一般家族内で新型コロナウイルス感染が疑われたり、すでに発症者が出た場合の対応(2/26) COVID-19⑤
連日、新型コロナウイルスの記事を書いています。今までの記事のリンクを以下にまとめておきます。ぜひ合わせてご参照ください。
①最も重要な情報の簡潔なまとめ
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2622431101415226
②新型コロナウイルスの臨床的特徴(2/22の時点)
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2623921001266236
③新型コロナウイルスについてのウイルス学的な特徴
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2625162077808795
④一般家庭での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2626104541047882
今回の記事は、予防ではなく、家族内で新型コロナウイルス感染が疑われたり、すでに(診断された)発症者が出た場合の対応の考え方をまとめます。感染予防と同様に、基本的な考え方や対処法は、毎年流行する季節性インフルエンザとほぼ同様になります。要点を箇条書きで書き、その後に解説を補足で追加します。
①まずは自宅で待機する
②すぐに病院にいかない
③重症な場合は病院を受診する
④薬は原則として使わない
⑤自宅での対応 基本は安静にし、水分とミネラルを十分に補給すること
⑥家族内の感染者の隔離と対応のまとめリンク
簡単な対策は箇条書きに書きましたが、以下に補足します。
①まずは自宅待機です!!
感染症の流行期に発熱、咳、下痢などの感染症状を認める場合は、子ども達は園や学校を休ませましょう。大人の仕事も職場への出勤は控えます。まずは原因に関係なく休むのが原則です。これが、人に感染を移すのを防ぎ、流行の拡大を阻止する最も効果的な方法です。これを徹底しないことが感染が拡大する最大の原因です。
とくに流行期には、インフルエンザでもコロナウイルスでも他の風邪のウイルスでも原因は問いませんし、すぐに区別する必要もありません。
感染が疑われる時に無理をして通勤、通学することは感染を拡大させるだけであり、美徳でもなんでもなく、他人や学校、職場、社会に迷惑をかける行為です。原因にかかわらず、熱や咳、下痢など、感染症の症状がなくなってから2〜3日は休みましょう。
自宅待機ですので、通勤、通学だけでなく、病院も含め、その他の外出も控えるという事です。軽症であれば、すぐに病院の受診も必要ありません。
今回の新型コロナウイルスにかかわらず、毎年、インフルエンザなどの流行もみられるのですから、仕事は、普段から自分が休むときの対応、対策を職場と相談して考えておきましょう。現代は自宅でもできる仕事がたくさんありますし、会議であってもネットで簡単にできます。
もちろん経過が良くない場合は、感染対策(感染症をもらわない、うつさない)を最大限にとりながら病院を受診します。感染対策の基本は具体的には昨日の記事を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2626104541047882
②すぐに病院にいかないこと
通常の健康成人や小児は、熱や軽い症状ですぐに病院を受診したり、させたりしないようにしましょう。同様に園や学校、職場はすぐに病院の受診や検査をするように指導してはいけません。
インフルエンザだから(コロナウイルスだから、・・・だから)欠席にならない、診断しなければならない、報告しなければならないなどの対応は明らかな間違いであり、そのような決まりが、感染を拡大させ、医師を疲弊させ、医療費を増大させています。風邪だから人にうつしてもいい、インフルエンザだから、コロナウイルスだからうつしてはいけないわけではありません。
・軽い症状でもすぐに病院にかかる、薬をもらう
・心配だから念のため病院を受診しておく
・診断のために何度も病院を受診する
出席や出勤可能の確認や欠席や欠勤の許可を得るためなど
・検査が陰性であれば症状があっても登校や出勤すること
などが明らかに感染を拡大させています。つまり病院や学校、職場などでうつし合っているのです。
どのウイルス感染症も発症してすぐに受診しても診断できませんし、通常の経過であれば治療も必要ありません。現在のところコロナウイルスをすぐに(その場で)診断できる一般病院はありません。インフルエンザウイルスは通常の医療機関で15分くらいで診断できますが、発症後約1日経過していない場合はかなりの確率で結果を間違えます。
このような不確かな検査で感染管理(出欠や隔離の決定)をしてはいけません。また、抗ウイルス薬をもらう為に検査を受けたり、病院を受診させる必要もありません(次回の記事を参照してください)。
救急対応が必要な命にかかわるような状態(脳炎脳症、サイトカインストームなど)は早くに病院を受診したり、薬をのんだからといって防げることはまったくありません。発症してすぐに受診しても感染を移し合う以外にメリットはほとんどないということです。
病院を受診するメリットは、経過が長く、重症化(肺炎など)するリスクに対する対策(脱水に対する点滴、対症療法薬(咳や痰の薬)、場合により抗ウイルス薬などの内服、入院処置)くらいしかありません。
日本でどのようになるかは全くの不明ですが、中国の感染者44000例のまとめ報告をみると、感染者の15%弱が中等症(入院が必要)で、5%弱が重症(ICU管理が必要)とされています。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2623921001266236
