稲霊(いなだま)


連日、まるで梅雨の時期のように雨の日が続いています。
わたしは、自然農や有機農で野菜を作っていますが、雨のため農作業もまったく進みません。米は、那須烏山市にある「うるおいの郷」というコミュニティーで、無農薬・天日干し米を共同で作っています。

今年の天候は湿度が高いせいか、米作りを始めてから、はじめて餅米の稲に稲霊(いなだま)が付いているのを発見しました!

現代では、稲の栄養をとってしまうために病原菌であるとされ、嫌われているものです。しかし、この稲霊は私たちにとっては、とても嬉しい自然からの贈り物なのです。

かつては、稲に稲霊がつくと豊作であると言われていたこともあります。それ以上に重要なのは、稲霊が稲についた麹(こうじ)菌の胞子の固まりであるということです。

麹菌はカビの仲間ですが、日本の発酵食品になくてはならないとても重要な菌なのです。

カビ(常在菌を含め)がリーキーガット症候群やがんをはじめ様々な病気の原因になるという意見があり、麹菌(及びそれを使った発酵食品)も避けるという意見を目にすることがあります。

いつも強調しますが、腸や腸内細菌の状態が良い状態ではカビが悪さをすることはありません。カビが悪さをしているのではなく、現代人の腸や腸内細菌が飽食や抗生剤や環境毒によりダメージを受けていることこそが問題なのです。腸や腸内細菌の状態を最も調える食事の一つが発酵食品になります。

麹菌から作られる発酵食品を図に示しました。

日本は世界でも有数の発酵食品の文化があります。和食は日常的に発酵食品を使う食文化であり、これが、昔から日本人の健康を支えてきました。
みそ、しょうゆ、みりん、酢、酒、甘酒など日本人の健康にとても大切である主要な発酵食品は、すべて麹菌の働きから発酵が始まります。
つまり、麹菌は日本の発酵食品を支える要であると言えます。

発酵食品は健康にとってとても重要な働きをしていますが、最近の発酵食品には様々な問題があります。
最も大きな問題の一つ(他にもたくさんありますが・・・)は、発酵を行う菌が自然に存在する菌ではなくなっていることがあります。

例えば、納豆菌にも何十種類もの種類があり、通常自然の状態では、一つの菌だけが発酵を行うということはありません。

現在では、納豆(納豆菌)、ヨーグルト(乳酸菌)、パン(酵母菌)などは、ほとんどが食品メーカーが選んだただ一つの菌から作られています。
これらの菌は、放射線を照射されているなど、不自然な操作により作られていることが多いとされています。

さらに、麹菌を利用した発酵食品である、みそ、しょうゆ、みりん、酢、酒なども全く同じで、天然の麹菌ではなく、大手の種麹(「もやし」といわれる麹菌)会社が作った単一の麹菌を使って作られています。

このブログでは、腸および腸内細菌の状態が人の健康にとって最も大事であることを繰り返しお伝えして来ています。

そして、腸内細菌の状態が良いというのは、腸内細菌が多様、つまり、種類が多ければ多いほど良いとされています。

私が稲霊を大切に考える理由は、不自然な作り方をされていない自然のままの多様な麹菌の固まりと考えられるからです。

また、稲霊に含まれる麹菌から発酵食品を作る時に、増やす条件を変えることにより、それぞれの発酵食品に応じた麹菌を育てることも出来ます。

例えば、みそを作るときは、米麹を使うため、米のデンプンを分解しやすいようにアミラーゼ活性の高い麹菌が適しています。高温で速くに麹菌を培養するとこの性質をもった麹菌が増えてきます。

一方、しょうゆを作る時は、豆麹を使うため、豆のタンパク質を分解しやすいようにプロテアーゼ活性の高い麹菌が適しています。低温でゆっくり培養すると、この性質をもった麹菌が増えてきます。

