断食と腸内細菌

断食は体を浄化する代表的な方法の一つとされています。断食をすることによりほとんどの病気が治るあるいは改善するという意見まであります。

実際に断食にはいろいろな効果が報告されています。例えば、

①内臓(特に消化管や肝臓、腎臓、膵臓など)の機能回復

②余分な脂肪、コレステロールなどを排出し、肥満やメタボの解消

③毒物(化学物質、重金属、薬物)、老廃物の排出

④免疫力の増強

断食によって、消化や吸収、その後の代謝や輸送などに使っているエネルギー(1日に使っている全エネルギーの20~30%程とされています)や酵素などを体の修復に回すことができると考えられます。

例えば、かぜなどの病気の時に、食欲がなくなるのは自然の作用です。

この時に、栄養が必要だからと無理をして食事をとる必要はありません。

病気が快方へ向かえば、自然に食欲が戻りますし、この事は、身体の反応が問題なく経過していることのサインでもあります。

自然に起こることの全てには理由があるのです。

健康法として、セミナーなどで指導を受けながら数日間の断食をしている人も多いかもしれません。

そうではなく、海難事故などで遭難し、食べる物がなく、やむを得ず断食することになった人は何日間くらい断食できるのでしょうか。

今までの実際にある遭難事故などの例をみると、個人差も大きいですが、健康な成人であれば、なんと1~3か月間は断食が可能です。

 

ただし、これは水とミネラルがある場合で、とくに水がない状態では数日で脱水となり死に至ります。

厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2015年)では、18歳~49歳の1日の推定エネルギー必要量を男性2,300~3,050kcal、女性1,650~2,300kcalとしています。

水とミネラルだけでは0kcalですが、どうしてこのように長期間の断食が可能になるのでしょうか。

答えは腸内細菌がエネルギーを供給しているのです。

人の腸の表面積はテニスコート1.5面にも及びますが、ここは、たった1層の薄ーい腸管上皮細胞という特殊な細胞で覆われており、内腔(外界)に接しています。

この腸管上皮細胞は、人の細胞の中で最も入れ替わりの早い細胞の1つで、通常は1~3日で新しい細胞と入れ替わり、古い細胞は死んで内腔に剥がれ落ちます。

腸内細菌は、この毎日入れ替わる(剥がれ落ちる)腸管上皮細胞、自分たちの仲間の死んだ腸内細菌、水、ミネラルなどと体に貯蓄されている脂肪などをもとに活動します。

さらに、人が生きるのに必要な最低限のエネルギーやビタミンなどをも産生し、数か月間にわたって人の生存を助けていくのです。

以前、農の記事で、地球の土に相当するのが、人の腸および腸内細菌であるという話を少し書きました。

農にとって最も大事なのは土(とその中の微生物)で、土が元気であれば、特別に肥料などをやらなくても作物が育ちます。

微生物が、作物に必要な養分を供給してくれるからです。

人でも健康にとって最も大事なのは腸(とその中の腸内細菌)で、断食中のように外から栄養分が入ってこない、あるいは、入ってくる量が少なくとも、腸が元気であれば、しばらくは問題なく生存することができます。

腸内細菌が、人の生存に必要なエネルギーや栄養素を産生してくれるからです。

とても似ているように感じませんか?

ただし、植物は光合成でエネルギーを産生できますが、人はできませんので、いつまでもというわけにはいかず、数か月間という限界があります。

人が体内で合成することができないため、栄養分として、食事などから摂取しなければならないとされているアミノ酸、脂肪酸をそれぞれ必須アミノ酸、必須脂肪酸と言います。

これらを摂るために、極端な食事法やサプリメントなどが推奨されることがあります。

一部の腸内細菌(乳酸菌が代表的)は、すべての必須アミノ酸や必須脂肪酸を産生していることが分かっています。

さらにはビタミンや微量元素(必須ミネラル)までも人に供給しています。

 