今後、日本で新型コロナウイルスの感染が急速に拡大した場合に、それに伴って中等症以上の患者も増大します。このような状態で、軽症の人が病院に殺到した場合、あっという間に病院の機能は麻痺、停止します。
③重症な場合は病院を受診する
では、どのような場合に病院を受診すればいいかの目安を示します。
まずは厚生労働省では以下のように指導しています。
https://www.mhlw.go.jp/…/kenkou…/dengue_fever_qa_00001.html…
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く
・強いだるさや息苦しさがある
・高齢者や基礎疾患がある場合は上記の2つの症状が2日程度続く
また、受診前に各都道府県が開設している帰国者・接触者相談センター(下記リンク)に電話し、そこで勧められた医療機関を受診するように指導しています。
https://www.mhlw.go.jp/…/…/covid19-kikokusyasessyokusya.html
次に、私の考えを示します。
今回の新型コロナウイルスは、ほとんどが軽症で経過すると思われますが、明らかに一部に重症化する可能性のある感染症です。上にも書いたように、軽症な場合には病院を受診しないのが原則ですが、自宅待機とは、決して状態が悪い時に無理をしてみる事ではありません。
また、すべてを自然の経過に合わせて、何もしない事が良い事ではありません。基本は自分の自然に治る力である自然治癒力を使い、必要に応じて薬や西洋医学を上手に利用することが賢い選択になります。
つまり、入院が必要な状態になりそうな症状を見逃さずに、適切な時期に受診するのがいいと思います。この場合、熱や症状の期間などではなく、以下の症状がある場合になります。
・呼吸困難(呼吸苦)の症状がある
・倦怠感が強く、ぐったりしている
・水分がとれない 十分なおしっこが出ない
とくにリスクのある家族については、いつも以上に状態の変化に注意してください。もちろん緊急の場合(呼吸がおかしい、意識がないなど)は救急車を要請してください。
④薬は原則として使わない
ほとんどのウイルス感染症は、根本的な治療薬がありませんし、薬を使用しなくても自然に治ります。今回の新型コロナウイルスも同様です。
ここでは、抗生物質、解熱剤について解説します。様々な情報が飛び交っている抗ウイルス薬であるファビピラビル(商品名アビガン)については、次回の記事で詳しく解説する予定です。
簡単に言えば、ウイルス感染症では、抗生剤も解熱剤も使わないようにしましょう。
抗生剤は細菌感染症の治療に使うもので、ウイルス感染症には全く効果がありません。前回も解説しましたが、感染を防御したり、免疫の働きを調節しているのは常在菌とくに腸内細菌になります。抗生物質は効果がないどころか、この正常な常在菌に深刻なダメージを与えます。
抗生剤はウイルス感染に加え細菌による重複感染が疑われる場合(まれです)以外は使用しない方がいいのです。入院やICUでの管理が必要な場合は、通常はルーチンに使用されますが、これはやむを得ないでしょう。
解熱剤も使用してはいけません。発熱とは、感染に対する防御反応です。体は体温を上げる事により、病原体を弱らせ、免疫力を上げて対処しています。ほとんどのウイルスは低温にはものすごく強いのですが高温には弱いのです。一方、体温が上がるにつれ免疫力は増強します。
つまり、発熱は病原体によるものではなく、体の免疫反応を高めるためなのです。せっかく上げた免疫力を解熱剤で下げる必要はないし、下げてはいけないのです。
インフルエンザのときに、脳炎脳症やライ症候群、サイトカインストームなどの生命の危機や重篤な後遺症につながるような合併症を起こすのは、解熱剤や治療薬などによる影響で、免疫系の正常な反応を阻害し、病気が自然に治る過程を阻害するために起こる可能性が強く疑われています。
⑤自宅での対応
基本は安静にし、水分とミネラルを十分に補給することになります。免疫力、抵抗力を上げる方法は、昨日の記事の⑦などをご参照ください。
⑥家族内の感染者の隔離と対応
日本での新型コロナウイルス感染症に対する詳細なマニュアルは未だ得られないため、有志のあつまりでCDC(米国疾病予防管理センター)やWHO(世界保険機構)の感染対策ガイダンスを翻訳しているまとめサイトがあります。まとめていただいた有志の方々のご尽力に感謝致します。
https://covid19-jpn.com/
とても参考になりますので、国際標準に従った管理を知りたい方は、まずは、こちらも参考にしてください。
・自宅療養の注意点
CDCによる自宅療養の注意点
https://covid19-jpn.com/homecare-cdc/
WHOによる自宅療養での注意点
https://covid19-jpn.com/homecare-who
CDCによる自宅や地域での感染拡大防止①患者編
https://covid19-jpn.com/preventspreading/
CDCによる自宅や地域での感染拡大防止②介護者編
https://covid19-jpn.com/preventspreading2/
概してすべてのガイダンスが、とても詳しく、細かく、様々なケースに対する家庭での対応を具体的にまとめており、かなり厳格な管理方法になっています。
要点をまとめると、
①患者本人の対応
・受診以外は家から出ない
・可能なら換気可能な個室を確保する
・マスクを着用し、手を頻回に洗う
・他の家族と生活用品を共有しない
②介護者の対応
・訪問者の受け入れは禁止する
・患者の症状を観察する
・手を頻繁に洗う 手を洗う前に目、鼻、口を触らない
・患者と接触するときは使い捨てマスクと手袋をつける
・よく触る場所を毎日掃除する
・洗濯は徹底的に行う
これらのガイダンスに加えて私のこれまでの記事もぜひ参考にしてください。
次回は、治療薬として注目を浴びているファビピラビル(商品名アビガン)について詳しく解説する予定です。