インフルエンザの新しい治療薬ゾフルーザについて

インフルエンザが流行期に入る直前だそうですが、インフルエンザの新しい治療薬であるゾフルーザが登場しました。

実は昨年度末(2018年3月14日)から出た薬なのですが、シーズンの終わりでしたのでデータも少なく記事にしていませんでした。

以前にタミフルについての記事は出しています。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2042243549433987
ここでは、タミフルの効果は症状が7日出るのを6.3日に下げる程度と解説しました。

今回の新薬と合わせてインフルエンザ治療薬を解説します。薬の名前はすべて商品名にしています。

昨年までインフルエンザに使える治療薬(西洋薬)は主に以下の4種類ありました。

タミフル 飲み薬 生後2週以降の全年齢 5日間
リレンザ 吸う薬 通常5歳以降 5日間
イナビル 吸う薬 通常5歳以降 1回のみ
ラビアクタ 点滴 新生児以外 基本的に重症例 通常1回のみ

これらは、投与方法や投与期間に違いがありますが、いずれもノイラミニダーゼ阻害薬であり、全く同じ作用機序です。ウイルスの増殖は防げないが、細胞内で増えたウイルスが他の細胞に飛び出るときに使うノイラミニダーゼを阻害することにより、細胞内に閉じ込めて他の細胞に移るのを防ぐというものです。

これらの薬の主なポイントは、以下になります。
・症状のある期間をおおむね1日短縮させる
・発症48時間経過してからは効果を期待できない
・薬剤の違いにより効果に差はほとんどない
・異常行動などの副作用が出やすい
・重症化(小児の脳炎脳症、高齢者の肺炎)の予防効果は期待できない

今回の新しいインフルエンザ治療薬であるゾフルーザは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬というまったく新しい作用機序の薬です。簡単に説明すると、ウイルスが持つ増えるために使う特殊な酵素(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ)を阻害することによりウイルスの増植自体を激減させる薬になります。

病院で説明されることはほとんどないと思いますが、上記に示したように、今までの薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)は知っている人には効果がイマイチ?(ほとんどない?)でしたので、とても期待されていた薬になります。

実際にこの薬は2年以上も前から「1日でインフルエンザを治す薬!」と宣伝されてきた薬です。
http://news.livedoor.com/article/detail/10772813/
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29HX4_Z21C15A0MM8000/

そして、現在このゾフルーザは発売後ものすごい勢いでシェアを拡大しています。
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14802/

では、この新薬の今までに明らかにされている特長をまとめてみます。今の所12〜69歳の健康者から得られたデータで、それ以外の年齢や病気のある方や重症者でのデータはありません。

①ゾフルーザはプラセボ(砂糖玉と考えてください)と比べて症状のある期間を約1日短縮させる
②ゾフルーザはタミフルと比べて症状を短縮する効果がほとんど同じ(60時間を超える例ではむしろ少し効果が劣る)

つまり、今までの薬とまったく同じ効果しか得られていないことになります。1日で治るという謳い文句は・・・??

③ゾフルーザはウイルスの検出期間(排出期間と考えて良い)を約1日に短縮する(タミフルでは約3日プラセボでは約4日)

ウイルス排出期間を大幅に少なくする効果(人に移すことを防ぐ効果)は期待されます。ただし、これは耐性ウイルスでない場合だけです。耐性ウイルスとは(遺伝子変異により)この薬が効かないウイルスです。論文では耐性と言わずに低感受性と言っていますが、ここではわかりやすい耐性とします。

④耐性ウイルスにゾフルーザを使用すると、むしろウイルス検出期間が激増しプラセボより長くなる。症状の出る期間も長くなる。
⑤ゾフルーザは高率に耐性ウイルスが発生する可能性がある(現在のところ成人で1割、小児で2割?データが少ないので詳細不明)

耐性ウイルスであるかないかを判定する簡単な方法はありません。ゾフルーザを使うと耐性ウイルスだけが生き残り、逆にそのウイルスがどんどん流行を拡大する可能性があります。また、すぐにこの薬が効かなくなる可能性もあります。

まとめると今回鳴り物入りで登場したインフルエンザの新治療薬ゾフルーザは、
・今までの薬と同等の効果
・耐性ウイルスであった場合にはほとんど効果がない上に感染を拡大させる可能性がある
・さらに、今後急速に耐性ウイルスが増えていく可能性がある
ということになります。