この自然の麹菌を使い、伝統的な製法(天然醸造)で身土不二に沿ったオリジナルの発酵食品を作ることが出来るのは、とても幸せなことではないでしょうか。

わたしはここ数年、天然の麹菌を培養し、その麹菌であらゆる発酵食品を作ってきましたが、みそ・しょうゆ・酢・みりん等、それぞれどれもとても風味があり美味しいのです。

作り方はこちら。
興味がある方はぜひ参考にしてください。

とりあえず、今回の稲霊から種麹を増やして見たいと考えています。

関連記事

自然農の畑の紹介 Vol.4

わが家の自然農の畑の状態を不定期に紹介しています。   今回は、自然農の畑に雑穀の種を撒きました。   雑穀は毎年6種類育てています。 白ヒエ、もちアワ、もちキビ、たかキビ、ハトムギ、アマランサスになります。 一番始めだけ野口種苗さんの種を購入し、その後は取れた種を蒔いてつないでいます。   野口種苗さんは固定種、在来種を扱っている種屋さんで、F1の種の意味や日本の種の現状などについてなどの講演会を全国的に開催されています。 野口種苗さんのホームページはこちら http://noguchiseed.com/hanbai/   畑の野菜を植える高くなってい […]

自然農の畑の紹介 Vol.2

わが家の自然農の畑の状態を不定期に紹介しています。   今回、自然農の畑に大豆の種を撒きました。   畑の野菜を植える高くなっているベッドのような部分を畝(うね)、低くなっている部分を畦(あぜ)といいます。 野菜は水分が多いと良く育たないため、畝と畦が必要になります。   わが家の畑は自然農ですので、不耕起(耕しません)です。 正確には初め(7年ほど前)に一度だけ耕し、その後は半永久的に耕しません。   耕すといっても、畦のところの土を20cmほど掘り起こし、畝になる部分に乗せただけです。   すべての畝と畦のサイズを同一にしています。 一つの […]

no image

バジルペースト作りました

毎年作っているバジルペースト(ジェノベーゼペースト)を作りました。 庭でほぼほったらかしに栽培しているバジルなのですが、毎年とてもよく成長してくれます^^ 薹が立って花が咲いてきましたので、急遽収穫です。これに、にんにく、松の実、オリーブオイルを入れミキサーで混ぜるだけでバジルペーストが完成です。このバジルペーストはパスタにもパンにもピザにもとても良く合います。全部小麦製品ですね^^ グルテンフリーを実践されている方が増えてきましたが、小麦も、嗜好品の範囲内でとる、古代小麦のものを使ったり、天然酵母で発酵させるなどの工夫をすれば、大きな問題にはならないでしょう。 小麦に限らずあらゆることに共通 […]

no image

ドキュメンタリー映画「いただきます」のオオタヴィン監督が取材に訪れました

なんとドキュメンタリー映画「いただきます みそをつくる子どもたち」の監督をされている映画監督で写真家でもあるオオタヴィンさんがわが家に取材に来てくださいました!! 皆さまは、ドキュメンタリー映画「いただきます」をご覧になったでしょうか。 http://itadakimasu-miso.jp/ この映画は、私が普段お伝えしていることをそのまま実践、実証しているような映画です。 日本の伝統的な食事や生活を福岡市の高取保育園の1年を通して描いています。この保育園は、現在全国から視察の申し込みが殺到しているそうです。 伝統的な和食(玄米、みそ汁、オーガニック野菜)、身土不二、自分の食べ物を自分でつくる […]

自然農 その1

自然に沿っていれば病気にならないというのが私の基本的な考えです。   この考え方をベースに自然農、自然食、自然療法、自然分娩、自然に沿った暮らしなど「自然派の生活」をお勧めしています。   特に食べ物は人が健康に生きていくために最も基本となることです。   その食べ物を作るのが農ですが、現代農業は医療と同様に様々な問題を抱えています。   農薬、除草剤、抗生剤、化学肥料、一部の有機肥料、遺伝子組み換え食物、放射能など。   さらには、身土不二との関係、様々な器械や輸送などのエネルギーの問題、経済的な問題、継承者の問題などなどです。   安全で安心な食べ物を得るために、オーガニックや自然食料品の […]

PageTop