古代小麦について

小麦の収穫時期が近づいてきました。

昨年、知人から古代小麦の種をいただきましたので、今年の自然農の畑には、小麦はこの1種類だけ栽培してみることにしました。

 

品種は”スペルト”を栽培してるものだと思っていました。しかし、現在実っている小麦の穂の形を確認すると、明らかに古代小麦”スペルト”とは異なっています。

 

いろいろ調べると、これは、別の古代小麦の品種である”エンマー”だと思います。

 

イタリア語で「ファッロ」=スペルト小麦と解説している人がいますが、ファッロとは古代小麦全般をさす言葉のようです。

 

良い機会ですので、すこし古代小麦について調べてみました。

 

まず種類ですが、小麦は生物学的に一つの穂につく粒の数、染色体数などにより、一粒小麦、二粒小麦、普通小麦に分類されています。

 

 

これらのうち、現在世界で栽培されている小麦の90%ほどが普通小麦(いわゆるパン小麦)になりますが、その原種にあたる古代小麦がスペルト小麦です。

 

普通小麦の次に栽培されているのが二粒小麦(マカロニ小麦やデュラム小麦)でその原種にあたる古代小麦がエンマー小麦になります。

 

現在世界中で栽培されている小麦(これを古代小麦に対して後で述べる緑の革命以降の品種を近代小麦とします)はいわゆる遺伝子組み換えではありませんが、品種改良(これから述べるように良いことばかりではありませんので、以下は「品種改変」とします)という名の遺伝子改変がなされています。

 

人工的にいろいろな品種を交配させて良い品種を選んでいくことは、小麦に限らず様々な作物で当たり前に行われてきたことです。

 

小麦の品種改変も1万年以上前から行われており、自然の交配、人工的な交配、放射線照射などの人工的な処理などがあります。

 

古代小麦は近代小麦と比較して栄養素では以下の特徴があるといわれています(すべての古代小麦に当てはまるというわけではありません)。

 

・タンパク質含有量、とくに必須アミノ酸量が多い(メチオニン、スレオニンなど)

・炭水化物の組成が良い 血糖値の上昇が緩やか

・多価不飽和脂肪酸が多い

・ビタミン(ナイアシン、チアミン、ビタミンB6、ビタミンB17、ビタミンE、葉酸など)、ミネラル(マグネシウム、鉄分、マンガン、リン、銅、亜鉛、セレン、カリウム、カルシウム)、食物繊維が多い

・ファイトケミカルが多い

・グリアジン(グルテンの構成成分でリーキーガット症候群や依存の原因とされる)含有が少ない

 

小麦は1万年以上前から栽培されています。

現代の品種である近代小麦が古代小麦にとって代わったもっとも大きな理由は、食料の増産のためです。

 

近代小麦の最も重要な特徴が半矮性(はんゆうせい)という背丈の低い品種になります。

米も同じなのですが、小麦は背丈が高いと収穫までに倒れてしまい収量が落ちてしまいます。そこで、とくに肥料を使い増産するためには背丈の低い品種が必要になります。

 

日本で開発された半矮性遺伝子をもつ農林10号と各国の小麦との交配によりできた背丈の低い品種が、現在世界各地で栽培されている近代品種の原種になります。

 

1940~1960年代のいわゆる緑の革命により、ロックフェラー財団などによる品種改変は加速度的に進み、大量の化学肥料の使用なども合わさって単位面積当たりの小麦の収穫量は、それまでの2倍以上に増えたということです。

 

これにより、多く食料の供給が可能になった一方で、この品種改変が様々な健康上の問題を引き起こしていると多くの人が指摘しています。

 

例えば、アレルギー、自己免疫疾患、肥満、がん・高血圧・糖尿病などの生活習慣病、消化器疾患、心臓疾患、神経疾患、自閉症などの発達の問題、リーキーガット症候群、精神疾患、認知症、老化・・・など、まるですべての病気の原因であるという意見もあります。

