「検査陽性と感染と発症の違いをわかりやすく説明します」

新型コロナウイルスでは「検査の陽性者」を「感染者」として報道されていることがほとんどで、これはとてもとても重大な問題です。報道機関をはじめ、医師や専門家がこのことを指摘しないことはそれ以上に問題と言っていいでしょう。


今回の記事はこれらをわかりやすく、明解に説明します。


①検査陽性とは
COVID-19では、途上国を含め、すべての国で検査はPCR検査によるものがほとんどですので、ここではPCR検査陽性のことを解説します。


PCR検査陽性とはPCR検査でウイルスが検出されたことを意味します。
PCR法は何を検出しているのかというと、ウイルス遺伝子(コロナウイルスRNA)の断片(全遺伝子=ゲノムのごくごく一部)になります。ウイルス遺伝子の断片が見つかったということは、ウイルスが今いる、あるいは少し前にいた痕跡があるということになります。


つまり、ウイルスの断片が残っていれば陽性になり、以下はわからないということが重要なポイントになります。


・ウイルスが生きているか死んでいるか
ウイルスが生きていなくても、ウイルス遺伝子の一部が残っていれば陽性になります。


・ウイルスが細胞に感染しているかどうか
細胞に感染する前のただ「いる」段階でも、感染し細胞に侵入した後のいずれでも陽性になります。


・感染した人が発症しているかどうか
発症していてもしていなくても感染していればウイルスはいることになるので検査は陽性になります。


・陽性者が他人に感染できるかどうか

ウイルスが死んでおり、断片だけが残っている場合は他人に移すことはできません。また、ウイルスが生きていても数が少なければ人に移すことはできません。通常ウイルスが感染するためには数百〜数万以上のウイルス量が必要になります。しかし、PCR法は遺伝子を数百万〜数億倍に増幅しますので、極端な話、1個〜数個のウイルスでも陽性になる場合があります。


・ウイルスが今「いる」のか少し前に「いた」のか
一度感染すると、ウイルスの断片は鼻咽頭からは1〜2週間、便からは1〜2ヶ月も検出されることがあります。これらはあくまで遺伝子の断片です。


②感染しているとは
感染しているとは、通常(生きた)ウイルスが細胞内に入ることを意味します。


新型コロナウイルスは気道から(一部眼から?)感染します。気道に生きたウイルスがいても、粘膜や粘液さらにはウイルスを排出する気道細胞のブラシのような作用などが強ければ、排除され感染に至りません。これらは重要な自然免疫の作用の一つです(補足ですが、自然免疫にはさらに白血球などの細胞が関係する免疫もあります)。


感染しても、その後に症状が出るかどうかはわかりません。細胞内に侵入しても、細胞の自浄作用などでウイルスの増殖を阻止する場合があります。また、感染細胞が少ない場合も症状としては出ません。これらの場合は発症しないことになります。


一般には、感染したが症状が出ない場合を不顕性感染、感染して症状が出る場合を顕性感染といいます。


不顕性感染という言葉はよく使われますが、新型コロナウイルスでは、ウイルスが気道にいるが感染する前の状態と感染してからも症状が出ない状態の両方を不顕性感染と一括りにして使われていると思われます。理由はこれらを区別できないからです。

不顕性感染では、通常症状が出ないまま(主に自然免疫系の働きで)治っていると考えられます。


通常の感染症の場合、症状が出ない場合は感染しているかどうかわからない訳ですから、病院の受診も検査も薬の服用もしないことになります。
顕性感染は感染し症状を認める状態ですので、通常の感染症の場合、感染とはこの状態を指すことになります。この状態で病院を受診し検査を受けてはじめて感染と言われます。


③発症
発症とは、病気として症状を認めることを言います。当然ですが発症している人を患者と言います。


ウイルスに細胞内に侵入(=感染)されてしまうと、通常、免疫系はウイルスを見つけることができずにウイルスを排除できません。この感染してから症状を認めるまでの期間を潜伏期と言いますが、この間は症状が出ないのです。


症状が出るのは、ウイルスが細胞内で増殖し終わり、感染細胞を破壊するか血液などを介して全身に広がることにより生じます。


さて、ここから「検査の陽性者」を「感染者」とすることが、なぜ問題になるのかの説明になりますが、風邪の例をあげてみます。


風邪とは、もちろん風邪の原因となるウイルスの感染により起こる病気です。
通常、風邪をひいた場合「運悪く」風邪のウイルスをもらってしまったからと考えるでしょうが、本当でしょうか?もちろん風邪のウイルスがいなければ風邪は発症しません。


寒い冬に、素っ裸で布団もかぶらずに寝てしまったら、よほど強靭な人でなければ、間違いなくかぜを引きます。

では、冬に裸で寝たときだけ「偶然に」「運悪く」かぜのウイルスをもらっているのでしょか?
そうではなく、かぜのウイルスには、裸で寝ようが普通に寝ようが常に接触しているのです(つまり常にウイルスは「いる」)。


しかし、正常な免疫力がある場合には感染せずに発症もしません。風邪にかかったのは、冷えなどで免疫力が低下したことによるのです。つまり、通常の免疫力がある場合は気道にウイルスがいても全く発症しないのです。


もし、ウイルスが「いる」状態(PCR検査陽性)を感染=病気としたら、風邪の場合は国民のほぼ全員が感染している、つまり風邪ということになりますね。


つまり「検査陽性=ウイルスがいる」ことだけでは「感染と言ってはいけない」のです。

人は微生物と常に接触しているわけですから、ウイルスをもらっても(ウイルスがいても)感染しなければ、感染しても発症しなければ、発症しても重症化しなければいいのです。補足ですが、これらを決めているのは、ウイルス自体ではなくウイルスをもらった側の免疫力であることも大切です。


「検査陽性数」「感染者数」「発症数=患者数」「軽症者数」「重症数」などを明確に区別して報道されることを期待します。


現在日本を含む先進国で来ているとされる第2波は「何」を指して言っている言葉でしょうか?理解しにくい言葉、紛らわしい言葉を一般の人にもわかるように解説するのが報道(そして医師、専門家)の役割だと思います。


少し補足しますが、風邪をひくこと自体は本来は悪いことではありません。もちろん免疫力が低下していれば風邪などの感染症にかかるでしょう。
しかし、風邪にかかることの本質は、むしろ健常な人が必要な時にウイルスの力を利用して風邪をひき、熱を上げたり、体の修復を行っていることなのです。裸で寝た場合は、体温が低下し免疫力も下がるため、風邪を利用して体温や免疫力を回復しているのです。


これまでに書いた記事のまとめは以下を参照してください。
https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2728645230793812


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