新型コロナウイルスの不安や疑問に答えるQ&A COVID-19⑩
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について様々な不安を煽る情報に対して、現時点での私の考えをQ&A形式でまとめました。
今までの記事のリンクのまとめは以下になります。ぜひ合わせてご参照ください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2641620056162997
COVID-19が世界中を席巻しています。連日の過度な報道、学校の休校、職場への影響、公共施設やイベントの自粛、経済活動の極端な減少・・・など生活が一変しています。
以前も書きましたが、人は未知のものに恐怖の感情を抱きます。新しく登場したウイルスですので、分からない事ももちろんたくさんあります。新型コロナウイルスはとても変異のスピードが早いRNAウイルスです。初期の情報が変化し、様々な状況や対策を見なおす必要はあるかも知れません。
しかし、最も重要な「新型コロナウイルスは健康な人(とくに自然に沿った生活をしている人)はあまり恐れる必要がない(もちろん高リスクの方は注意が必要)」という原則は変わらないと思います。
ネット上には不安を煽るような情報がたくさんありますが、これらのほとんどは推測です。しかし、不安が不安を呼び、推測が推測を呼んで、あたかも正しい情報であるかのように解説されたり、拡散されたりしています。
新型コロナウイルスが恐怖なのではありません、人の恐怖が恐怖なのです。
ぜひ、下記のQ&Aを参照され、判断や選択に役立てていただきたいと思います。
Q1 今回の新型コロナウイルスは人工的に作られたウイルスですか?
A1 その可能性は十分にあります。これが疑われる理由として①他のウイルスに似た遺伝子配列、タンパク質の構造がみられる②遺伝子組み換え実験に使った道具(ベクターといいDNAの断片)の痕迹が残されている③Q5にも書いたフューリン結合配列がある(これがあると感染力が飛躍的に増大する)、④人種選択性(特別の人種だけに感染する)があるかもしれない・・・などの情報によると思われます。これらはすべて確実な情報ではありません。
また、遺伝子工学の知識があれば簡単に作成できる(ただし、施設、資金、材料、時間があり、良心の欠如があれば)ことも確かです。しかし、実際に作られたのか、自然に発生したのかはわかりません。それ以上に大切な事は、どちらであっても、今の問題はウイルス自体ではなく、それにどのように対処するか(個人としても、社会としても)になります。
Q2 インフルエンザのように夏になったら収束しますか?
A2 データがありませんが収束しない可能性もあります。一般にウイルスは寒さに強いため、冬に流行するものが多いです(インフルエンザ、ノロ、ロタ、RSウイルス・・・)。例えば、毎年、流行のみられるインフルエンザは高温、多湿に弱く、暖かくなり、湿度が上がれば自然に収束します。
熱に弱いのは他のウイルスと共通していますが、湿度には強く、乾燥に弱いという性質がありそうです。一方、高湿度には弱いという報告もみられ、情報には混乱がみられます。気温が高い熱帯の地域でも発生がみられますので、高温・多湿の季節になっても収束しない可能性はあります。
この場合、多くの人が感染し抗体を持つまで広がらなければ収束しない可能性があります。健康な方は普通の生活をすることです。ハイリスクの方は辛い時期が続くことになり、自分の健康について根本的に考え直す必要が出るでしょう。詳しくは前回の記事をご覧ください。
Q3 このウイルスはたくさんの受容体に結合する特別なウイルスですか?
A3 一つのウイルスが複数の受容体をもつことは一般によくあることであり、これだけで今回の新型コロナウイルスが特別なウイルスであることにはなりません。
Q4 SARSコロナウイルスの数十から数千倍の感染力を持つのは本当ですか?
A4 データをみていませんので、はっきりした事は言えませんが実験室のデータ(in vitroといいます)が必ずしも人に当てはまる(in vivoといいます)わけではありません。今回の新型コロナウイルスが感染力の強いウイルスである事は間違いないと思います。
しかし、感染力の強いウイルスは他にいくらでもありますし、感染力は一つの要素にはなりますが、必ずしも重篤な感染症の特徴というわけではありません。
Q5 フューリン(タンパク質分解酵素の一種)を利用する構造をもつため、あらゆる細胞に感染できるとされていますが、本当ですか?
A5 これも感染力の問題なので、Q4も参照してください。もし、あらゆる細胞に感染できるのなら、エボラ出血熱(最も致死率の高いウイルス)のように全身の細胞が障害を受け、重篤化しなければなりません。今回の新型コロナウイルスは約半分が不顕性感染で、発症しても8割は軽症というとても軽症の感染症になります。
以下の質問にも共通しますがin silico(シリコン上という意味で実際の実験を行った結果ではなく、コンピュータ上でデータの解析のみを行う)のデータ解析から導かれる事が必ずしも現実と一致するわけではありません。とくに発展途上国などの論文は実物の実験には多額のお金がかかるためin silicoのものが増えています。
Q6 HIV(エイズの原因ウイルス)と共通のタンパク質をもつとされていますが、どういう意味をもちますか?
