月刊「壮快」2018年10月号「腸内細菌が作る短鎖脂肪酸が腸の内外で大活躍」

健康雑誌の月刊「壮快」に「自然派医師が土をいじる。菌とたわむれる。」という記事を連載中です。

今月号(201810月号)は連載第10回目「腸内細菌が作る短鎖脂肪酸が腸の内外で大活躍」です。

短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が産生する短い脂肪酸(炭素数25個)のことです。あまり解説されないことが多いのですが、腸内細菌が作り出すたくさんの物質の中で、最も重要といってよいくらい大切で、腸内細菌のほとんどの作用を担っています。

短鎖脂肪酸は、大腸の栄養源であり、消化管に直接作用する以外にも消化管以外のあらゆる臓器にまで(ホルモンや神経伝達物質のように)メッセンジャーとして作用しています。

代表的なものは酢酸、酪酸、プロピオン酸で、これらは、食べ物からは摂れずに、腸内細菌により腸でつくられることが大切です。

短鎖脂肪酸の材料は、食物繊維とオリゴ糖、難消化性成分、つまり主に糖質であり、腸内細菌に短鎖脂肪酸を作ってもらうのに糖質はなくてはならないものになります。

このこと一つだけをとっても、ケトン体ができるような極端な糖質制限をしてはいけないことがわかります。糖質制限ではなく糖質選択が大切になります。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2076244146033927?

短鎖脂肪酸の非常にたくさんの働きが次々と明らかになってきており、書ききれないくらいですが、主なものだけでも挙げてみます。

・大腸細胞の主要なエネルギー源
・大腸粘膜の水、電解質(Na)吸収促進
・大腸粘膜の血流の増加
・消化管ホルモンを分泌
・弱酸性にし、病原菌防御 
・蠕動運動をおこして便通を良好に(便秘予防)
・腸の炎症を修復(クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などを予防)
・がん予防(大腸がんだけでなくあらゆるがん)

・ミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄など)の吸収促進
・免疫系を調整(暴走を防ぐストッパー アレルギー、自己免疫疾患の予防)
・交感神経に作用し、代謝を上げる(肥満予防)
・宿主腸内細菌間の情報伝達(酸のリレー)

・三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)の代謝調節・・・
グルコースーインスリン代謝(糖尿病予防)
脂質代謝(脂肪蓄積抑制、コレステロール合成抑制)
窒素代謝(つまりタンパク質代謝)

腸内細菌によい食事とは、腸内細菌に短鎖脂肪酸を作ってもらう食事といっても良いと思います。

そして、腸内細菌が円滑に短鎖脂肪酸を産生すると、その後の代謝により、いわゆる「酸のリレー」が起こり、他の腸内細菌にも人にも有益に作用します。

腸内細菌たちが、それぞれ栄養源を独占するのではなく、共存する方向であり、腐敗ではなく発酵に進むことになります。

つまり、短鎖脂肪酸が、腸内環境(腸全体が良いのか悪いのか)を決定しているのです。

短鎖脂肪酸は、とても重要ですので、今後フェイスブックやこのブログでも詳しく解説していきます。

興味のある方は、ぜひ月刊「壮快」をご覧ください。

関連記事

微生物を排除してきた歴史と病気との関係 ~アレルギーや自己免疫疾患が増加している最も重要な原因~

まず、これまでの記事のいくつかの重要な事項の確認になります。   ①人とは一個の独立した生物(存在)ではなく、腸内細菌などの常在微生物(さらに、かつては寄生虫を含めた)と共生している複雑な生態系(超個体)である。   ②私たちは、私たちだけでは免疫をうまくコントロールできず、腸内細菌などの常在菌や常在ウイルス、寄生虫などと共生(連携)することにより、正常な免疫反応を維持できる。   ③これらの微生物を排除したことが、近年爆発的に増えているアレルギーや自己免疫疾患、さらには、その他のほとんどの病気(ガンや生活習慣病などの慢性病)の最も重要な原因である。   ④腸内細菌などの常在菌は人生のごく初め […]

no image

新型コロナウイルス感染症の重症化のカギはACE2(アンジオテンシン変換酵素2)にある COVID-19⑨

新型コロナウイルスの記事を連続で書いています。 今までの記事のリンクのまとめをつくりました。ぜひ合わせてご参照ください。 https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2641620056162997 前回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化と獲得免疫系の関係の記事を書きました。今回の記事は、COVID-19の重症化のカギはACE2(アンジオテンシン変換酵素2)にあることを説明します。とても重要な情報でCOVID-19の核心に迫ります^^ぜひ、今後の生活や考え方の参考にもしていただきたいと思います。 前回の記事の重要な点は以下の […]

no image

自閉症を含む発達障害と腸および腸内細菌の関係

少し遅くなりましたが、糞便移植により重症の自閉症の子の症状が47%も減少したという報告の記事をシェアいたします。 http://karapaia.com/archives/52273117.html 糞便移植というのは、簡単に言えば腸内細菌を移植するということです。腸および腸内細菌の状態が人の健康に最も重要です。ですから、健康な人の腸内細菌を移植することにより多くの病気を改善できる可能性があり、実際に既にたくさんの難病や生死に関わるような重篤な病気に対して行われ、効果が確認されています。 今回の記事は、自閉症を含む発達障害と腸および腸内細菌の関係まとめます。結論は、発達障害は腸および腸内細菌の […]

no image

微生物の排除が病気を作っていることが常識になる時代へ

近所の本屋さんで「あなたの体は9割が細菌」という本が目に止まりましたので、早速購入してみました。簡単に概説し、私の意見を加えてみます。 ゲノムとは1つの生物の遺伝情報で、本体は細胞内のDNAです。 DNAは4種類の塩基(文字のようなものに相当)が並ぶことにより(配列が)、情報を伝える設計図になっています。 ヒトゲノムは30億塩基もの長さがあり、このすべての配列を解析したのがヒトゲノム・プロジェクトで、2003年に完了しました。 これにより当初は、病気のメカニズムのほとんどを解明できるとまで期待されていましたが、遺伝子の配列だけではほとんど何も分からないことがはっきりし、思ったほどの成果はありま […]

no image

微生物の排除が現代病を引き起こすメカニズム~現代人は出生時から病気になりやすい状態になっている~

これまでの記事で、近年急増している現代病(アレルギー、自己免疫疾患、自閉症、さらには多くの慢性病)が寄生虫や微生物を排除していることが重要な原因であることを説明し、さらに産業革命以来の超長期的な視点からもそのことを確認してきました。 私たちは独立した一つの生命ではなく、人類の始まりからずっと長い間、腸内細菌などの常在菌や常在ウイルス、さらにかつては寄生虫などと供に生きてきた超個体(生態系)なのです。   私たちの身体の腸内や口の中、皮膚などは、これらの微生物がいることが正常な状態であり、適切に免疫をコントロールするためには、これらとの連携が必要であるため、微生物を排除することにより免疫の異常が […]

PageTop