自然農 その2 自然農とは

 

山の木や野原の草花は土を耕したり、肥料をあげなくても毎年豊かに茂り、成長します。

米や野菜などの作物も同じように、人工的なものは何も必要とせず自然近い状態で栽培できる。それが自然農の基本的な考え方になるでしょうか。

ただし、自然農はあくまで農(法)であり、自然放置ではありませんので、「自分たちの希望する作物」を育て、収穫するためには様々な工夫や知恵が必要になります。

自然農にも様々な方法があり、確立された単一の方法はありません。

このことが、自然農を始めようと思っている人や、実践して行っている人のある意味で混乱の原因となっていることがあります。

私の考える「自然農」とは、なるべく自然の仕組みに沿って、余計な物や行為を行わない農法であると考えています。

 

自然農には以下の特徴が共通してみられます。

・土を耕さない

・肥料をやらない

・農薬をやらない(虫をとらない)

・草をむしらない

自然農のメリットにはたくさんの事がありますが、重要なことを挙げるだけでも、

・環境を破壊しない

・浄化能力が高い(農薬、除草剤、肥料(肥毒)、放射能…)

・作物が安全である

・作物の栄養価が高い

・作物の味がおいしい

・作物を放置しておくと腐敗しないで発酵する

・畑の生き物が豊か(微生物を含め、すべての生物にとってやさしい)

・虫がつかない(虫がついてもごく一部、また全部の作物でなく一部に集中してつく)

・お金がかからない(様々な器械(トラクター、コンバイン、草刈り機)、農機具、肥料、農薬、ガソリン…が不要。草刈り鎌1本あればほとんどの作業は事足ります)

・手間がかからない(作業時間が少ないだけでなく、体に負担になる作業がない 多くの人が草取りのために腱鞘炎になったり、腰が曲がったり、熱中症になることもあります)

まるでいいことづくしのように感じますね。

もし、このような方法が可能であれば、現在一般的に行われている農法(慣行農法で農薬、化学肥料を使った農法や有機栽培も含めます)とはいったい何なのか?ということになります。

しかし、自然農にはデメリットもあるのです。

最も大きいものは、方法論が確立していないため、難しいことです。

とくに、慣行農法からそのまま転換するとまずうまくいきません。

慣行農法では肥料や農薬を使用するために、土(微生物)がダメージを受けてしまっているからと考えられます(次回詳しく述べます)。

自然農法では土に残っている余分な肥料や農薬(肥毒といいます)を抜くのに数年から10年位を要します。その間は収穫が全くないか少ない状態が続きます。

田んぼや畑の状態によっては何年たっても収穫量が増えない場合もあるそうです。

むしろ長年耕作を放置された土地で、いわゆる草ぼうぼうの状態であった所の方がうまくいくことが多いようです。

 

更に、自然農では収穫量・時期・色・形が一定しないため、現状で求められている大量生産型には不向きともいえます。

専業農家の方は、すべての畑をいきなり自然農にするのは、リスクが大きいため、部分的に段階を経て自然農へと移行するのが現実的、という考え方もあると思います。

うまくいかなかったとしても経済的にリスクの低い家庭菜園にこそ最も適している方法と言えるかもしれません。

また、自然農は名前の通り自然に沿った農法です。

自然はその土地の、気候や風土によりそれぞれ異なっていますので、栽培する野菜の種類や作付時期、栽培法なども、それぞれの土地の自然に合っている必要があります。

ですから、基本的な考え方があるにしても、画一的なマニュアルは作りようがなく、うまく栽培するためには、試行錯誤を繰り返し、その土地の自然を良く観察していく必要があるということです。

私は自然に沿った生活の一環として自然農をお勧めしていますが、有機農を否定しているわけではありません。

環境を破壊しない完全循環型の有機農(特に微生物を利用したもの)は問題が少ないと考えています。

しかし、現代農業では、有機農であっても多くの問題があると考えています。

次回に詳しく述べます。

関連記事

稲霊(いなだま)

連日、まるで梅雨の時期のように雨の日が続いています。 わたしは、自然農や有機農で野菜を作っていますが、雨のため農作業もまったく進みません。米は、那須烏山市にある「うるおいの郷」というコミュニティーで、無農薬・天日干し米を共同で作っています。 今年の天候は湿度が高いせいか、米作りを始めてから、はじめて餅米の稲に稲霊(いなだま)が付いているのを発見しました! 現代では、稲の栄養をとってしまうために病原菌であるとされ、嫌われているものです。しかし、この稲霊は私たちにとっては、とても嬉しい自然からの贈り物なのです。 かつては、稲に稲霊がつくと豊作であると言われていたこともあります。それ以上に重要なのは […]

自然農 その3 自然農のしくみ①

  農作業をしながら医師として様々な健康問題を考える中で、医療の世界と農業の世界に「微生物の重要性」というたくさんの共通項があることに気がつきました。   前回の記事で、自然農の基本的な特徴として以下のことを挙げました。   ・土を耕さない ・肥料をやらない ・農薬をやらない(虫をとらない) ・草をむしらない   なぜこのような方法で作物を栽培することができるのか、あるいは、なぜ自然農をいきなり始めてもうまくいかないのかを私なり に考えをまとめてみます。   自然農を支えている最も大事なことはもちろん土(とくに微生物)と考えられ、すべての項目は微生物を傷めないということで共通していま […]

no image

稲の種まきのお手伝い

本日は、私たちに米作りを一から教えて頂いた近所の農家さんへ稲の種まき(育苗)のお手伝いに行ってきました。 お世話になっている農家さんは、近くでは米作り名人として有名な方なのですが、米作りを初めて50年以上になるそうです。 「毎年米を作られて米のことならなんでも知っている大ベテランですね」とお聞きすると「自分はまだ50回しか作っていない。米のことはまだ全くわからない」と笑って答えます。 うーんスゴイですね^^謙虚な姿勢にも感動ですが、物事は観点が変われば全く違う見方になるということですし、何事でも究めるということに終わりはないということになります。日本の様々な道(柔道、剣道、合気道、茶道…)とい […]

no image

2019年の田植え 終了しました

本日は、私の所属する農仲間であるうるおいの郷の田植えでした。 少し風が強かったのですが天気にも恵まれ、とっても気持ちのいい田植え日和になりました。手押しの田植え機で大まかに植えた後、全員で空いた部分や抜けた部分を補植します。 子どもたちは、本当に元気いっぱいです。様々な虫やエビ、ザリガニ、魚、カエル、ドジョウからヘビまで捕まえて大興奮です!田植に限りませんが、何事も楽しく、そして子どもからお年寄りまで一緒に作業するのが一番ですね^^ 食の安全性は自分たちで考えなければならない時代です。健康、環境、社会のいずれの面から見ても、できるだけ多くの人が農に携わるがことができればいいですね。例えば、1家 […]

no image

バジルペースト作りました

毎年作っているバジルペースト(ジェノベーゼペースト)を作りました。 庭でほぼほったらかしに栽培しているバジルなのですが、毎年とてもよく成長してくれます^^ 薹が立って花が咲いてきましたので、急遽収穫です。これに、にんにく、松の実、オリーブオイルを入れミキサーで混ぜるだけでバジルペーストが完成です。このバジルペーストはパスタにもパンにもピザにもとても良く合います。全部小麦製品ですね^^ グルテンフリーを実践されている方が増えてきましたが、小麦も、嗜好品の範囲内でとる、古代小麦のものを使ったり、天然酵母で発酵させるなどの工夫をすれば、大きな問題にはならないでしょう。 小麦に限らずあらゆることに共通 […]

PageTop