ゲノム編集について

ゲノム編集を理解するためには、様々な専門的な知識が必要ですので、できるだけわかりやすいように用語を解説して説明してみます。

https://www.sankei.com/smp/life/news/181205/lif1812050042-s1.html?fbclid=IwAR2rILixbV0pQPnFPI72uvNLlG-KieLxqCg2rEf8aLRN3JzsdiIgNhFxJ7E

遺伝子とは、体の設計図です。背を高くする・低くする、肌を白くする・黒くする、感染にかかりやすい・かかりにくい、がんになりやすい・なりにくい・・・など、人の心身の特徴は、それを決める遺伝子により決まります(ただし遺伝子だけが全てを決定しているわけではありません)。

ゲノムとは、一つの生物がもつ遺伝子(すべて合わせた)の一セットのことです。人では40億の文字(DNA)からできており、その中に約25000の遺伝子があるとされています。ちなみに、人の遺伝子数が一番多いわけではなく、大腸菌は約4000個、マウスは約26000個、イネやトウモロコシは約40000個といわれています。

遺伝子工学とは、人工的に遺伝子を構成しているDNAやRNAを作ったり、切ったり、貼ったり、改変したり、組み替えたりする技術です。私がアメリカのNIHに留学していた時にしていた仕事は遺伝子工学を使ったウイルスの研究です。

ここで、やっとゲノム編集になります。
ゲノム編集とは、人工的に作られた特殊な酵素(人工ヌクレアーゼ)を使って目的の遺伝子を思い通りに改変する新たな遺伝子工学の技術です。

さて、この「ゲノム編集」と今まで言われてきた「遺伝子組み換え」とは何が違うのかということが最大の問題になりますね。

遺伝子を操作する技術は、これまではとても制限が多く、限られたことしかできなかったのです。2012年頃より新しく登場した技術(酵素)により、目的の遺伝子のどこにでも簡単に操作できるようになり、この操作をゲノム編集と呼ぶようになりました。簡単に説明すると、虫眼鏡を使っていたのが顕微鏡を使うレベルになったようなものなのです。

ゲノム編集を使わない遺伝子組み換え法もありますが、ゲノム編集は遺伝子組み変えもできますし、それ以外の遺伝子操作(通常は特定の遺伝子を壊す)も簡単にできてしまう発展型です。

一方の遺伝子組み換えとは、たくさんある遺伝子操作のうち、特定の遺伝子を組み換える(遺伝子配列をいじったものや他の遺伝子に取り換える)ことだけを言います。

今回の記事は、ゲノム編集で遺伝子組み換えをする場合は今まで通りに規制するが、それ以外は審査する必要がなく届け出だけでいいとするものです。しかし、それ以外も遺伝子を明らかに操作する技術であるのは変わりありません。

これは「遺伝子組み換え」に対する、一般の良くないイメージや実際に様々な問題が明るみ出たり、欧州で規制がかかってきていますので、それに代わる「ゲノム編集」という違う言葉を採用しているだけと考えていいでしょう。

ゲノムというように、自然界のそれぞれの生物は、それぞれのひとつながりの遺伝子セット(これがゲノム)を持っているのです。その一部を人が勝手に変えるとはどのような意味をもつでしょうか。一部は全体を構成するものですので、一部を変えると全体にどのような影響が出るかは全く分かりません。

このような操作を内容の公表もせずに届け出だけで許可してしまっていいのでしょうか?ぜひしっかりとしたルールを作っていただきたいと思います。

関連記事

no image

古代小麦エンマーの種まき

本日は古代小麦の種まきをしました。古代小麦は知人からいただいた二粒小麦(マカロニ小麦)のエンマーになります。 農作物の収穫は今後もずっと続きますが、種まき・苗の植え付けは、年内はこの小麦で終了になります。 夏野菜に使用したウネをきれいに整理した後に、1ウネに2条ずつ軽く表面を削った部分に種を蒔いていきます。収穫は来年の6月頃になる予定です。 以下の私の古代小麦の記事もぜひご参照ください。 小麦やグルテンフリーについて https://shizenha-ishi.com/blog/food/257/ 古代小麦について https://shizenha-ishi.com/blog/food/299 […]

no image

月刊「クーヨン」の今月号2018年10月号の記事

オーガニック系育児雑誌「クーヨン」の今月号(2018年10月号)が発売になっています。 今月号の特集は「子どもを壊す食べ方させてませんか?」です。 私は「腸が元気になる“引き算”の食べ方」という記事で登場しています。 腸および腸内細菌の状態が人の健康にとって最も大切なことを繰り返しお伝えしています。 今までの医学、栄養学、代謝学、食事論、健康論・・・は、この最も大切な腸内細菌の概念が欠如しています。 腸内細菌が元気であれば、腸内細菌がすべての栄養素(必須アミノ酸、必須脂肪酸、短鎖脂肪酸、ビタミン、ミネラル・・・)を補ってくれます。 腸内細菌という概念がなければ○○が不足する、人が作れない・・・ […]

自然農 その2 自然農とは

  山の木や野原の草花は土を耕したり、肥料をあげなくても毎年豊かに茂り、成長します。 米や野菜などの作物も同じように、人工的なものは何も必要とせず自然近い状態で栽培できる。それが自然農の基本的な考え方になるでしょうか。 ただし、自然農はあくまで農(法)であり、自然放置ではありませんので、「自分たちの希望する作物」を育て、収穫するためには様々な工夫や知恵が必要になります。 自然農にも様々な方法があり、確立された単一の方法はありません。 このことが、自然農を始めようと思っている人や、実践して行っている人のある意味で混乱の原因となっていることがあります。 私の考える「自然農」とは、なるべく […]

no image

甘酒とラッシー作り

先日のみそ作りで余った米麹を使い甘酒を作りました。 麹さえあれば甘酒は拍子抜けするくらい簡単に作る事ができます。炊いた米に麹を混ぜ、一晩保温するだけです。 定番の豆乳ヨーグルトと混ぜると美味しい手作りラッシーになります。わが家の豆乳ヨーグルトは酸味があまりないので、いちごのような少し酸味のあるフルーツと混ぜると絶品です! 栃木はいちご王国なので、一年中いちごが手に入ります。 身土不二の観点からは、地元で採れる「旬のもの」を摂るのが健康にはいいのですが・・・たまにはいいですね^^ 以前に書いた甘酒の記事は以下を参照してください。 https://www.facebook.com/shinjiro […]

no image

稲の種まきのお手伝い

本日は、私たちに米作りを一から教えて頂いた近所の農家さんへ稲の種まき(育苗)のお手伝いに行ってきました。 お世話になっている農家さんは、近くでは米作り名人として有名な方なのですが、米作りを初めて50年以上になるそうです。 「毎年米を作られて米のことならなんでも知っている大ベテランですね」とお聞きすると「自分はまだ50回しか作っていない。米のことはまだ全くわからない」と笑って答えます。 うーんスゴイですね^^謙虚な姿勢にも感動ですが、物事は観点が変われば全く違う見方になるということですし、何事でも究めるということに終わりはないということになります。日本の様々な道(柔道、剣道、合気道、茶道…)とい […]

PageTop