日本の現在の陽性者数の増加はCovid-19の第2波なのか?
「日本の現在の陽性者数の増加はCovid-19の第2波なのか?」
6月末より、新型コロナウイルスの日本での感染者数(検査の陽性数)が激増しているとされています。
一説では、早くも第2波が出現と言われています。一方では、検査数も激増しており、患者数はまったく増えておらず、数を水増ししているだけという意見もあります。
情報にはまったく反対の意見を含めて様々なものがあり、調べれば調べるほど何を信じていいのかわからなくなっています。Covid-19ではとくにその傾向が強くなっています。
事実は一つですが、真実は人それぞれで人の数だけあります。人は今までの自分の考えに合っているものやそうであってほしい情報だけを選択的に集める傾向があります。
何が本当か迷った時は、人の「意見」を見るのではなく、「事実」だけを見ます。そして自分の頭(自己軸)で判断することをお勧めします。
本当はデータも自分で解析するのがいいのですが、これはなかなか難しいことが多いですね。私は可能な限り自分でデータを解析します。
まずは、今回の記事の結論です。
・流行の第1波(5/10頃まで)と現在(7/19)では検査する基準が大きく異なるため単純に数を比較できない
・検査陽性率(陽性者数/全検査数)でみると、今までの陽性者数の推移ととても近くなり、今までと今後の数字の比較が可能になる。
・日本では現在は第1波がほぼ収束し、陽性者数が少ないくすぶった状態と考えられる(今後も完全に0になることはありません!)
・陽性数は補正した後でも現在微増しているように見え、これがくすぶった状態か第2波に移行するかは不明
・重症者数や死亡者数は今の所増加を認めていないが今後の推移を見る必要がある
以下に詳しいデータを示していきます。
まず患者数の推移を図1に示します。
この補正しないままのデータでは、現在、2つめの山を築きそうな感じで患者数は明らかに急増しています。このままいくと、第1波以上の大きな山を形成しそうな勢いにも見えます。
次に、検査数ですが、Covid-19は無症状(感染者の半分から2/3)や軽症者が多いのが特徴です。検査数を増やすと、これらの今まで検査してこなかった人も拾うことになり、当然陽性者数も増えます。
日本で検査数が大きく増えているのは、第1波(主に疑いが強い人限定)と現在(無症状を含めて広く検査)では検査をしている対象が大きく異なっているということが大切です。
また、日本の患者数の大部分しめる東京都では、メインの検査機関以外での報告を途中から追加しているためカウント数が増えています。
検査や報告の仕方が違えば、陽性者数だけではなく、あらゆる数字(致命率や罹患率など)が違うことになります、つまり、第1波(5/10頃)までと現在の数字をそのまま繋げて考えること自体が大きな問題になります。
以上を踏まえて、検査数の推移を図2に示します。
多くの人が指摘していますが、検査数も大きく増えています。検査数の増加は日本では患者数の増加とまったく同じ形で推移しているように見えますので、これをみると、現在の患者数の増加はただ単純に検査数を増やしているからとも見えます。
そこで、陽性者数を検査数で割った陽性率を計算し、さらに極端値(0.2以上)を除いて補正したものを図3に示します(この作業をしないとグラフの全体像が大きく歪みます)。
結果は陽性率と陽性者数は第1波の推移もほぼ同じ形になります。これで、陽性者数の推移を第1波までと現在を連続して考えることができるようになり、これが本当の実態により近いのではないでしょうか。
この図をみると、日本の現状は第1波がほぼ収束し、感染者の発生がくすぶっている状態になります。
しかし、補正をした後のこの図でも、現在患者数は少し増加傾向にあり、これが本格的に第2波のようになるのか、くすぶった状態がだらだら続くのかは、もう少し推移をみないとわからないことになります。
次に、重症者数と死亡者数の推移を図4に示します。
6月末からの重症者数と死亡者数は全く増えておらず、減少から横ばいの状態が続いています。
ただし、陽性者数の増加から重症者数や死亡者数増加には、1〜2週間のズレがありますので、今後これらが増加するかどうかを見る必要があります。6月末から陽性者数は増えていますので、もし変動があれば、まもなく数字に変化が見られる時期に入ると思います。
重要なことは、今後は陽性者数の推移よりも、重症者数や死亡数の推移を見ていく必要がありことです。
今回の記事のまとめです。
・日本では流行の第1波と現在では検査する基準が大きく異なるため、実際の検査数も大きく増えており、単純に比較できない
・新規陽性者数を検査数との比(検査陽性率)にし、若干の補正をすると、今までの陽性者数の推移ととても近くなり、今までと今後の数字の比較が可能になる。
・補正したデータでは、日本では現在、第1波がほぼ収束し患者数が少ないくすぶった状態と考えられる
・しかし、検査陽性数は補正した後でも微増しているように見える。これがくすぶった状態か第2波に移行するかは不明
・重症者数や死亡者数は今の所増加を認めていないが今後の推移を見る必要がある
・「コロナはない」「患者数はすべてねつ造」などと安直に結論を決めてしまうと事実との整合性がとれずに思考停止となる
補足になりますが、データの解析はどのデータベースを使うかにより異なります。世界の3大データベースの一つであるour world in dataでも同じ解析をしてみましたが、結論は同じで、よりわかりやすい結果(図5)になりました。
日本や狭い範囲のデータを見ているだけでは、偏った考えや結論になります。次回は、世界の主要80カ国の解析データと照らし合わせて今回の記事を検証してみます。
これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
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