こどものADHDに対する新薬の製造承認
まもなく子ども向けの新しい薬(ADHD治療薬)が製造承認される予定です。
この記事をきっかけに、子ども達の未来を真剣に考える人が増えてほしいと切に願っています。
12月3日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会、医薬品第一部会でリスデキサンフェタミンメシル酸塩(商品名ビバンセカプセル)という子どものADHD(注意欠陥・多動性障害)に対する新薬の製造販売承認がなされます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000207385_00008.html…
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000399143.pdf
記事を理解しやすいように簡単にいくつかの言葉を解説します。
まずは、モノアミン仮説についてです。アミノ基を一つだけ含む(モノアミン)神経伝達物質(とくにセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)が精神症状(うつなど)の原因であるという仮説です。
例えば、うつならセロトニンが減少、ADHDならドーパミンやノルアドレナリンが減少するために起こる症状と考えます。
次に、少し難しい再取り込み阻害薬(RI)について解説します。モノアミン仮説に基づいて開発された一群の薬が再取り込み阻害薬になります。
モノアミンは神経細胞どうしの間(シナプス)に放出されることで情報を伝えます。一度放出されたモノアミンは回収されることで濃度が低くなり、効果が無くなります。モノアミンの再取り込みを阻害する薬とは、この回収を遅らせることで減少しているモノアミンの効果を長持ちさせる薬ということです。
セロトニン(S)ならSRI、ドーパミン(D)ならDRI、ノルアドレナリン(N)ならNRIということです。ノルアドレナリンとドーパミンの再取り込みを同時に阻害するのがNDRIです。うつに最もよく処方されるSSRIとはセロトニン(S)だけに選択的(S)に働くRI(SSRI)という意味です。
先に解説したようにADHDは脳内神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの不足により起こるとされています(これもあくまで仮説です!)。
実際に子どものADHDに最も多く使われているメチルフェニデート徐放剤(商品名コンサータ)はNDRI、アトモキセチン(商品名ストラテラ)はNRIになります。
さて、覚せい剤とは脳を覚醒させる物質という意味ですが、日本では覚せい剤取締法に載っているアンフェタミンとメタンフェタミン(およびその塩類)だけを指します。
アンフェタミンとメタンフェタミンはともにノルアドレナリンとドーパミンの再取り込みを阻害することにより覚醒作用を発揮しますのでNDRIであり、ノルアドレナリンとドーパミンの放出を増やす作用もあります。
つまり、ほとんど同じ作用機序ですが、覚せい剤取締法にのっているからアンフェタミンとメタンフェタミンは覚醒剤、のっていないからコンサータとストラテラは覚醒剤ではなく薬ということになります。(ものすごい裏技ですね!?しかし覚醒剤だとしても薬だとして使うのでしょうね!?・・・誰かの心の声?)
今回承認されようとしている新薬のリスデキサンフェタミンメシル酸塩(商品名ビバンセカプセル)は、アンフェタミンそのものの前駆物質です。つまりこの薬は、体内で覚醒剤であるアンフェタミンに変化して作用するというものです。
体内では覚醒剤に変化するが、飲む前は覚醒剤ではないという理由で薬として製造・認可するということでしょうか。(正気の沙汰ですか!?子どもに使うのですよね!? 覚醒剤を使うのなら覚醒剤ですと親に明確に説明する必要がありますよね!?)
そもそもがこれらの再吸収阻害薬(他の多くの薬も同じです)は対症療法であり、根本的に病気を解決するものではありません。
自分でモノアミンを産生する能力が減っているのが問題であれば、このような薬(再取り込み阻害薬)を使えば使うだけ、ますます自分で作る能力が下がってしまうのではないのですか?ドーパミンやノルアドレナリンの産生が足りないのなら、「なぜ足りなくなっているのか」にアプローチしなければ根本的な対策にはなりません。
アメリカでは1988年、日本では1999年に成人のうつに対するSSRIが登場・発売になり爆発的に売れました。現在、日本だけで100万人以上の人がSSRIを服用しているとされていますが、売り上げは頭打ちになってきています。
最近になり先進国ではADHDを含む発達障害が劇的に増加しているとされています。発達障害が当たり前にあるという認識が増え、実際に診断される子も増えており、薬を投与される基盤が整って来ています。つまり、子ども達が新たな薬のターゲットにされているのです。
発達障害が存在しないとか、様々な支援が必要ないということではありません。発達障害に対する最大限の支援や対策は必要ですが、安易な薬の使用は極力可能な限り慎まなければならないと思います。
発達障害にも、いつも私が強調している腸や腸内細菌の状態が大きく関係しています。薬は対症療法であり、食事や日常生活で発達障害を根本的に予防、改善することは可能なのです。
発達障害の原因や考え方、薬、対策などについては私の本『自然に沿った子どもの暮らし・体・心のこと大全』でも詳しく解説しています。合わせてご参照ください。
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