ワクチンの有効率とは

ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの第3相試験の中間結果が出ており、有効率90%だそうです。詳しい数字のデータは明らかになっていません。


皆さまはワクチンの有効率90%と聞いてどのような印象を持たれるでしょうか?


100人ワクチンを受けると90人の発症が防げるというのが一般的なイメージになるのではないでしょうか(図1)。


しかし、ワクチンの有効率という科学的な定義は全く違います。


ワクチン学での有効率とは、ワクチンを受けた場合、受けなかった時と比べて発症をどのくらいの割合で減らすかになります。


わかりにくいので、例を図2に挙げて説明します。文章だけでは難しいので、ぜひ図も見てください。


①20人の場合
ワクチンのテストに総数20人参加しました。
受ける人も受けない人もともに10人ずつに分けます。
一定期間後に何人が感染したかを見ました。
結果は、受けた人1人、受けなかった人10人(全員)が感染しました。
ワクチンの有効率は{1−(1/10÷10/10)}×100=90%になります。 
『素晴らしい効果ですね!』・・・心の声


②2万人の場合−1
ワクチンのテストで総数2万人参加しました。
受ける人も受けない人もともに1万人ずつ分けます。
一定期間後に何人が感染したかを見ました。
結果は、受けた人300人、受けなかった人3000人が感染しました。
ワクチンの有効率は{1−(300/10000÷3000/10000)}×100=90%になります。 
『感染するはずだった人数を大きく減らしている。しかし打っても300人はかかるのか・・・』

③2万人の場合−2
ワクチンのテストで総数2万人参加しました。
受ける人も受けない人もともに1万人ずつに分けます。
一定期間後に何人が感染したかを見ました。
結果は、受けた人1人、受けなかった人10人が感染しました。
ワクチンの有効率は{1−(1/10000÷10/10000)}×100=90%になります。 
『打たなくても1万人のうち、9990人は感染してないけど、打つ必要あるの?』


④2000万人の場合
ワクチンのテストで総数2000万人参加しました。
受ける人も受けない人もともに1000万人ずつに分けます。
一定期間後に何人がコロナに感染したかを見ました。
結果は、受けた人1人、受けなかった人10人が感染しました。
ワクチンの有効率は{1−(1/10000000÷10/1000000)}×100=90%になります。 
『効果というよりは詐欺?この10人の感染を防ぐために1000万人にワクチンを打つの?』


4パターンのすべてで何と!有効率はすべて同じ90%になります。

しかし、ワクチンの効果は、それぞれでまったく異なる印象になるのではないでしょうか?


このようにワクチンの有効率は、感染率が低い感染症ではあまり意味をもちません。


なぜワクチン学ではこのように難解な数字を「有効率」としているのでしょうか?


さらに、ワクチンは効果だけで判断するものではないことも大切ですね。


今回のファイザーのデータは、中間報告で正式な数字は出ていないので、①〜④のうち、どれが近いでしょうか・・・?

これから、新型コロナウイルスワクチンのたくさんの報告が出てくると思います。「有効率90%!素晴らしい!」と短絡的に判断する前に、情報をしっかり確かめることが必要になります。


これまでに書いたコロナウイルス関連の記事のまとめは以下を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2728645230793812
どうぞよろしくお願いいたします。

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