最後に私のインフルエンザ治療薬と対策についての考えをまとめます。

・インフルエンザ治療薬はどの薬も大差なく、症状を約1日ほど短くする程度
・インフルエンザ治療薬に脳炎脳症や肺炎など重症化の予防効果はない
・インフルエンザ治療薬には精神的な副作用(脳症も含めて)がある
・インフルエンザ治療薬は効果が低く、副作用が強いため、欧米では基本的に使わないのが常識で、入院中や施設に入っている人にのみ限定的に使われる
・インフルエンザ脳炎脳症は、解熱剤や治療薬がむしろインフルエンザの正常な経過を妨げることにより発症する可能性が指摘されている
・病院を(早くに)受診したからといって、重症化や脳炎脳症を防ぐことはできない(逆に病院内で移し合い感染を拡大させています。つまり園や学校、職場などで熱が出たらすぐに病院を受診させるのは間違いです)
・インフルエンザはかぜでありワクチンや治療薬、さらに検査は不要
・流行期に熱が出た場合は病院に行かずに、まずは自宅で熱が下がるまで十分にケアする

以下のサイトはこのゾフルーザについてとても詳しく(しかも検証できるデータだけでとても科学的です!)解説しています。
https://drmagician.exblog.jp/27657579/
fbclid=IwAR0eZ8MLvn4i1KgjUaXCa6shN8iw-yqhKZ2vwnLfb2xLgJpfWJgB8-BUjuE

私の以前の記事もぜひ合わせてご参照ください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2226848267640180
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2227375907587416

関連記事

no image

新型コロナウイルスは人類全体の意識の変容を誘導していく

今回は、一連のコロナウイルス関連の記事としてではなく「私の独り言」として書いておきます。 前回の合宿にご参加の皆様にはすでにお話ししましたが、現代がどのような時期かを考えると、今回の新型コロナウイルスは必然として現れています。 『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は令和の時代の新たな「命定め」』 かつて日本では、感染症は「命定め」と言われていました。命定めを辞書で引くと「場合により亡くなることがある感染症」という意味で使われているそうです。 しかし、本来は、感染症にかかったことをきっかけに、この世界にとどまれる命であるのか、この世界にとどまるにふさわしい生き方をしているのかを見定める […]

no image

アレルギー性疾患に対する予防接種の開発

アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症など)に対する予防接種が登場するかもしれないというニュースですが、なんでもかんでもワクチンで防げば良いのでしょうか? https://www.asahi.com/articles/ASLC65WK0LC6ULBJ00Z.html… 次々と新しいワクチンが開発されていますが、この予防接種は妊婦に打つことにより、子どものアレルギー性疾患(以下アレルギー)の発症を抑えるというコンセプトのようです。 妊婦から(ワクチン中の)薬剤がへその緒を通して胎児に移行し、子どものアレルギーの原因物質を作るmIgE陽性B細胞(免疫細胞の一つ)を強制的にア […]

no image

こどものADHDに対する新薬の製造承認

まもなく子ども向けの新しい薬(ADHD治療薬)が製造承認される予定です。 この記事をきっかけに、子ども達の未来を真剣に考える人が増えてほしいと切に願っています。 12月3日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会、医薬品第一部会でリスデキサンフェタミンメシル酸塩(商品名ビバンセカプセル)という子どものADHD(注意欠陥・多動性障害)に対する新薬の製造販売承認がなされます。 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000207385_00008.html… https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000399143.pdf 記事を […]

no image

帯状疱疹の激増と低年齢化はブースター効果の減少による

まず、免疫についての基本的な知識のおさらいになります。免疫とは、もともとは、一度感染した病原体(ウイルスや細菌など)に二度とかからないことを言います。例えば、一度はしか(麻疹)に感染すると、二度とはしか(麻疹)にかからないことをはしか(麻疹)に対する免疫ができたと表現します(二度なし現象)。 病原体に感染した場合に免疫がつく強さは、病原体がどの程度、体に影響を与えたかで決まります。強く体を蝕む感染症に対しては、当然強い免疫をつけて次の感染に備えるということです。 例えば、かぜを起こすウイルスに対する免疫のつき方を解説すると・・・ ①軽いのどの症状だけで済む場合(のどの一部だけの影響) ②さらに […]

no image

月刊「壮快」2019年6月号記事「遺伝子組み換え(GM)作物について①」

今回は、月刊壮快の記事を補足して、遺伝子組み換え作物(GM作物)についてです。   健康雑誌の月刊「壮快」に「自然派医師が土をいじる。菌とたわむれる。」という記事を連載中です。今月号(2019年6月号)は連載第18回目「遺伝子組み換え食品について①」です。   今回は、月刊壮快の記事を補足して、遺伝子組み換え作物(GM作物)の論文報告で最も重要なものを紹介致します。2012年にFood and Chemical Toxicology誌という食に使用される添加物などの毒性についての専門の医学雑誌に掲載されたSeralini博士の論文報告です。 論文タイトルは「Long term toxicity […]

PageTop