 

そこで、日本でも欧米の考え方に影響されてグルテンフリーという食事法を選択される人が増えています。

 

私は以前の記事で、健康な人の全員が小麦を制限する必要はないと書きました。

 

理由は、もし小麦が人の健康に害があり、摂取を制限するべきなら、世界の食料の供給バランスに影響するからです。

 

世界的には、小麦は世界の3大穀物の一つですので、小麦の栽培が制限されることによって、発展途上国をはじめ、ますます飢餓人口を増やすことにつながります。

 

また、これらは、極端な糖質制限食や肉食推奨にもつながります。以前のブログでも書きましたが、最近流行っているこれらの食事法は、私はあまりお勧めしていません。

 

ただし、日本人にとっては主食にして積極的に食べるものではなく(現代小麦は先に述べたように大幅に品種改変がなされているのと、小麦の栽培はもともと日本の気候風土=身土不二に合っていない、という理由から)、あくまで嗜好品としての摂取にとどめるべきだと考えています。

 

そして、アレルギーの方には古代小麦をお勧めました(現段階ではほとんど市場に出回っていないのが現実ですが)。

 

明らかに小麦を食べてはいけないのはセリアック病とグルテン不耐症の人になります。

小麦アレルギーの人は程度にもよりますが、摂取方法に注意が必要になるでしょう。

 

これらのうちの大部分を占める小麦アレルギーの人でも古代小麦であれば85-90%の人が食べられるとのことです。

 

古代小麦であってもグルテンは近代小麦と同様に含まれますので、グルテン不耐症やセリアック病の人は食べないほうが良いでしょう。この両方ともとても頻度の少ない疾患(全体の1%以下)です。

 

グルテンフリー食の検討から、最近ではグルテンが害の本質ではなく他の要因、小麦の栽培方法(品種、農薬、肥料など)、収穫方法(ふすまや胚種の除去など)、ポストハーベスト、加工方法(製粉方法による酸化、高温処理、添加物の添加など)、調理方法(イースト菌、添加物、砂糖などの使用など)の方がはるかに問題であるという意見も欧米では増えてきているようです。

 

実際にグルテンフリーな食事により小麦を制限することで様々な体調不良が改善する人もいると思いますので、食の選択は自分の体調に照らし合わせて自己責任で決めましょう。

 

私の小麦摂取の考え方はリンクを参照してください。

小麦やグルテンフリーについて

 

今回栽培した小麦は、数年にわたって肥料を施していない自然農の畑にも関わらずとっても背丈が高くなっており、倒れてしまっているものもあります。古代小麦の性質といってよいでしょう。

 

 

さらに一つの穂に2つの種がついている二粒小麦であり、古代小麦と比較した写真からも、今回わが家で育っているのはエンマー小麦だと思います。

 

 

間もなく収穫になりますので、倒伏がこの程度であれば柱を立てて補強するほどではありませんので、このまま様子を見てみます。収穫はあと1~2週間後になるでしょうか。

 

もちろん正式な決定には遺伝子検査などで品種を確定する必要がありますが、販売するわけでもありませんので、今のところ検査をするつもりはありません^^

 

古代小麦は肥料も農薬も不要で、栽培自体は簡単だと思いますが、一番の問題は収穫後の脱穀が難しいことです。ジェットだっぷ式のもみ擦り機が適しているとされていますが、日本ではあまり普及していません。

 

多品目栽培をしている有機農家さんも、古代小麦の良さは知っていても、脱穀の手間などの大変さから栽培を断念している方も多いと思われます。

 

私は、日本人は米を主食にするのが良いと考えていますが、古代小麦が見直されてその土地土地で栽培が増え、嗜好品の範囲で小麦も楽しめるようになることが理想でしょう。

 

さて、収穫後どのように脱穀しましょうか?

良い方法があれば教えていただければ幸いです。

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