微生物の排除が病気を作っていることが常識になる時代へ

近所の本屋さんで「あなたの体は9割が細菌」という本が目に止まりましたので、早速購入してみました。簡単に概説し、私の意見を加えてみます。

ゲノムとは1つの生物の遺伝情報で、本体は細胞内のDNAです。
DNAは4種類の塩基(文字のようなものに相当)が並ぶことにより(配列が)、情報を伝える設計図になっています。

ヒトゲノムは30億塩基もの長さがあり、このすべての配列を解析したのがヒトゲノム・プロジェクトで、2003年に完了しました。
これにより当初は、病気のメカニズムのほとんどを解明できるとまで期待されていましたが、遺伝子の配列だけではほとんど何も分からないことがはっきりし、思ったほどの成果はありませんでした。

ヒトは細胞数の10倍もの微生物と共生しています(これをマイクロバイオームと言います)。これらの微生物の遺伝子をすべて合わせるとヒトの数百倍にもなります。期待はずれに終ったヒトゲノム・プロジェクトの次に2008年に登場したヒトマイクロバイオーム・プロジェクトは、これらを網羅的に解析するものでした。

この本は、数百億円以上の予算をかけたヒトマイクロバイオーム・プロジェクトの成果を踏まえて得られた結果の集大成で、世界19カ国でベストセラーとなっているそうです。

基本的な考え方は、私がこのブログで述べてきた事ととても共通しています。
代表的なものを挙げると・・・

① 人は単独の生物ではなく、微生物と共存している生態系であるということ
皮膚、口の中、腸など外部と接触する場所には、おびただしい数の微生物が住んでおり、腸内細菌だけでも100兆個にもなる。ヒトは自分の細胞の10倍もの細菌(常在菌)と共生している。

②この微生物を排除したことが、急増している21世紀の病気の真の原因であること
21世紀の病気とは、肥満、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症、精神疾患(心の病)、がん、過敏性腸症候群などが含まれる。

② これらの21世紀の病気のベースに「炎症が続いている」という免疫の異常がある
炎症は免疫反応の一種です。つまり、免疫の異常が続いている状態。生活習慣病など、あらゆる慢性病にも免疫の異常による炎症が関与しているということがわかってきています。

④免疫を統制しているのは我々の免疫細胞だが、さらにそれをコントロールしているのが腸内細菌である

⑤心臓病、がん、脳卒中は単に寿命が延びたために発症するわけではない
つまり、腸内細菌などの常在菌が大きく関係している。

⑥微生物を排除している原因として以下がある
・抗生剤の使い過ぎ
・抗菌グッズ 抗菌石けん、洗剤、タオル、衣類、食器、ボディーソープ、シャンプー
・食事(欧米型)高脂肪、高糖、低食物繊維
・出産の環境 病院出産の増加、帝王切開やミルク哺乳など

⑦グルテンフリー、カゼインフリー、ラクトースフリー、パレオ・ダイエットなど様々な食事法が流行っているが、本質はより深いところにある
つまり、これらが問題になる原因は食品(グルテン、カゼイン、ラクトース)にあるのではなく、腸内細菌の異常がベースにあるからこそ起きる。

⑧同様にリーキーガット症候群も食べ物やカビが主因ではなく、腸内細菌の問題が最も根底にある
「リーキーガット症候群」とは腸粘膜の損傷により、様々な有害物質が体内に取り込まれやすくなっている病態で、上記の21世紀の病気のほとんどに関与しているという意見があります。原因として実にたくさんのものが想定されています。砂糖・牛乳・小麦・カフェイン・アルコール・キシリトール・フッ素、アレルギー、食べ物(農薬、添加物、トランス脂肪酸、放射能)、腸や腸内細菌のダメージ(抗生剤、熱さまし、ステロイドなど)、胃酸の減少(胃薬の多用)、重金属、感染(真菌、細菌)などです。

⑨病気の改善には様々の栄養を摂ることよりも、腸内細菌の状態を最善に整えること
腸内細菌が元気であれば、ビタミン、ミネラル、酵素、ホルモン、有害物などのすべての問題が解決する!(腸内細菌が補ったり、処理してくれるという意味)。

私の意見と異なる部分についてもいくつか指摘しておきます。

① 21世紀の病気として挙げられているもの(上記)
これらの病気は20世紀後半から爆発的に増加していますので、本では21世紀の病気と簡単にまとめられています。
これは間違いないのですが、さらに深く歴史をさかのぼってみると、アレルギーや自己免疫疾患の多くは1800年頃(抗生剤や様々な環境毒が増える前)に出現しています。つまり、産業革命(1760年頃から)による環境の変化(微生物の排除)が最初の原因であるとするのが私の主張です。

こちらを参照してください

微生物を排除してきた歴史と病気との関係 ~アレルギーや自己免疫疾患が増加している最も重要な原因~

 

②人類を感染症の危険から救ったもの
本では4つのイノベーション(ワクチン、医療現場の衛生習慣、水道整備、抗生物質)を上げています。とくにワクチンをその筆頭としています(西洋医学的な考えでは当然かもしれません)。
私は、200年程の超長期的な視点からみた感染症の疫学調査から、ワクチンは死亡を含む重篤な感染症を制圧したわけではないことを明確に示しました。

こちらの記事を参照してください

ワクチンの問題点 その3 ワクチンに対する情報(効果や副作用)が正確に伝わっていない①

私は逆に、抗生剤と伴にワクチンは、本書のテーマである常在菌を含む微生物を排除している行為そのもので、現代病の原因の一つであると考えています。

 

③微生物に関する基本的なスタンス
本では常在菌以外の菌を敵(=人間の体に害を与えるもの)と考えて、コントロールしようという考えが様々な場面にみられます(これも、西洋医学的な考えでは当然でしょう)。
病原菌は時にヒトに害を与えることは間違いありませんが、私は、全てのものに存在する意味があり、単純に敵味方(良い悪い)という訳ではないと考えています。
当ブログでは、さらに病原菌よりも我々の体の方に問題がある場合も多いことや、感染するタイミングも重要であることも指摘しました。

こちらの記事を参照してください

感染症には感染すべき時期がある~ワクチンはこれを全く無視している~

 

④栄養の問題について
本では主に脂質、糖、塩分、食物繊維が関与すると述べられています。栄養の問題は非常に複雑で、糖質、タンパク質、脂質の他にも数百種類のビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカル、さらにはホルモン、自律神経も同時に関与しています。またまだ解明されていない要素も数限りなくあるでしょう。

以上のような若干の意見の違いはありますが、本書は、「現代病の急速な増加の最も重要な原因が微生物の排除にある」ということをきわめて科学的な立場からまとめています。

一般の人にも読みやすい内容であると思います。
興味をもたれた方は、ぜひ実物を読んでみてください。

 

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