微生物の排除が病気を作っていることが常識になる時代へ Vol.2

このブログでは腸および腸内細菌の状態が人の健康にとって最も大切であることを繰り返しお伝えしています。最近になって、腸内細菌叢(以下マイクロバイオータ=MBと表現します)の重要性について書かれた本や雑誌、テレビ番組などを頻繁に見かけるようになりました。

 

以前「あなたの体は9割が細菌」という本のレビュー記事を書きました。

微生物の排除が病気を作っていることが常識になる時代へ

 

今回は新たに「腸科学」という本が日本語訳で出ました。全体的に前回の「あなたの体は9割が細菌」と重なる内容が多いのですが、今回の「腸科学」では、著者の具体例を含めた食事についてもとても充実しています。とくに、肉食が主食である欧米人が肉食をしないように勧めている点は重要です。

この本についてレビューし、私の意見を加えて簡単に解説します。

 

この本では、西洋医学的な観点からか微生物と私たちは仕方なく共存しており、なんとかしてそれをコントロールしたいというニュアンスが散見されます。私は微生物も人も地球の分身であり、どちらが上も下も無く、始めから共存すべきもの(どうしても共存できなく攻撃的なものは排除する)と考えています。

とは言えほぼ全体を通して、このブログや私の本「病気にならない暮らし事典」で述べてきた微生物に関する記事の内容とびっくりする程内容が共通しています。

特に重要と思われる部分を赤字で私の付け加えた意見、解説は青字で示します。

 

①本の全体を通して述べていること

ヒトは単独の生物ではなく超個体という生態系である。MBの状態が人の健康にとって最も大切であり、これからの医療、食事、生活などあらゆる選択にMBを考慮する必要がある

 

②MBとは

MBの遺伝子の総量はヒトの遺伝子の100倍以上にもなり、人ができない様々な仕事をすることができる。さらに、ヒトの遺伝子は変えられないが、MBの構成(遺伝子)は私たちの生活により変えることが可能である

MBは指紋のように個人差があるが、明らかに遺伝の影響を受けており、自分の身体(先祖から受け継がれてきた遺伝子)に合った細菌群を選択して構成していく。しかし、生活環境もまた同様にMBの構成に影響を与えていく。

日本人は日本人のMBをもち(もちろん一人一人個人差がある)、日本人にあった健康法がある。MBの解析や情報のほとんどは欧米人のデータであることにも注意が必要である

 

③MBと病気の関係

MBはあらゆる病気に関係しており、一部の病気では食事以上に関与していると考えられる。

例えば、アレルギー、自己免疫疾患、がん、肥満、炎症、精神、感情の問題、自閉症、うつ・・・などMBが関与していない病気を探すほうが難しいくらいである。

MBを解析することにより病気の予測、診断ができるし、MBの改善により病気を治療できる可能性がある。

微生物を排除したことが、現代病がものすごい勢いで増えている原因である

MBは直接、間接に免疫系を支配しており、免疫系全体の感度(強度と速度)を調節している。MBのダメージによりこの調節が破たんしているのがアレルギー、自己免疫疾患の根本の原因である。しかし、これらを防ぐために、わざわざ感染症にかかる必要があるわけではなく、過度の清潔を止めるのが重要(常在菌を排除しない)である

病原菌の影響は感染症など見えやすいが、MB(常在菌)のダメージは見えにくい形で長期の健康障害につながる

 

④腸は第二の脳

腸は第2の脳で、脳とは独立した神経系を持ちながらも密接なつながりも持っている。

MBは自律神経系、ホルモン系、化学物質(神経伝達物質)のいずれでも脳と相互に連絡をとりあっている。

MBは消化管のみでなく、脳の発達に影響し、成長してからの気分、性格、ストレスに対する反応、行動にも影響を与える可能性がある。

 

⑤MBの獲得と変化、老化についても

母体の中の胎児は無菌状態で、MBの形成はお産のときから始まる。通常、生まれて初めて接触する菌は母の膣内の菌(主に乳酸菌)と肛門周囲(母のMB)の菌である。人生の初めに優良な初期細菌群を獲得することは、健康にとってとても大切で、生後初期(2歳半まで)のMBがとくに重要で生涯の健康に影響する

老化によりMBも大きな影響を受けるが、MBの変化は食事の変化→MBの変化→老化の順で進むと思われる。MBを改善することにより老化のスピードを遅くできる可能性がある。

 

⑥MBにダメージを与える要因

欧米人のMBは近代的な生活により大きなダメージを受けている。ここでいうMBのダメージの特徴とは、細菌の多様性の減少と有害菌(日本で言われるところの悪玉菌)の増加のことである。

MBに影響する要因を以下に挙げる。

分娩法(経膣分娩か帝王切開か)

母乳であるか人工乳であるか

離乳食の内容

抗生剤の使用 特に乳幼児への投与

抗菌グッズの使用

ペットと家畜の有無

土いじりをしているか 外遊びと遊び方、花壇や農作業(その場合も機械・化学肥料・農薬・除草剤・防虫剤の使用の有無)

食事の内容(重要なので別項⑦を参照)

 

⑦MBの栄養と食事

MBの栄養は、ヒトの食べ残しと人が利用できない複合多糖(食物繊維)と腸粘液内の栄養でいずれも糖質(炭水化物)である

欧米人のMBは近代的な食事法により飢餓、絶滅危惧の状態にある。

近代的な欧米人の食事とは、一般的には高脂肪、高カロリー、高単純炭水化物、低食物繊維、加工食品(微生物を含まない)を意味しますが、著者はこの中でも特に微生物の少ない食事(加工食品)と食物繊維の減少が最も重要としている。

著者の勧める食事は、以下のようになる

高MAC食(MACとはMBが食べられる食事という意味で私の解説(下記)も参照してください)

肉食を減らす

飽和脂肪酸を減らす(同じく肉食を減らすこと)

有用菌を摂る(発酵食品をとることであり、現在の加工食品の最大の問題は微生物を含まないこと)

著者はジョークとしてBig MAC食としているが、つまりは果物、野菜、豆、未精製穀物を食べることを勧めている。

 

MBの食べ物になる炭水化物をMACとし、その内容をオリゴ糖、デンプン以外の多糖類(ペクチンやイヌリン)、食物繊維としていますが、炭水化物や食物繊維の分類が不十分でわかりにくく、誤解を招く表現になっています。

 

とくに、デンプンは小腸までにほぼ100%吸収され、MBの栄養にならないとしており、このためか食物繊維をとても強調して摂るように勧めています。

 

しかし、最近ではデンプンにも難消化性(レジスタントスターチなど)のものがあり、大腸の奥まで届き、MBの栄養になるものも多いことがわかっています。

 

MBの栄養が炭水化物であることはこの本にも強調されていますが、食物繊維とともに、難消化性の多糖類(未精製な雑穀やいも類、豆類等)も重要であるというのが私の考えになります。

 

糖類(単糖類、二糖類)、消化の早い多糖類(精製穀物など)の糖質がMBの栄養にならない(大腸まで達しない)ばかりか、血糖値を急激に上げ健康障害の主因ですので、これらの糖質の制限が必要なのは言うまでもありません。

 

糖質は摂らない方が良いものと摂る必要があるものがあり、糖質制限ではなく糖質選択が必要ということになります。

 

糖類、糖質、炭水化物の分類はとても大切で、この部分の混乱が糖質制限食の様な極端な食事法の推奨の一因になっていますので、このブログでも今後詳しく解説していきます。

 

今回紹介した「腸科学」は一般の人にも読みやすい内容であると思います。

興味をもたれた方は、ぜひ実物を読んでみてください。

 

 

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