日本の陽性者数の増加を世界のデータから解析する
前回の記事でも書きましたが、日本や狭い範囲のデータを見ているだけでは、偏った考えや結論になります。
5大陸の世界各地(アジア、中東、西欧、東欧、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、オセアニア)の主要な80の国と地域(以下80カ国)のデータをまとめました。まとめた80カ国のリストを図1に示します。
ちなみに現時点でのCovid-19の流行の大まかの傾向は以下のようになっています(図2)。
アジア 一部で感染拡大中
中東 感染拡大中
西欧 第1波の収束中
東欧 感染拡大中
北アメリカ 第1波の収束中
南アメリカ 感染拡大中
アフリカ 感染拡大中
オセアニア 第1波収束後
80カ国中では、未だ感染が拡大、あるいは第1波が収束していない国がほとんどで59カ国に及びます。この中には第1波が収束する前に第2波に移行した国もあるかもしれませんが、今回のデータだけからは解析できません。
現在までのところ世界の主要80カ国中、流行(第1波)の収束に至った国はわずかに21カ国です。日本もその1国に入るので、今回はこの21カ国のデータを解析し、流行のトレンドの実態を考察してみます。
まずは、今回の記事の結論です。
・流行は収束するが、今後も患者の発生がなくなることはない
・陽性率(陽性者/検査数)は、第1波の陽性数とよく相似しており、単純な陽性数よりも流行の実態に近いと考えられる
・日本は現在の陽性数のまま(1日1000人弱程まで)であれば、第2波ではなく「くすぶりの状態」と考えられる。今後、さらに陽性数が増えてくる場合は第2波の可能性がある
・現在の日本の陽性者数であれば、今後重症者や死亡数が大きく増加する可能性は低いと思われる
まず、今回解析した21カ国を第1波の収束後の検査陽性数(以下陽性数)の経過から3つのグループに分けました。
①収束した状態を維持している国 7カ国
②第2波が来ているように見える国 7カ国
③わずかに陽性数が増加傾向にあり、第2波の始まりかもしれない国 7カ国
以下に詳しいデータを示していきます(データはすべて2/6〜7/18までになります)。
①収束した状態を維持している国7カ国
中国、香港、台湾、タイ、エストニア、アイルランド、ニュージーランド
これらの国の陽性者数の推移を図3に示します。
収束後にわずかの陽性者の発生(陽性数)が続いています。
中国ではほとんど発生していない様に見えますが、縦軸の目盛りが大きいだけで、実際には最近でも毎日10〜80人くらいの発生が続いています。
このように、すべての国で一つの流行が収束しても陽性数が0になることは決してなく、わずかな増減を繰り返しながら少数の発生が続きます=これを私は「くすぶっている状態」と表現しています。
もちろん、これらの7カ国で収束後の死亡数の増加は認めません。
②明らかに第2波が来ているように見える国7カ国
オーストラリア、チェコ、スロベニア、ルクセンブルグ、ギリシア、スロバキア、日本
この7カ国に日本も含まれます。
前回の記事に書きましたが、検査数が増えれば陽性者数も増えますので、補正のために陽性率(陽性数・検査数)を計算しました。
すると、陽性率でみても明らかに増加している3カ国(オーストラリア、チェコ、スロベニア)と陽性率では増加していない4カ国(ルクセンブルグ、ギリシア、スロバキア、日本)に分かれました。
まず、陽性数も陽性率も増加している3カ国の陽性数、陽性率、死亡数を図4に示します。
この3カ国の内、死亡数も増加しているのは1カ国(オーストラリア)だけになりますが、死亡数の増加は第1波よりも少なくなっています。
残りの2カ国(チェコとスロベニア)は死亡数は増えていませんし第2波の陽性数がすぐに減少傾向にありますので、第2波にはならないくすぶり状態かもしれません。
次に陽性数は増加していても、陽性率でみると増えていない4カ国を図5に示します。
これらの国では、陽性率で補正を行わないと流行が拡大し第2波が来ているように見えますが、検査数も増えていますので、補正するとくすぶっている状態が続いているだけのように見えます。また、これらの4カ国では死亡数はまったく増えていません。
③第1波後のくすぶり状態の後に現在わずかに患者数の増加傾向(第2波の始まりの可能性がある)を認める国7カ国
オーストリア、スイス、韓国、ベトナム、ベルギー、ハンガリー、アイスランド
この7カ国も検査率を計算しました。
結果は、補正により患者数が増えていると考えられる国が1カ国(アイスランド)ありましたが、唯一検査数を増やしていない国であり、例外かもしれません(図6)。
補正により実際にはくすぶりの範囲内と思われる国は5カ国(図7と図8)、データがなく解析できない国が1カ国(ベトナム)になりました。
これらの7カ国のいずれも死亡数の増加は認めません。
今回の記事をまとめます。
・現在流行の第1波が収束したのは、主要80カ国中、わずかに20カ国である
・収束後は、陽性者数が0になることはなく、少ない患者が発生し続ける=くすぶった状態
・つまり流行は収束するが、患者の発生がなくなることはない
・くすぶった状態からいつ第2波なってもおかしくない
・前回の日本の解析で使用した陽性率(陽性者/検査数)は、国により検査の違いがあっても、解析したすべての国で第1波の陽性数とよく相似しており、単純な陽性数よりも実際の推移に近いと考えられる
・陽性者数が増加して、流行の第2波のように見えても、補正によりただのくすぶりの範囲内であることが多く、現在の日本の増加もこのパターンと思われる
・つまり、日本は現在の陽性数(1日1000人弱程まで)のままであれば第2波ではなく、くすぶりの状態と考えられる。もちろん、今後さらに陽性数が増えてくる場合は第2波の可能性がある
・収束後に陽性者数が増加している14カ国(第2波様の増加、微増のどちらも含む)で、死亡数が増加しているのはわずかに1カ国のみである。
・現在の日本の陽性者数であれば、今後、重症者や死亡数が大きく増加する可能性は低いと思われる
・Covid-19は今まで以上に軽症化の傾向にあり、発生数ではなく重症者数や死亡数に着目する必要がある