自然農 その3 自然農のしくみ②
前回の記事の続きで自然農のしくみについてです。
3. 農薬をやらない(虫をとらない)
肥料(一部の有機肥料も含め)を与えると、余計な肥料分を分解するために、今度は虫がやってくることになります。いわゆる害虫と言われる虫は実は肥料を与えるほどやってくるのです。
この虫を駆除するために今度は農薬が必要となります。
自然から外れた現代の通常の慣行農業(一部の有機農でさえも)は土(微生物)を破壊し、地球環境を汚染し、また肥料、農薬を与え続けるという悪循環になってしまっています。
私たちの体に起こっていることもまったく同じですね。
現代生活は、腸内細菌などの常在菌を傷つけ、自然から外れた生活によりほとんど全員が病気になっています。
病気に対しても根本治療(生活習慣の改善=自然の生活に戻す)をするのではなく、病院にかかり薬や手術などの対症療法を行っています。
ですから、どんなに国民医療費を費やしたところで、病気は治ることなく(見かけ上の症状は取れたり、検査の数値は改善するかもしれませんが…)増え続けていくことになるのです。
自然農では肥料を使いませんので、実際に虫がつきにくいのですが、この事は虫を含めた微生物の役割を考えるうえで極めて重要です。
自然農で育てた作物にも虫がつきますが、よく観察すると、すべての作物につくわけではありません。作物の1か所に集まったり、とくに、傷んだ作物に集中してつきます。虫ですべての作物が全滅することはまずありません。
しかし、この虫(微生物)はなぜやってくるのかが重要なのです。
実は、虫は不自然なもの(化学肥料、一部の有機肥料、農薬、除草剤、過多な栄養)などにより、作物が不自然な状態になったものや、病気のもの、傷んだもの、死んでしまったものなど(人や動物が本来食べてはいけないもの)につき、分解(処理)してくれているのです。
虫(微生物)はこの世界に不自然なものや役割を終えたものなどを優先的に分解するのであって、健康なものや自然に沿ったものには基本的に害を与えないと考えられるのです(これが微生物の本来の役割です)。
ですから、自然農の作物には虫がつきにくいのです。害虫とは人間が勝手につけた名前で、本来の自然の役割を果たしている益虫以外の何物でもないと言えます(すべてのものには意味があり、無駄の物など何もありません)。
私たちの体で考えると、感染症(カゼ(インフルエンザ、ノロ、ロタ、RS…)、気管支炎、肺炎、中耳炎、膀胱炎、脳炎…)はもちろん微生物の感染による病気ですが、実は、感染症にかかるのは微生物の方に問題(悪意)があるのではなく、私たちの体の方に問題があることも多いのです。
かぜはなぜかかるのかの所でも述べましたが、感染症にかかるということは、私たちの体に不自然な部分や弱った部分があるというサインであり、それを解決するためにかかる(例えば、感染によりおこる炎症反応などを利用して体の修復などを行う)と考えられるのです。
4. 草をむしらない
田んぼや畑に生えてくる草は雑草と呼ばれ、作物の栄養を奪ったりなど悪影響を与えるものとして、農薬や除草剤が使われたり、草ごと耕されたり、家庭菜園などでは根ごとむしり取られたりします。
農薬や除草剤の害は言うまでもありませんが、草を根ごとむしり取ることも、土を耕すということと同じく、表面からできた自然の構造がすべて破壊されてしまします。
前回の記事で述べたように、本来は役目を終えた草の根が自然に土に帰る過程で、網の目構造を作り、微生物の生きやすい団粒構造の土を作っていきます。
自然農では、作物に影響がないようであれば、草を刈らない場合もありますし、影響するようであれば、地表10~15cm程の所で刈り、その場に敷いていくことが多いようです。
草が土の表面をおおっていると、日照りが続いても土を乾燥から守ってくれますし、根が残っていれば、大量の雨が降っても、表土が流出したりすることもありません。
さて、そもそも草は何で生えてくるのでしょうか?繰り返しますが、すべてのものには意味があるはずです。
草はその場所の土の状態に応じて生えてくるのです。放置されている畑をみていますと、生えてくる草が次第に変わっていくのが分かります。始めはスギナやナズナ、続いてセイタカアワダチソウ、さらにススキ、ハコベというようにです。
例えば、スギナはカルシウムが不足している土地に生えやすいのですが、不思議なことにスギナにはたくさんのカルシウムが含まれており、スギナが枯れた土地にカルシウムを補給しているようにもみえます。
このように、自然に生えてくる草にはそれぞれ意味があり、土を育て、微生物を育み、すべての生き物が生活できる環境を整えているのです。さらに自分の役目を終えると自然に消えていき、その過程で次の生命のために命をつないでいるようにもみえます。
自然農では雑草などいう言葉は人が勝手につけた名前で、生えてくる草を神草と呼んでいる人までいます。
その草を毎日むしり取り、腱鞘炎になったり、腰が曲がったり、場合により熱中症になったりするお年寄りがとくに田舎ではとてもたくさんいます。
みんなやっているから、草が生えていると見栄えが悪く恥ずかしいから、年をとり体が思うように動かなくても、何かしなくては申し訳ないからなどと考える人が多いようです。
現代農業に見られる土と農作物しかない畑は、すべての生物にとってやさしくなく、はるかに異常(不自然)と言えるのかもしれません。
病気に限らず現代人の抱える問題の多くは、実は、自分で自分の首を絞めている様な状態なのです。そうして苦しくなったり、病気になったりしているのですが、何が間違っているのか、なぜ苦しいのかもわからなくなっています。
問題の根本は、「自然(の摂理)から外れている」という実にシンプルなことなのです。
さて、様々な面から自然農について考察してきましたが、自然農にとって(もちろん有機農にとってもですが)最も大事なのは土であり、微生物であることになります。
そして、地球の土に相当するのが、人における腸および腸内細菌ということになります。
植物は地球(土)に直接根をおろしていますが、動物は土の環境を腸内という体内に持っていることで、地球を離れて、生きて、動いていられるとも考えられます。
しかし、実際は離れているわけではなく、腸(微生物)を通じて地球と密接に繋がっているともいえるのです。
ですから、農(植物)にとって最も大事なのが土=微生物であるように、腸=腸内細菌の状態が人の健康にとって最も重要といわれるゆえんなのです。
農に関しては今回で一休みになり、次回からは微生物について記事にしていきます。