農について
私は自然農や有機農で作物を育てています。
私の考える自然農とは、自然放置ではありません。なるべく自然の仕組みに沿って、作物自身が自ら成熟することを妨げない農法であると考えています。ですから、作物を毎日観察し、必要があれば手助けをする、という感覚です(子育てと同じですね)。
私が行っている自然農の特徴は
- 土を耕さない
- 肥料をやらない
- 農薬をやらない(虫をとらない)
- 草をむしらない(日当たりが悪ければ周囲の草を刈ります)
などになります。
このような農法のメリットはとてもたくさんのことがあります。環境を破壊しない、浄化能力が高い(農薬、肥料(肥毒)、放射能…)作物が安全で美味しく栄養価も高い、微生物を含め、すべての生物にやさしい、虫がつきにくい、お金がかからない(様々な器械、農機具、肥料、農薬、ガソリン…が不要)、手間がかからないなどです。
まるでいいことづくしですが、自然農にはデメリットもあります。まず、方法論が確立していないため、難しく、慣行農法から転換するとまずうまくいきません。慣行農法では肥料や農薬を使用するために、土(微生物)がダメージを受けてしまっており、数年から10年位は収穫が全くないか少ない状態が続きます。更に、自然農では収穫量・時期・色・形が一定しないため、現状で求められている大量生産型には不向きともいえます。また、自然はその土地の、気候や風土によりそれぞれ異なっていますので、基本的な考え方があるにしても、画一的なマニュアルは作りようがありません。
有機農であっても現代は、様々な問題があります。大量の肥料の使用、未完熟なたい肥、肥料による硝酸態窒素の発生、肥料やたい肥への遺伝子組み換え作物、農薬や放射能に汚染された作物、抗生剤・ホルモン剤入り飼料の混入などです。私は、有機農を否定している訳ではなく、環境を破壊しない完全循環型の自然に沿った有機農であれば全く問題ないと考えています。例えば、EM菌、愛媛AIなどの微生物を利用したもので、遺伝子組み換えでなく、農薬を使っていない作物由来で、完熟したたい肥や肥料を必要最低限使用する農法などです。
実際に私の畑でも、半分を自然農、もう半分を米ぬかや家庭の生ごみを発酵させた肥料を用いた有機農で栽培しています。最終的にはすべての作物を自然農で作りたいのですが、作物によっては難しいものもあり、まだまだこれから工夫が必要そうです。
地元でもあらゆる工夫をして安全・安心で皆が喜ぶ作物を栽培している農家さんがたくさんいます。信頼のおける農家さんから買う消費者が増え、よりよい循環の輪が広がることを期待します。
慣行農業はたくさんの問題がありますが、土から離れてしまった現代の私たちの食を支えていることは間違いありません。これからの農について考えるためにも、何らかの形で農に携わる人が増えていけば良いと思います。