今シーズンの日本の超過死亡・超過死亡④ 「COVID-19第1波のまとめ④」

今回は、日本の今シーズンの超過死亡についてになります。

超過死亡のデータは、後で必ず必要になると思いますので、淡々と続けていきます^^

今までの超過死亡の記事はリンクを参照して下さい

COVID-19関連の記事が増えていますので、私の記事のリンク集を新しくしました。あわせて、ブログもぜひご参照ください。https://shizenha-ishi.com/blog/・超過死亡の記事リンク①超過死亡について(6/…

本間真二郎さんの投稿 2020年6月20日土曜日

結論は、今シーズンの日本では、インフルエンザ、COVID-19ともに超過死亡は発生していないか、発生していてもごくわずかであることが予想されます。

以下、詳しい説明になります。

実は、日本では超過死亡は古くから解析されており、超過死亡を迅速に計算できるシステムがあります。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2112-idsc/jinsoku/131-flu-jinsoku.html

これはインフルエンザに対する社会へのインパクトを迅速に伝えるために使われてきました。欧州の超過死亡の記事で解説しましたが、毎年冬に発生している超過死亡はインフルエンザによると考えていいと思います。

欧州の超過死亡からみえるCOVID-19の真の姿・超過死亡②「COVID-19第1波のまとめ②」今回の記事は、検査(PCR検査、抗原検査、抗体検査)の方法や正確性に左右されない超過死亡のデータからCOVID-19の真のインパクトを推定し…

本間真二郎さんの投稿 2020年6月17日水曜日

まず、日本の感染症研究所(感染研)が独自に計算しているインフルエンザによる超過死亡の長期の推移を示します。これは、私の以前の記事に書いた欧州の超過死亡とはまったく計算法が異なる(であろう)ことに注意してください。

これからわかることは以下になります。

①超過死亡の数は年により全く異なる。

②全発生がない年(90-91,95-96,06-07,13-14,15-16シーズン)もあれば4万人弱発生している年(98-99シーズン)もある

③発生数は必ずしもインフルエンザの発生数には比例しない

以上を踏まえた上で問題の今シーズン(2019冬〜2020春)を見ていきます。欧州の超過死亡の記事で考察したように今シーズンの超過死亡には、インフルエンザによるものとコロナによるものの両方が含まれるはずです。

今のところの感染研の公式な発表では、

①インフルエンザによる超過死亡はない

②コロナウイルスによる超過死亡はこのシステムでは計算できない

とされています。

超過死亡は、検査の方法や精度には左右されない数字ですので、実は日本では遥かに多くのCOVID-19が見落とされているという指摘や、様々な対策が適切であったかどうかを客観的に判断できることが期待されます。

・日本経済新聞5/24「コロナ感染死、把握漏れも「超過死亡」200人以上か」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59508030U0A520C2NN1000/

・朝日新聞5/25「世界各国で「超過死亡」コロナ死者、発表数より多い?」

https://www.asahi.com/articles/ASN5S6V61N5FUHBI02G.html

などを参照してください。

さらに、感染研の超過死亡のグラフが、なぜか5/24に大きく変更されており、改ざんではないかという意見も出ています(詳しくは以下のリンクを参照)。

・論座5/27「「超過死亡グラフ改竄」疑惑に、国立感染研は誠実に答えよ!」

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020052600001.html

これらの点を含めて、解説しますが、これまでに欧州の超過死亡のデータを解析していますので、考察は簡単になります。

まず、日本での今シーズンの超過死亡を理解するのに重要な点は次の2点になります。

①インフルエンザの発生数は日本では記録的に少なかった

②COVID-19の死亡率は日本は欧米の50〜100分の1ととても低い

順に解説します。

①今シーズンはインフルエンザの発生数が記録的に少なかった

感染研のグラフは年をまたいだグラフではなく、シーズンごとの発生がとてもわかりにくいためWHOのグラフを示します。

ここ4年間のインフルエンザの発生

ここ12年間のインフルエンザの発生

このように、今シーズンの日本でのインフルエンザの報告数は、ここ12年間で最低になります。

この理由は不明です。たまたまなのか?(欧米での発生は例年通りです)

一説では、昨年秋頃に何らかの感染症が流行ったから(通常のコロナ、SARS-X、その他原因不明のもの)という仮説があります。

例えば、2009年の季節外れの大きな山は新型インフルエンザの流行です。この流行のため、その年の通常の冬に発生するインフルエンザ数が激減しています。これは干渉と言われる現象の一種です(ある感染症が流行ると別の感染症は流行りにくくなる)。

また、欧米でのインフルエンザによる超過死亡は例年よりとても少ないため、弱毒タイプが今シーズンの特徴かもしれません。これに加え、患者数自体が少ないために、インフルエンザによる超過死亡が発生しなかったという結果は妥当だと思います。