A6 他のウイルスに強制的にHIVの遺伝子(およびそれによるタンパク質の発現)を組み込む事は簡単に出来ますが、組み込んでもそのウイルスがHIVのように振る舞うことはありません。ですから、仮に持つからといってHIVの性質を持つ(CD4T細胞に感染する?免疫不全を起こす?持続感染する?抗体ができない?免疫ができない?)ということはまったくありません。
Q7 HIVと同じ様にCD4 T cellに感染するのですか?
A7 Q6も参照してください。今回の新型コロナウイルスの受容体がCD4(つまりCD4T細胞という免疫の司令塔の働きをするリンパ球に感染できる)であるという情報は聞いた事がありません。動物を含め他のコロナウイルスの一部はDPP4、APN、CEACAM、O-ac Siaなどを受容体としている事が報告されています。
Q8 HIVのように免疫力が低下しますか?(その証拠にリンパ球が減少していると報告されています)
A8 Q6、Q7も参照してください。リンパ球の低下はほとんどすべてのウイルス感染症に共通してみられ、HIV感染症(エイズ)に特有のものではありません。
Q9 HIV治療薬が効くというのは本当ですか?
A9 新型コロナウイルスにHIVの遺伝子が組み込まれているからHIV治療薬が効くのではなく、この薬がプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)阻害剤だからだと思います。プロテアーゼ阻害剤はあらゆるウイルスに効果を発揮する可能性がありますが、一般に副作用もとても強くなります。
Q10 再感染の報告がありますが、どのように考えますか?
A10 再感染するウイルスはたくさんありますが、一般には初感染してからかなり時間が経過(数年から数十年)し、そのウイルスに対する免疫が落ちてからになります。回復してからすぐに再感染するウイルスはほとんどなく、今回の新型コロナウイルスがそうであれば、あらゆるものの中でもっとも重要な性質で驚異的なウイルスということになりますね。
今回の新型コロナウイルスが再感染、あるいは潜伏感染しているように見えるのは、おそらくウイルスの検査方法が(RT-)PCR法だからだと思います。この検査法は初めから間違い(つまり間違って陽性、陰性になる)がとても多い(30〜40%)のが特徴です。
また、この検査法は、ものすごく少ないウイルス量でも遺伝子の痕跡さえあれば何百万倍にも増幅して検出できるのですが、この検出されたウイルスに活性がある(端的に言えば生きていて、人に移せる)かどうかは関係ありません。PCR法による他のウイルス感染症の後の検査では、数ヶ月にわたって陽性になることも珍しくありませんが、もちろんこれに感染性はまったくありません。
Q11 このウイルスは免疫がつかないウイルスなのでしょうか?
A11 Q10から推測されたものでしょうか。もしそうなら、ほとんどの人が一度感染したら回復する事なく死亡する事になります。
また、たくさんの受容体に結合することや、変異しやすいことを理由に免疫がつきにくいと説明されていることもありますが、変異するウイルスでも免疫はつきますし、変異しない部分に対する免疫もつきます。
免疫がつかない特別な仕組みをもつウイルスでなければ、免疫がつかないことは考えにくいと思います。繰り返しますが、今回のCOVID-19は、ほとんど人は無症状か軽症で回復しています。
Q12 持続感染・潜伏感染するウイルスですか?
A12 持続感染や潜伏感染をするためには、ウイルスにそれらを行う為の特別な仕組みが必要です。今のところ、今回の新型コロナウイルスにそのようなものは見つかっていませんが、今後見つかる可能性はもちろんあります。
回復した患者の一部(ごく少数)が無症状のまま持続感染し、ウイルスキャリアになる可能性も論文報告されています。これがA10(再感染の質問)で書いた検査(RT-PCR法)による間違いであるかどうかは、抗体価や遺伝子配列の解析などを追加した今後の報告を注意して見守る必要があります。
注意を喚起するのは大切ですが、いたずらに不安を煽るのは社会の混乱(パニック)を招き、物事の本質が見えなくなります。
おそらく、来年以降、ワクチンが登場し、迅速検査が行われ、治療薬が使われる体制が整います。恐怖が強ければ強いほど、これらが当たり前に行われ、また強く勧められる風潮になるでしょう。それに加え、今以上に生活や活動の制限が一層強くなります。
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