健康のためには、ある特定の食品や特別なものをとることなどないのです(これらの意味が全くないとは言えませんが…)。

特に、高価な健康食品やサプリメントなどは必要ないと考えています。

それよりも、より自然な方法(日常の食事や生活習慣など)で、腸内環境を良くする方がはるかに安くて理にかなっているのです。

ほとんどの健康上の問題の解決には腸内環境の改善がカギを握っていると言っても過言ではありません。

腸内細菌の話はまだまだ続きます。

関連記事

no image

発酵食品作りに使う種麹の完成

無事に種麹の培養が終了し今年の発酵食品に使う種麹が取れました。 米(3分つき米)1kgからとれた種麹はわずかに10gでした。 片栗粉などで10倍に希釈して冷蔵庫で保存します。冷蔵庫ではほぼ半永久的に保存できます。 この10倍希釈した種麹1gから1kgの穀物(米、豆、麦など)を発酵して麹(米麹、豆麹、麦麹など)を作ることができます。 先日の菌の培養開始の記事で紹介しましたが、日本の主な調味料(みそ、しょうゆ、みりん、酢、酒、甘酒など)は麹菌で発酵させた麹から作ります。 日本は世界で一番食料の破棄(残飯量)が多い国であり、食べものが溢れていますが、本当の意味で食べられる(安全な)食べ物がなくなって […]

no image

米麹作り

今年培養して増やした麹菌を種麹に米麹を作りました。 使った種麹は先日記事にしたものです。 https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2302639180061088 とっても出来の良い米麹になりました^^ この種麹は大体40時間で米を米麹にすることができます。温度管理はほぼ12時間ごとに麹室(麹を作る箱)の底に置く湯たんぽを取り替えるだけです。 今年培養した麹菌の出来がとても良いことがわかりましたので、今年度の調味料(みそ、しょう油、みりん、酢など)はこれを種麹にして作ってみます。 まずはこの米麹から、しょうゆ麹と甘酒を作ります。 種麹は冷蔵庫 […]

no image

一般家庭での新型コロナウイルスの感染予防(2/25) COVID-19④

連日、新型コロナウイルスの記事を書いています。今までの記事のリンクを以下にまとめておきます。ぜひ合わせてご参照ください。 最も重要な情報の簡潔なまとめ https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2622431101415226 新型コロナウイルスの臨床的特徴(2/22の時点) https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/2623921001266236 新型コロナウイルスについてのウイルス学的な特徴 https://www.facebook.com/shinjiro.homma/posts/262 […]

no image

腸内細菌叢の成り立ち

前回の記事で、腸内細菌の様々な働きをみてきましたが、今回は、腸内細菌叢がどのように作られていくのかを解説していきます。   まず、一般的な腸内細菌叢のパターンについてです。   腸内細菌叢は指紋のように、人によって個人差があります。 一卵性双生児では二卵性双生児よりも似通った腸内細菌叢になります。 一緒に暮らしている人(夫婦、兄弟、家族)も腸内細菌叢が似てきます。 ある種族や地域、国によって共通する腸内細菌の傾向というものもあります。   このように、腸内細菌叢は遺伝あるいは環境による影響を受けますが、かなりの部分は食べ物によって左右されると考えられています。 食生活以外にも、腸内細菌叢に影響 […]

no image

しょうゆ麹の仕込み

米麹を使って、しょうゆ麹を仕込みました。 米麹に醤油を入れて、手揉みしてかき混ぜるだけです。米麹があればとっても簡単にできます。自分で作れば材料も厳選でき、オリジナルで安心安全な調味料を作れます。2週間ほど室温に放置し、その後は冷蔵庫で保存します。 しょうゆ麹は、ほぼしょう油と同じ様に使う事が出来ますが、とってもコクが出ますし、体にも良いものになりますね。 わが家では消費量が多く、この量を1年に3回ほど仕込む事になります。私の2册目の本「病気にならない食と暮らし」は、自然に沿った生活を具体的に実践する為の本です。麹菌の培養からあらゆる調味料の作り方を解説しています。 https://www.a […]

PageTop