②COVID-19の死亡率は日本は欧米の50〜100分の1ととても低い

欧州のCOVID-19の超過死亡と公式の死亡率の相関では、死亡率が150(100万人につき)くらいにならないと超過死亡が発生していませんでした。

現時点の日本のCOVID-19の死亡率は7〜8ほどととても低いので、おそらくこの死亡率では超過死亡が数字になるほどの値にはならないと考えられます。

つまり、今シーズンの日本ではCOVID-19による超過死亡は発生していないか、発生していてもごくわずかで、少なくても日本の通常の死亡数に影響するような数にはならないと思います。いずれにしても例年約10000人程の超過死亡が発生しているインフルエンザとは比較になりません。

今回の記事のまとめは、

日本の今シーズンはCOVID-19とインフルエンザによるによる超過死亡はともに発生していないということになります。それにより、今シーズン(冬期)の日本の総死亡数は例年より減少していたと思われます。

欧州の超過死亡の解析では、死亡率が150を超えないと数字として発生しません(日本では約18900人の死亡に相当)。しかし、毎年数字を出している日本のインフルエンザの計算システムではわずか数千人の死亡でも超過死亡を推定しています。

データの一般への公開とともに、このような優れたシステムを迅速にCOVID-19にも適応していただきたいですね。

これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2641620056162997

私の新刊「感染を恐れない暮らし方」も発売中です^^

http://urx.blue/0VXK

どうぞよろしくお願いいたします。

関連記事

no image

新型コロナウイルスの遺伝子変異は今のところ重症化と関係していない

世界中から報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の全ウイルス(総数183,422ウイルス)の遺伝子の変異を解析しました。 ぜひ、前回の記事も参照してください。https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2891197281205272 結論は、前回書いた様にとてもシンプルです。「現在までに新型コロナウイルスのたくさんの遺伝子変異(いわゆる型)が報告されてきたが、遺伝子(型)の違いにより重症度に大きな違いは認められない」 今回は、各地域の結果を紹介する前に、理解しやすいように、新型コロナウイルスの遺伝子解析についての基本的な知識をまと […]

no image

ステロイド依存症

乳児湿疹やアトピー性皮膚炎(以下アトピー )の子がものすごく増えていますが、私は治療にステロイド剤の使用をお勧めしていません。理由は、これらの治療にステロイド剤が必要ないためですし、ステロイド剤の副作用、抵抗性、依存性を考えると逆に使用してはいけないと考えています。 私は、ステロイドを使わない医師の団体に入っています。この団体に所属している医師数は約50人程になりますが、現在の日本の総医師数は約31万人ですので、割合としてはとてもとても少ないことになりますね。 このリンク先の子どもへの医師の治療は、私がお勧めしている治療のほとんど真逆をしています。しかし、病院を35カ所受診しても解決にはならな […]

no image

免疫のとても簡単なまとめシリーズ① 「免疫とは」

新型コロナウイルスの影響を受け「免疫」についての記事や情報が多くなってきました。免疫力、抗体、集団免疫、自然免疫、獲得免疫、T細胞免疫・・・など、たくさんの言葉が使われています。 「免疫力」という言葉はとても便利な言葉で、免疫力を上げる食べもの、暮らし方、サプリメント、体操など、日常的にも使われます。 しかし、実は免疫系はとてつもなく大きく複雑なシステムで、いまだに人類はこの全容はよくわかっていませんし、専門家の間でも意見の違いが多くあります。 また、免疫の知識は日々ふくれあがっており、たとえ医師であっても、基本的なことを学生時代に勉強しただけですので、免疫について十分に理解していないことが多 […]

no image

コロナが怖いですか?ワクチンが怖いですか?

ファイザーの新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの接種が英国と米国で始まっています。 今回の記事は、ファイザーの新しいワクチンについての副作用の情報です。すでにたくさんの人が記事にしていますが、一人でも多くの人に伝えたほうがいいと思いますので少し補足してまとめました。 米疾病予防センター(CDC)では、予防接種を受けた人の副作用を含めた健康上の問題発生の状態をスマートフォンアプリを使ってリアルタイムで把握しています(V-safe Active Surveillance)。 ファイザーのmRNAワクチンは12/14から接種を開始して12/18までの初めの5日間の結果がCDCから予防接種実施 […]

no image

ワクチンの有効率とは

ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの第3相試験の中間結果が出ており、有効率90%だそうです。詳しい数字のデータは明らかになっていません。 皆さまはワクチンの有効率90%と聞いてどのような印象を持たれるでしょうか? 100人ワクチンを受けると90人の発症が防げるというのが一般的なイメージになるのではないでしょうか(図1)。 しかし、ワクチンの有効率という科学的な定義は全く違います。 ワクチン学での有効率とは、ワクチンを受けた場合、受けなかった時と比べて発症をどのくらいの割合で減らすかになります。 わかりにくいので、例を図2に挙げて説明します。文章だけでは難しいので、ぜひ図も見てください。 […]

PageTop