欧州の超過死亡からみえるCOVID-19の真の姿・超過死亡② 「COVID-19第1波のまとめ②」
今回の記事は、検査(PCR検査、抗原検査、抗体検査)の方法や正確性に左右されない超過死亡のデータからCOVID-19の真のインパクトを推定してみます。
超過死亡についての解説は前回の記事を参照してください。
データは超過死亡の解析が詳しくなされている欧州の主要20カ国のデータのまとめサイトをもとにしています。
日本の超過死亡の記事を書く予定だったのですが、大きな問題が生じていますので後日になります。
結論は、超過死亡からみるCOVID-19の真のインパクトは、最も死亡率の高かった欧州で季節性インフルエンザと同等か少し強い程度、死亡率の低かった日本ではインフルエンザとは比較にならない程弱いことになります。
ここから、詳しい解説になりますが、図をみるととてもわかりやすいと思います。ブログの方が見やすいですので、ぜひご参照ください。
まずは、ここ4年間の欧州主要20カ国を合わせた超過死亡の推移を示し、超過死亡の見方とそれに対する解説を加えます(図1)。
①例年の死亡数(すべての原因の死亡数)の平均が黒点線、通常起こり得る変動範囲がグレイ、その上限が赤点線になる
②実際の死亡数は青線、超過死亡は青線が下の点線(赤あるいは黒)より上にはみ出た部分になる
単純な超過死亡は黒より上、統計学的に優位な上昇は赤より上になりますが、このホームページでは黒より上を超過死亡と表現していますので、それに準じます。
③超過死亡は2016年から解析されており、主に毎年冬に年をまたいで発生している
例えば2017年冬〜2018年春の時期をここでは2018シーズンと呼ぶことにします。
④山が高いとその週の超過死亡数が多いが、シーズン全体では上にはみ出た部分の面積になることに注意
⑤超過死亡の発生数はシーズン毎で大きく異なっている
実際の超過死亡数を計算してみました。
2017シーズン 約11.7万人
2018シーズン 約15.2万人
2019シーズン 約5.8万人
2020シーズン 約20.8万人
次に、2017、2018、2019の3シーズンのインフルエンザ報告数と超過死亡の関係をみてみます(図2)。
①やはり毎年冬に発生している超過死亡の主な原因はインフルエンザと考えられる
②超過死亡はインフルエンザの流行の時期にあまりタイムラグなく発生している
これはインフルエンザによる死亡は発症から死亡までの期間が短いことが影響していると思われます。
③インフルエンザの発生数が多いからといって必ずしも超過死亡が多いわけではない
そのシーズンに流行したウイルスの種類やその他の様々な影響を受けていると思われます。
では、問題の今シーズン(2020年シーズン)をみてみます。
2017〜2020シーズンを通しての超過死亡の推移の図を再び示します(図1)。
まず、わかることは、
①今シーズンの超過死亡の発生数は例年より多い
②今シーズンの超過死亡はインフルエンザとCOVID-19の両方によるものが含まれるはず
③今シーズンの超過死亡をよく見ると2つの山からなる
順に解説します。
①超過死亡の発生は例年より多い
まず重要なのは「明らかに今シーズンは例年より多い超過死亡が発生している」ことです。
つまり、今シーズンは、欧州では間違いなく例年に比べて多くの死者が出ていることになります。ですから、一部の人が強調する以下の意見の可能性はとても低くなります。
・コロナウイルスは存在しない
・PCR検査はコロナウイルス以外の他の病原体(インフルエンザ、マイコプラズマなど)を検出している
・基礎疾患など別の理由の死亡をCOVID-19による死亡にカウントされている
・保険請求や何らかの意図によりCOVID-19の死亡数が水増しされている
・・・
これらの可能性ももちろんありますし実際に行われていると思いますが、少なくても何らかの理由で今シーズンは死亡数がとても多くなっており、常識的には、これは今回のCOVID-19によるものであると考えられるからです。
陰謀論など検証できないことにも、重要な情報がたくさんあります。しかし、例えば「コロナウイルスはない」「データはすべてねつ造」などと一蹴してしまうと、思考停止になり、他の意見とのディスカッションや現実との整合性がとれなくなります。検証できる部分とできない部分をしっかり分けて考えなければ、きちんと解析している人の意見まで信用されなくなることになります。
②今シーズンの超過死亡はインフルエンザとCOVID-19の両方によるものが含まれるはず
ほとんど指摘されませんが、とても重要なことです。今シーズンの超過死亡はCOVID-19だけでなくインフルエンザによるものも含まれるということです。
今シーズンのインフルエンザの発生数は、日本では記録的な少なさになっています(この理由は後の記事で考察します)。今回の解析は欧州になりますので、欧州でのインフルエンザの発生状況をみる必要があります。
煩雑になりますので、昨シーズンと今シーズンの欧州のインフルエンザ発生数を示します(図3)。
欧州の今シーズンのインフルエンザの流行は昨年と同等の報告数で、ほぼ例年通りに発生しています。つまり、欧州ではインフルエンザによる超過死亡も発生している可能性があります。
例えば、前回紹介したコロナウイルスの超過死亡をセンセーショナルに伝えている記事はインフルエンザを考慮していませんので、解釈に注意が必要です。
The New York Times誌「コロナウイルスの流行で109,000名の死亡が見逃されている」
https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html
この点を踏まえて、今シーズンの超過死亡を詳しくみてみます。
③今シーズンの超過死亡をよく見ると2つの山からなる
注目すべき点は、今回の超過死亡は、よく見ると(45週〜7週の小さい山と9週〜20週に の大きい山)2峰性になっていることです(図4)。
今シーズンのインフルエンザ(欧州全体)とCOVID-19(主要20カ国)の報告数、超過死亡を横軸(日付)をそろえて並べてみます。
発生の時期を考えると、おそらく初めの小さい山がインフルエンザ、あとの大きな山がCOVID-19によるものと思われます。後の山の一部はインフルエンンザによるものが混ざっているかもしれません。
初めの山がインフルエンザで、次の山がCOVID-19によるものであれば、今シーズンのインフルエンザによる超過死亡は約3.5万人、COVID-19による超過死亡は17.3万人になります。
もし、2つめの山にインフルエンザによるものが混ざっていたらCOVID-19の超過死亡はもっと少なくなります。
これらの2つの山がすべてコロナウイルスによるもの(発生時期的に考えにくいですが)であれば、今年の超過死亡は約20.8万人になります。
結論として、超過死亡からみるCOVID-19の本当のインパクトは最も死亡率の高かった欧州で季節性インフルエンザと同等か少し強い程度になります(最大でも2018シーズンの1.37倍)。
日本での死亡率(人口あたりの死亡数)はさらに欧米諸国の50〜100分の1程度になっており、インフルエンザとは比較にならない程弱いことになります(これについては今後の記事にまとめます)。
インフルエンザは毎年流行し、人類はインフルエンザに対してある程度の免疫を持っています。一方、新型コロナウイルスは初めて登場した誰も免疫をもっていないウイルスとされていますが、そのわりにパンデミックを起こすウイルスとしてのインパクトは高くないことがわかります。
これが、あらゆる検査や報告からは見えてこない超過死亡からわかるCOVID-19の真の姿になります。
今後の考察内容としては、
・この程度のインパクトであったのはロックダウンが有効だったから?
・なぜ国によりインパクトが極端に違うのか?
・それ以上に日本を含めアジアで死亡率が極端に少ない理由は?
などが重要になると思います。
これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
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