↑④繊維化↑硬化↑⑤交感神経↑⑥組織保護↓⑦老化↑・・・など
RASが抑制されると逆の方向に動くと考えてください。

とくに重要なのはRASが炎症や免疫反応のコントロールをしているということです。RASの亢進が続くと免疫機能は落ちている状態になります。自然免疫系、獲得免疫系ともに働きが落ちていることに加え、慢性炎症の状態が続いており、免疫のコントロールが悪くなっています(免疫が暴走しやすい)。炎症が亢進しているように見えても、免疫の機能自体は落ちているという点に注意してください!

そして、ACE(アンジオテンシン変換酵素)は、このRASをコントロールするためのもっとも重要な酵素になります。ACEにはACEとACE2があり、ACEはRASを促進しACE2はRASを抑制します。

つまり、新型コロナウイルスの受容体であるACE2はRASをコントロールし、炎症や免疫の暴走を抑制する要の酵素になります。

あらゆる感染症で同じ傾向があるのですがCOVID-19では重症化し死亡に至るハイリスクの方がとてもはっきりしています。今までに報告されたものをみると、
①高齢者
②高血圧
③糖尿病
④心血管疾患 虚血性疾患、心臓弁膜症、不整脈、大動脈瘤など
⑤脳血管疾患 脳動脈瘤、脳梗塞後、脳出血後
⑥慢性呼吸器疾患 喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
⑦がん
などになります。

①〜⑤に共通しているのは老化(端的に老化とは固くなり、うるおいを失う事)や動脈硬化(血管が固くなる)が関係する状態、病気とまとめていいと思います。血管が固くなると血圧を維持するためにRASが常に亢進した状態になります。糖尿病は血管がボロボロになる病気と表現してもいいでしょう。
⑥慢性肺疾患
今回のCOVID-19の最大の特徴は肺炎の発生がとても高い事です。メインの検査のRT-PCR法より肺のCT検査の方が感度(病気を見つける確率)が高いという報告もみられるくらいです。健康者でも肺炎で重篤になりますので、肺疾患を抱える方は重症化します。
⑦がん
がんはあらゆる不調な状態の総体として現れます。また、3大治療(手術、放射線、抗がん剤)では体に大きな負担をかけ、RASも亢進しますし、それ以上に免疫力が低下してとても重症化しやすい状態になっています。

ここまでをまとめるとCOVID-19の重症化や死亡の高リスクである高齢者や基礎疾患を持つ人は、すべてRASが亢進した状態(ACE2の働きが悪い)か肺の病気になります。

次にCOVID-19の主な死亡原因をみますと、肺炎、心不全、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、サイトカインストームなどとなっています。これらは肺や心臓の重度の障害か免疫の暴走状態と考えられますが、いずれもACE2で説明する事ができます。

①ACE2の発現場所
ACE2の発現は肺に多く、そのなかでも肺を膨らませる物質(サーファクタント)を産生する細胞(2型肺胞細胞)に集中しています。ここが広範囲に障害を受けると細菌感染の合併も含め重篤な肺炎になります。また、心不全(COVID-19では心筋障害、不整脈も多く報告されている)は、ACE2が心臓に発現していることと関係していると思われます。

②ACE2の免疫機能(ARDS、サイトカインストームは免疫系の暴走によりおこります)詳しくは前回の記事を参照してください。
ハイリスクの人では、RAS亢進(ACE2機能低下)により普段から慢性的に免疫機能が低下しています。

この状態で新型コロナウイルスに感染すると、まず、自然免疫系の低下によりウイルスがたくさん増える事になります。次に獲得免疫系が働く段階でウイルス感染細胞(ACE2発現細胞)が一斉に排除されます。それにより、もともと低下していたACE2の免疫調節機能が完全な破綻をおこして、炎症のコントロールが効かなくなり免疫の暴走が起こると考えられます。

すべての病気は、今までしてきた日常生活(食、生活、メンタル)が本来の自然な状態から外れているサインとして現れます。ですから、本当は自分の生活を見直し、自然な状態に改善することが根本の対策です。

これに対して、生活の改善(根本療法)ではなく、薬などの対症療法で症状や検査の値だけの改善をしている方は、根本は改善しておらず、初めからRAS亢進、ACE2機能低下、免疫力低下の状態になっているのだと思います。

COVID-19は、このような人に対してとても厳しい感染症であると言えます。時には薬や対症療法が必要なこともありますが、真の健康は自分の力によるものであり、それを高める生き方をすることが大事であることを教えてくれているようにも感じます。

また、現代人はすでに腸内細菌などの常在菌のダメージが大きいことに加え、身の回りの微生物を排除し過ぎていますので、初めから免疫機能の低下、調節能力の低下があります。日々の生活の仕方や考え方を含め、根本的に生き方が問われているのです。

今回の新型コロナウイルス感染症の重症化の予防および治療にACEを抑制する降圧剤であるACEi(ACE阻害剤)やARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)が効果を発揮する可能性があります(実際にこれらはサイトカインストームの治療に使われ効果が認められています)。しかし、緊急時にこれらの投与は致し方ないにせよ、これらも対症療法であることは心に停めておきましょう。

また、上記のリスクがある人に加え、若年者であっても以下の方は重症化しやすいかもしれませんので注意が必要です。
①基礎疾患のある人
②何らかの理由(自己免疫疾患や喘息など)でステロイド治療をしている人
以前のSARSやMERSでは、ステロイドの使用による悪化が報告されており、今回の新型コロナウイルスも同様と考えられます。つまり、重症化した場合、普段使っているステロイドは使いにくい状態になります。
③慢性炎症を起こしている状態の人
・腸内細菌の状態が良くない人 抗生剤、抗菌グッズ、食べもの(添加物、加工食品、ファストフード、遺伝子組み換え食品、放射能、塩素、フッ素・・・)、生活
・重金属汚染 ワクチン摂取、歯の詰め物、食べもの
・酸化した油の摂り過ぎ 
・・・
④塩分制限をしている人 塩分摂取が低いとACE>ACE2の状態となる
(補足:精製塩を制限することは全く問題ありませんが、代わりに天日海塩を十分に取る必要があります)

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