生体恒常性(ホメオスタシス)と常在菌の関係

おかげさまで、講演会の日程が続いており、ブログの更新が遅くなっております。
末永く続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

微生物の記事は、今回で一時終わりになりますが、微生物と生体恒常性=ホメオスタシスとの関係の重要性について示しておきます。

 

身体の内部や外部に起こる様々な変化に柔軟に対応して体内の状態を一定の範囲に保つことを恒常性の維持といい、一般にホメオスタシス(恒常性)と呼ばれています。

 

従来の考え方では、ホメオスタシスの3系は脳によりコントロールされていると考えられてきました。

しかし実際には、腸内細菌・腸・脳の密接な連携により調節されているということなのです。

 

以下のメカニズムに関しては深く理解したい人のために書いてありますが、重要なのは大まかな流れを把握することです。

 

生体におけるホメオスタシスの3つの代表的なシステム(系)が「自律神経系」「内分泌(ホルモン)系」「免疫系」になり、いずれも、自分の意思とは関係なく自動的に調節されています。

 

何らかのストレスがかかった場合に、これらの3つの系は、それぞれが独立した系でありながら、互いに密接なつながり(バランス)を持って、協調しながら生命活動の維持(健康の維持、病気の治癒)に動いています。

 

ストレスという言葉は、ホメオスタシスに変化を与えるような、生体に影響を及ぼすあらゆる環境の変化(精神的な事や身体的な事を含めて)と考えてよいでしょう。

より正確には、「ストレスとはエネルギーであり、周囲の変化に対して、心身が適応しようとしてエネルギーが発生している状態」といえます。

 

ストレスが脳(大脳皮質)によりキャッチされた場合のこれらの3つの系の働きを簡単にまとめます(図1)。



 

例えば、猛犬に追われている猫を想像してみましょう。猫は心臓が「ドキドキ」、呼吸が「ハアハア」し、目をむき出し、戦うか逃げるかを判断します。この時に体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

 

まず脳の視床下部からCRH(副腎皮質放出ホルモン刺激ホルモン)が分泌され、その後、それぞれの系が働いていきます。

 

自律神経系

 

すぐに(数秒以内に)交感神経からノルアドレナリンが分泌され、それにより副腎髄質からアドレナリン(怒りホルモン)、ノルアドレナリン(不安緊張ホルモン)が放出されます。

 

アドレナリンの作用により、血管収縮(血圧上昇)、心拍数増加、血糖値の上昇、消化器血流低下(胃液分泌低下、運動低下)、瞳孔散大、呼吸促進などが起こりストレスに対して臨戦態勢を整えます。

 

内分泌系

 

短~長期的に作用し、脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とβエンドルフィンが分泌されます。ACTHの作用により、副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。

 

コルチゾールの作用により血糖値増加(糖新生、脂肪分解、タンパク質分解)、骨形成低下、胃酸増加などが起こりストレスへの対処の体制を整えます。

 

βエンドルフィン(脳内麻薬)の作用として鎮痛、抗不安、抗緊張がもたらされ、精神的にもストレスに対処します。

 

コルチゾールの産生が増加すると他のホルモン(性ホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど)は抑制されます(ストレスへの対処を優先するため、通常のこれらの作用を抑制するということです)。

 

免疫系

 

短期的には、アドレナリンの作用により免疫が増強(外傷への対処)されますが、中・長期的にはコルチゾールの作用で免疫力全体が抑制されます(抗炎症、免疫抑制、抗ショック)。

 

もちろん、ストレス以外の体内外の様々な状況の変化に対しても、3つの系は連動し合ってホメオスタシスの維持に関係しています。

 

これらは一般的には脳が調節していると考えられていますが、脳だけではなく、実は腸や常在微生物、特に腸内細菌もこれらの3つの系のいずれにも深く関与しているのです。

以下に例を示します。

 

・ストレスにより脳は交感神経を興奮し、消化管機能の低下を引き起こし、腸内細菌にも大きな影響を与えます。逆に腸内細菌の状態は腸の状態とともに自律神経を介して脳にも伝えられます。

 

・腸内細菌が元気な状態では、セロトニンなどのホルモンの産生も良好な状態となり、脳の精神的な安定にも関与し、自律神経の状態を整えます。

 

・私たちの免疫系は腸内細菌などの常在菌や常在ウイルス、寄生虫などと共生(連携)しながら正常な免疫反応を維持しています。

 

・消化管ホルモンと呼ばれる消化・吸収や消化管の運動に関与しているホルモンは腸の状態を変化させ、腸内細菌に影響を与えます。逆に腸や腸内細菌の状態は、消化管のホルモン分泌に直接影響を与えています。

 

・腸内細菌はストレスに対抗するホルモン(コルチゾールなど)の分泌を調節することがわかっており、腸内細菌の状態が良好であれば、ストレスに対して適切に対応することができます。

 

このように、ホメオスタシスの3つの系は脳だけではなく、腸内細菌・腸・脳が連携する事によりコントロールされています(図2)。



 

私たちが健康に生きていくための基本であるホメオスタシスの機能においても、微生物が大きく関わっていることがわかります。

関連記事

no image

第14回直立歯科医学研究大会に参加しました

北海道札幌市で開催の第14回直立歯科医学研究大会に参加してきました。 私は「グローバルに考える病気の原因〜微生物と病気の関係〜」の講演をさせていただきました。 全国で講演させていただいていますが、医歯 […]

no image

微生物に関するパラダイムシフト(常識の大きな変革)

パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することを言います。 たとえば、天動説から地動説への転換のようなことが […]

PageTop