超過死亡について・超過死亡①「COVID-19第1波のまとめ①」

日本を含めたアジアや欧米ではCOVID-19の第1波は収束しつつあります。そこで、現時点でのまとめを何度かにわけてまとめます。

COVID-19の第2、3波の備えを考える上で、第1波から見えてきた新型コロナウイルスの本当の実態を明らかにし、今までの国の対策の評価をすることが大切になります。その際にとても重要になるのが抗体検査と超過死亡になります。

抗体検査に関しては、すでに何度も解説しましたが、現在の市販のキットでは正確性に大きな問題が指摘されています。正確性の高い実験室レベルの抗体検査の1日も早い開発が望まれます。

一方の超過死亡がなぜ重要なのかと言うと、超過死亡は検査(PCR検査、抗原検査、抗体検査)の精度や正確性に左右されない病気の真のインパクトを評価できるからです。そこで、まずは超過死亡について難しい言葉は一切使わないで説明してみます。詳しくは専門書などをご覧ください。

超過死亡とは、ある時期(冬なら冬、1月なら1月)において、過去の平均と比べてある年の死亡数が超過している(つまり増えている)数になります。超過死亡は、WHOにより提唱され、これまでインフルエンザのより正確な評価に対して使われてきました。

インフルエンザでは、感染した人の全員が病院にかかるわけでも、検査されているわけでも、報告されているわけでもありません。ですから、指定の(定点といいます)医療機関からの報告数だけからでは、インフルエンザによる本当の患者数や死亡数はわかりません。

インフルエンザが流行する時期に超過死亡が発生したら(ほぼ毎年発生しています)、実際の検査数と関係なく、これをインフルエンザによる死亡と推定するのです(正確には様々な補正の計算が入ります)。

日本での例年のインフルエンザによる死亡数は、報告では約3000名くらいですが、超過死亡では約1万人と推定されています。日本でのインフルエンザの致命率が約0.1%と見積もられているのは、例年、インフルエンザには約1000万人が感染し、約1万人が超過死亡と考えられていますので、1万/1000万=0.1%となります。

今回のCOVID-19でもインフルエンザと同様に、正式に報告されている患者数や死亡数は実態とかけ離れている可能性があります。

まず、今報告されている患者数はPCR検査の陽性数になります。しかし、PCR検査は(抗原検査や抗体検査も)以前から精度が問題になっていますし、どのような時に検査するのか、徹底的に検査するのか?ハイリスクだけ検査するのか?などの方針の違いや検査体制はそれぞれの国でまったく異なります。どのように検査、報告するかで患者数はまったく変わってきます。実際に日本での検査数の極端な少なさが指摘されていますね。

次に死亡数は、患者数よりは確実な数字と考えられます(ほとんどの国で国民の死亡数を把握するシステムがあるため)。しかし、死亡したすべての人に新型コロナウイルスの検査をするわけではありませんし、国によっては、介護・高齢者施設やホスピスでは初めから検査をしていなかったりします。また、自宅や路上での死亡例(いわゆる変死)に対する扱いも決まっていません。

さらに、マンパワーや設備の問題から検査できない国もあります。このように報告されている患者数や死亡数は本当の数字とは大きく異なる可能性があります。

これらから計算される罹患率(国民全体での感染する割合)、死亡率(国民全体での死亡する割合)、致命率(感染者あるいは患者での死亡する割合)なども同じです。また、これらの数値の国際的な比較はできないことになります。

とくに、病気の重要度を示す死亡数は、上に挙げた様々な理由により実際の死亡数からかなり少なく見積もられている可能性が指摘されています。これを補正するのが超過死亡になります。

超過死亡についての最もセンセーショナルな報道は以下になります。The New York Times誌「コロナウイルスの流行で109,000名の死亡が見逃されている」https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/21/world/coronavirus-missing-deaths.html他にも日本経済新聞5/24「コロナ感染死、把握漏れも「超過死亡」200人以上か」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59508030U0A520C2NN1000/朝日新聞5/25「世界各国で「超過死亡」コロナ死者、発表数より多い?」https://www.asahi.com/articles/ASN5S6V61N5FUHBI02G.htmlなどになります。

逆に、基礎疾患など別の理由の死亡をCOVID-19による死亡にカウントしていたり、保険請求や何らかの意図によりCOVID-19の死亡数が水増しすることにより過大評価しているのではないか?という指摘もあります。

