活動制限は第2波の発生や推移に関係していない?
8/19日の記事で、全世界のデータから第2波について検査陽性数と陽性率、さらに死亡数との関係をまとめました。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2781967135461621
前回の記事の結論を簡潔にまとまると以下になります。
・陽性者よりも陽性率(陽性数/検査数)の推移が流行の真の実態に近い
・第2波に見えても陽性率で補正すると第1波後のくすぶりであることが多い
・補正でも第2波と考えられる国は3カ国だけであり、これらの国でのみ死亡数の再増加を認める
今回は、これに活動制限のデータを加えて第2波との関係を解析しました。
行動制限は①各国がとった政府の政策による制限と②個々人による実際の制限のデータを解析しました。
結論は、とても単純で、政府の政策や個人の活動制限の程度は第2波の発生やその後の経過に関係していないことになります。
政府による政策は、英国オックスフォード大学による各国政策の解析The Oxford COVID-19 Government Response Tracker (OxCGRT)のデータを使用しました。
https://www.bsg.ox.ac.uk/…/coronavirus-government…
OxCGRTは、各国政府の対応を学校の閉鎖、移動の制限、市民への所得支援、診断体制や医療への投資など17の項目に分け数値化しています。
国の政策と国民が実際にとった活動制限との間には開きがありますので、個々人が実際にどの程度の活動制限をしたのかをグーグルの位置情報のモニタリングデータ(在宅、駅の人出、職場)からグラフ化しました。
https://www.google.com/covid19/mobility/
このデータはGoogleがユーザーの位置情報履歴からそれぞれの場所における訪問数と滞在時間を1/3〜2/6の5週間(ほとんどの国で新型コロナウイルスの第1波前に相当)の平均値との変化を示しています。Googleに顧客の位置情報の提供を拒否している国(中国やロシアなど)のデータはありません。
前置きが長くなりましたが、ここから今回のデータ解析の解説になります。簡単に理解したい人はまとめだけでもご覧ください。
まず、検査陽性数で第2波が始まった日を緑線、その2週間前を黄色線で示します。
なぜ2週間前かというと、COVID-19は、感染してから症状が出るまでの潜伏期が約1週間、症状が出てから検査を受けるまでにさらに数日以上かかるからです。ですから、陽性者が増加(第2波が出現)する何らかの要因があるなら、その2週間前くらいに政府の政策や個人の活動に何らかの変化があったと考えるのが合理的だからです。
検査陽性数で第2波が来ているとされる国を陽性率で補正し、以下の2グループに分けました。
①補正しても第2波がきていると考えられる3カ国(図1〜3)
オーストラリア、イスラエル、クロアチア
②補正によりくすぶりの範囲内と考えられる13カ国(図4〜16)
日本、スロベニア、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、ギリシア、マルタ、スロバキア、スペイン、カンボジア、トリニダード・トバゴ
結果は①②グループとも第2波の2週間前には、政府の政策や個人の活動制限ともに大きな変化はありませんでした。
制限の程度を見ると、政府の政策では①のグループでは70〜80ポイントと強い制限をキープ②のグループでは制限の低い1カ国(日本)は40ポイント、それ以外では60〜80ポイントの制限と①より制限はむしろ低い傾向があります。
個人の活動制限では①②の両グループとも20〜40%程の制限になっています。
次に、第1波収束後の第2波を認めていない6カ国(中国、マレーシア、ニュージーランド、韓国、台湾、タイ)のデータも見てみます。(図17〜図22)
結果は、第1波収束後に政府の政策により制限を強めたのは中国の1カ国(20ポイント増)、ゆるめたのは4カ国(3カ国が20ポイント減、1カ国は40ポイント減)、はじめから制限がゆるい台湾(40ポイント)は変化なしです。
個人の活動制限では、いずれの国も第1波収束後に緩やかに制限を解除しています。
制限の程度は、政府の政策で80ポイントの強い制限をキープしている国は1カ国、60ポイントまで制限解除した国が3カ国、40ポイントまで制限解除している国が2カ国と第2波を認める国より制限がゆるくなっています。
個人の活動制限でも多くが0〜20%と制限がゆるくなっています。
最後に、第2波の発生ではなく発生後の経過について見てみます。
すでに第2波がピークアウトした(流行が縮小に向かっている)国は①の3カ国と②の4カ国の合計7カ国(中国、イスラエル、クロアチア、日本、スロベニア、ルクセンブルグ、カンボジア)になります。
これらの国では、オーストラリアの政府の政策が20ポイント上昇している以外、個人の活動制限を含めてのすべての国で活動制限を強めることなく自然にピークアウトしています。
今回の解析の結果をまとめますがとてもシンプルです。
①すべての国で第2波の前に活動の制限は大きく変わっていない
②第2波が本当にきている3カ国は、見かけ上の第2波や第2波を認めていない国よりむしろ制限が強い状態であった。
③第2波(本当、見かけ上を問わず)は活動の制限を強めなくても自然にピークアウトしている
つまり、今回の解析の結論は、政府の政策や個人の活動制限の程度は第2波の発生やその後の経過に関係していないということです。
これまでの記事に書いたように、流行(波)は必ず収まりますが、発生が完全になくなることはなく、少数の発生=くすぶりの状態が今後もずっと続きます。
くすぶり状態からはいつ第2波が発生してもおかしくないわけですから、今回の結果が示しているように、活動制限では第2波の発生は押さえられず、完全に押さえる為にはおそらく極めて強い制限を長期に続けることが必要になるでしょう。これは、社会を限りなく疲弊させていく選択になります。
活動制限は活動の自由という基本的人権の制限であり、社会に極めて大きな影響を与えています。経済損失、今までの努力の無意味化、無駄な労力、資源の消費、環境の破壊、コミュニケーションの欠落、あらゆる活動・自由の制限、子ども達への影響、心理的な抑圧・・・
制限が必要なら、少なくてもどのような制限をどの期間、どの程度行うかの根拠や評価が必要になるのではないでしょうか。
実際には、今のところ活動制限の程度に関係なくほとんどの国で第2波が発生せず、発生しても自然に収束していきます。
このことから、新型コロナウイルスの流行の経過には、活動制限以上に別の要因(自然免疫や細胞性免疫、集団免疫など)が関係している可能性が高いと考えられます。
これは、新型コロナウイルスは自分の外の対策(ウイルスをもらわない=他者軸)よりも、内の対策(ウイルスをもらっても大丈夫である=自己軸)に重点を置くべきであることを示しています(外の対策をまったくしないという意味ではありません)。
これらについては今後の記事で詳しく解説していく予定です。
これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2728645230793812