乳児湿疹とアトピーの違いと基本的な考え方

乳児湿疹やアトピー性皮膚炎(以下アトピー)は、厳密に区別する事は難しいのですが、私は「乳児湿疹」といわゆる「アトピー」では病態が全く異なると考えています。

乳児湿疹は、通常1歳未満に発症し、生まれて来た時(先天性)の毒を皮膚から出している状態です。毒を出し切れば終わりです。これに対していわゆるアトピーは通常1歳以降に発症し、病態的にはアレルギー的(蓄積疾患)で、主に不自然な日常生活の積み重ねが限界を超えた時に発症すると考えています。

どちらに対しても、基本的にはステロイド(さらには保湿剤も)を使わない治療をお勧めしています。

ステロイドを初めから使用しない治療をノンステロイド=ノンステ、ステロイドの使用を止める治療を脱ステロイド=脱ステといいます。

乳児湿疹は、ステロイド剤を使用しなければ、1歳までに約95%、2歳までに約99%が治ります。つまり、何もしなくてもほほ全員が治るのです。

乳児湿疹は、以下のような食事内容やその他の治療などは湿疹の経過にほとんど関係ありません。

  1. 母乳であるかミルクであるか
  2. 離乳食の開始を早めるか遅くするか
  3. 離乳食の内容(特別な何かを制限するか、あるいは摂るかどうか)
  4. サプリメントを取るか取らないか
  5. 薬(ステロイド意外の西洋薬、漢方薬、その他)を使うかどうか

乳児湿疹が治らない唯一のパターンは、子どもに十分に栄養がいかない場合のみです。

栄養が足りなければ、皮膚が全く治らないばかりか、成長や発達の遅れにまでつながります。皮膚から滲出液が出続けますので、水分や栄養が失われ、生命が危険な状態になることもあります。

この場合、もっとも簡単な対処法は、母乳を止め人工乳の力を借りることですが、私はよほどの状態でなければ、人工乳に変更することはお勧めしません。それでも、乳児湿疹のほぼ全員が治ります。

私は、お母さんの食事を改善する事や母乳の出を良くする方法を最優先に指導し、なるべく離乳食を早めに開始することを伝えています。

栄養が十分に行っていれば乳児湿疹の経過に食事の内容は関係なく、基本的には食事制限は必要ありません。

アトピーは、主に1歳以降に発症し、病態的にはアレルギーという免疫反応の異常がベースにあり、それに不自然な日常生活が蓄積され、限界を超えたときに発症すると考えられます。

乳児湿疹は先天性の毒で、アトピーは蓄積性の毒という違いがありますが、ともに皮膚からの排毒ですので、基本的な対策はほとんど共通しています。

とくに、ステロイド剤を使う事は、この排毒を止めるという対症療法ですので、乳児湿疹と同じ様に使わないことが大切です。ステロイド剤を使用する事により、アトピーの経過に大きな影響を与えます。例えば、アトピーの進行の仕方、治り方、感染の起こり方、ステロイドの毒性による症状、ステロイド依存などになります。

アトピーの重症度や年齢、今までのステロイドの使用を含めた治療経過などにより全く異なるのですが、脱ステにより様々な程度の離脱症状(いわゆるリバウンド)が出ます。通常、子どもの場合はあまりリバウンドの症状が強くなく、脱ステを成功させることができますが、症状が強い場合は信頼できる医師の指導のもとに行うのがいいでしょう。重症な場合は脱ステがうまく行くかどうかは、行う前にいかに綿密な計画を立てるかどうかにかかっています。つまり、ステロイド剤や保湿剤の止め方、食事や生活の改善、ストレス対策、悪化した時の対応、周囲の協力などあらゆる対策を考えてから行うのが大切です。

実際に脱ステを希望して当診療所を受診される方がとても多いので、誤解されやすい事をひとつ銘記しておきます。脱ステとは、ステロイド剤の依存状態からの離脱を意味し、アトピー自体を治している訳ではないという事です。つまり、脱ステにより、本来のアトピーの症状が出てくるという事になります。脱ステがゴールではなく、アトピー自体の改善をはからなければ、本当の意味でアトピーが良くなることはありません。

乳児湿疹は排毒の邪魔をしなければ何もしなくても治りますが、アトピーの場合は、不自然な生活の積み重ねの結果という側面が強くなりますので、日常生活の改善が必要になってきます。食事、生活、心(メンタル)のあらゆる面を自然な生活に整える事が大切です。それが、アトピーに限らず生涯の健康につながります。

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