超過死亡は、単純に国全体の死亡数をみますので、数字は検査の種類や正確性に左右されません。それにより、病気の真の重要性を評価し、国際比較できる唯一の指標であり、以下の様々なメリットがあります。

①どんな検査でもわからない真の死亡数と死亡率が推定できる

②それにより、様々な要因による過小評価や過大評価を防ぎ、病気の真の重要性や社会に対するインパクトがわかる

③国によりばらつきのある検査の方針や体制などを補正して比較できる

一方、超過死亡のデメリットは計算による推計値であることと、死亡の原因を問いませんので、もしかしたら、まったく違う原因の死亡数もカウントしているかもしれない点になります。

いずれにしても、超過死亡からは、様々な解析ができますので、今後何回かに渡ってCOVID-19の第1波を様々な角度から検証していきます。

私の新刊「感染を恐れない暮らし方」も発売中です^^http://urx.blue/0VXKどうぞよろしくお願いいたします。

関連記事

no image

しょう油麹の仕込み

今週末6月1日〜6月2日の健康合宿で行うしょう油作り講座のために、しょう油の仕込みをしています。 私の周りでも自前のみそを作る方が増えて来ていますが、しょう油は難しい印象があるためか、自作されている方はほとんどいないようです。 しかし、しょう油は豆麹を作る事が出来れば(あるいは種麹が手に入れば)とっても簡単に(みそよりも簡単に?)仕込む事が出来るのです。今回の講座では、しょう油作りの醍醐味を伝えられた嬉しく思います。 自分で作れば、材料を厳選することができますし、自分好みにもアレンジする事もできます。必ずしも完璧に出来なくとも、できたものの味わいは格別で健康にもいいものになると思います。 実践 […]

no image

那須烏山市の烏山高校で校外学習「烏山学+」の講義をしました

本日は、地元である那須烏山市の唯一の高校である栃木県立烏山高校で初めての講義でした。 この講義は、烏山校校外学習「烏山学+」のプログラムの一つとして高校2年生に対して行われています。 テーマは「命と向き合う」で、私のいつもの活動を自由に述べてほしいという要望でしたので、様々な内容を楽しくお話しさせていただきました。 ・なぜ医師である私が今のような生活をし、活動しているのか ・なぜ人は病気になるのか ・なぜ病気がこんなに増えているのか ・微生物と人、社会、環境(地球)との関係 ・自然農、自然食、自給自足の生活 ・病気ではなく人を見る ・人の体ではなく人の意識を治す ・意識が生き方(生活、行動、考 […]

no image

ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの高い有効性に対する疑問

世界で最も権威のある医学雑誌の一つとして有名なBMJ(British Medical Journal誌)がホームページでファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの高い有効性に対する疑問を表明しています。https://blogs.bmj.com/…/peter-doshi-pfizer-and…/ ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験の報告論文は以下になります。https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034577 疑問を表明しているのはBMJの副編集長であるPeter Doshi博士で、以下のいくつかの点について、早急に生のデータ […]

no image

子どものマスク使用にはあらゆる副作用があることがわかりました

以前の記事で、新型コロナウイルスによる被害は、ウイルスの直接の害(病気や死亡)や経済的なダメージよりも、とくに子ども達の精神に対する害が最も大きいと書きました。 今回の記事は、子ども(18歳以下)のマスク使用による健康障害の世界ではじめての論文を紹介します。https://www.researchsquare.com/article/rs-124394/v2 ドイツでのオンラインによる調査で、開始後1週間(2020年10月26日)で20353人(主に親)が登録し25930人の子どものデータを集計しています。 布マスクが65%、サージカルマスク(外科用マスクで通常の市販のマスク)21%でした。マ […]

no image

検査陽性率の検討とCOVID-19の世界の現状(2020年10月末時点)

前回の記事で、現在第2波が来ているとされる西欧の解析のデータを示しました。要点は以下になります。・現在、欧州ではCOVID-19の第2波が来ているのは確実である・死亡数の増加はその程度も含めて陽性数ではなく陽性率(陽性者数/全検査数)の増加に一致して推移している。https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2852586808399653 今回の記事は、世界の主要な80カ国のデータをまとめ、流行の現在のトレンドを概観し、陽性率と死亡率の関係も検討しました。 解析した80カ国のリストを図1に示します。この80カ国は、前回(7/22)に解析したものと […]

PageTop